MODO
いやあ、しんどいっすね。
目の前の彼は言った。
とくにこれと言って用はなかったのに、
なぜか会うことになってしまった。
ー 何がしんどいの?
アイスクリームを口に運ぶ。
甘いバニラの香りにつつまれた気分。
結局、人って自分のことしか考えてないんかなって。
あ、俺の場合っすけど。
人の話聞いてても、俺ならこうする、
俺ならそれは無理、とか。
全部、自分基準なんすよ。
ほんとに相手のこと知りたくて
興味もってない限りはね。
もっと相手に重心おいていきたいっす。
じゃないと、相手にどう思われるか、
そんなことばっか考える人になっちゃうでしょ?
ー それだけ、真剣に自分のこと考えられるのも立派だよ。
ため息混じりにそう返す。
ー 私はねえ、
もっと早く判断できるようになりたい。
なんでもじっくり考え過ぎちゃうの。
それどう言う意味なんだろう?
なんて返せばいいんだろう?
もっとこうした方がいいかな?
考えている間にしんどくなって、物事がね、
進まないんだ。笑
もっと、テキパキ考えて働ける女の人になりたいな。
さっと、動いて、ちゃっと終わらせちゃうの。
できる女っぽいじゃん。
確かに仕事遅いっすね。
屈託なく笑う。
私も声に出して笑う。
ここ数日のもやもやが晴れていく。
ああ、なんてちっぽけなことで悩んでたんだろって。
次はどっか遊びに行きたいっすね。
帰り際に彼が呟く。
ー うーん。もう少し落ち着いたらかな。
ほんとそういうとこ、真面目ですよね。
また笑われた。
けど好き。
って呟いた声には気づかないフリで
正解だったのかな
と、まだ悩んでる。
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