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野生のボノボ観察の舞台裏 - 困難と魅力が溢れる研究調査〜「横山拓真の霊長類研究所」より


はじめに

前回の記事では、ボノボ研究の地であるワンバへの行き方、またベースキャンプやその周辺の様子について解説いたしました。そのため今回は、霊長類研究者である横山拓真博士は実際に森に入ってどのようにボノボの観察・調査をしているのかについて解説いたします。

また今回の記事の内容はこちらの動画でも詳しく解説されています。よろしければぜひ、ご覧ください。

ボノボ観察の舞台:危険と驚きの森

野生ボノボの研究者として、横山博士はワンバの森の中で日々を過ごすこととなります。しかし、この森の中には驚くほど大きな蛇が存在し、その存在は横山博士ら研究者たちの観察活動に常に危険を伴わせていると言います。その蛇は噛まれたら死に至る可能性のある毒蛇でもあり、万が一噛まれた場合はその部分を斬り落とすしかないと言われるほどです。

森の中に潜む巨大毒ヘビ

ですが研究者たちはそうした危険を過度に恐れることはありません。
ボノボ研究のためにはこうした危険は必ず受け入れなければならないからです。横山博士ら研究者たちは、優秀な現地アシスタントの力を借りながら、細心の注意を払いつつ、ボノボを探しに日々森の中を歩いているのです。

ボノボ追跡の現実:体力と気力を要する調査

ボノボの観察は決して容易なものではないと横山博士は語ります。基本的にボノボは獣道を歩くため、横山博士は草木をかき分け、時にはアシスタントの力を借りてボノボを追いかけることになるのです。

ボノボを追って時には川を越えることもある

これには川を渡ることも含まれ、ボノボたちが木々をつたって川を渡るのに対し、横山博士は水に入り、川を越えなければなりません。さらに川の周りには沼地になっている場所もあり、そこを通らなければならないこともあると言います。ボノボの観察には、相当の体力と気力が必要になるということがこのことから伺えます。

共存の現場:ワンバ村とボノボ

ワンバの森はボノボにとって重要な場所ですが、同時にワンバの村人たちにとっても生活の一部として重要な場所となるようです。彼らは森で食物を採取することがあるのですが、その際に野生のボノボと出くわすという場面がよくあると言います。

ワンバ村の伝承ではボノボと人間の祖先は兄弟だと言われている

そんなワンバ村の人たちですが、実はボノボに対しては非常に好印象を抱いているようで、なんと彼らの伝承ではボノボと人間の祖先は兄弟だとされているそうです。ボノボとワンバ村の人たちは、この森で共存生活をしていると言っても過言ではない関係性なのです。

さいごに

野生のボノボの調査・観察というものは、時には獣道を歩き、また別の時には体を傷つけ、汗を流しながら進めなければならないという過酷な仕事だということがわかりました。しかし横山博士は、そうした作業は危険を伴いながらも、それ以上にボノボたちが非常に可愛らしくて魅力的な生物であるため、日々楽しい調査研究なのだと最後に述べられています。

今回紹介した横山拓真博士のボノボの観察・調査の様子について、さらに詳しく知りたい方は、こちらのYouTube動画をご覧ください。より分かりやすく、今回の記事の内容を理解することができるでしょう。

横山 拓真(よこやま たくまさ)
京都大学野生動物研究センターにて研究の後、椙山女学園大学 日本学術振興会特別研究員(PD)。コンゴ民主共和国のルオー学術保護区・ワンバで野生ボノボの研究に従事。2019年9月からYouTubeチャンネル「横山拓真の霊長類研究所」にて野生ボノボの情報発信を始め、チャンネル登録者数は6.1万人突破(2022/8時点)。野生ボノボの動画という貴重さから、国内外のテレビ番組などからもオファー多数。ビーリア(ボノボ)保護支援会で現地の村人の支援やボノボの保護活動にも取り組んでいる。


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