What if…
もし、「絶対失敗しない」って決まってたら何したい?
画面の向こう側の彼女に問いかける。
飲み始めてそろそろ1時間。
外出のままならない今、こうして1、2週間に1回は、彼女とオンラインでつながるようになった。
友人、家族、仕事、恋愛、人生…
直接会おうが会おまいが、私たちの周りには、突き詰めて考えたいネタがいくつも転がっている。
それに、同じようなライフステージを歩んでいるのに、私とはちょっと見方の違う彼女の意見を聞くことで、いつも自分の幅が広がるように感じていた。
「難しいね。でも、そうだな…。
施設を創りたいかな。」
「施設?」
「うん。色んな事情で親と暮らせなかったり、学校に行けなかったり。しんどい思いをしている子たちのための施設。
その子のペースで、社会で生きていけるように一緒に過ごせる、みんなの家みたいな場所をつくるかな。」
子どもに関わる仕事をしている彼女らしい答えだった。
理想と現実のギャップに辛くなった彼女の話を聞かされたのも一度やニ度じゃない。
「ずっと考えてたの?」
「うーん、なんとなくね。だって失敗しなかったら、でしょ?
そうだ、周りはイングリッシュガーデンみたいなおしゃれな庭にしよう。ハーブとか植えてさ。あ、畑もいいな!子どもたちと、農作業もして、採れたての野菜をみんなで料理してたべるの!」
「バルコニーとか温室もつくろうかな。
あと、本でいっぱいの部屋も欲しいなー!」
おいおい、落ち着けとは思うが、
一応、それは楽しそうだと相槌をうつ。
「…すごいね、あたし、何にも浮かばなくて。」
「えっ!?やってみたいことない??」
「やりたいことは、あるよ?
ダンスを基礎から習いたいし、
地球の裏側、ウユニ塩湖にも行ってみたい。
でもそれって、お金があったらとか、
時間があったらっていう感じ?
失敗しないとしたらチャレンジしたいこと、じゃないじゃん。」
「ふーん。そうかなぁ。
…てことは、逆に、失敗したとしてもやりたいことってことじゃん!それすっごくいい!」
「えぇぇぇ⁉︎ 何その逆転の発想!」
よし、やろう!今すぐやろう!
と、勝手に盛り上がる彼女を横目に自分自身に問いかける。
本当に?
あたしのしたいことってほんとにそれ?
やりたいことも、行きたい場所も、本当はもっと違う気がする。
でも、それが何か分からないけれど。
「ねね、格安チケットなら10万円で行けちゃうよ!地球の裏側!ちょっと乗り継ぎ多すぎるけど!」
さっそくウユニまでの航空券を調べたらしい。
この瞬発力には毎度、頭が下がる。
…彼女なら、ピーターラビットが出てきそうな庭付きの施設を、本当に建てちゃうかもしれない。
「よし!分かった!行こう!地球の裏側!」
「え!珍しくやる気!いいと思う!行こう!」
「とりあえず世界が落ち着いたらね。それまでは、リサーチと貯金だ。笑」
「本当だね、まずは資金繰りか。笑
あ、ダンス教室も調べなよ!」
自分に無限の可能性が与えられたら、あたしは何を望むだろう。それも失敗しないという保障つきなら。
見つかれば、明日からの毎日が何か変わるかな。
新しい月に少しだけ願いをかける。
6月はまだ始まったばかり。
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