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Lateral orbital flapに関して

Lateral orbital propeller flap technique for reconstruction of the lower eyelid defect
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5956590/

今回は下眼瞼外側の皮膚悪性腫瘍に対して施行した Lateral orbital propeller flap の case report 論文です.
やはり中国からの臨床論文は勢いがあります.症例数が圧倒的に違います.
この症例は手術の完成度が高いと思えたので紹介します

The lower eyelid is a common site of the basal cell carcinoma.
 下眼瞼はBCCの好発部位であり,マージンを担保して切除して生じた欠損部の再建は形成外科医にとって避けては通れないものとなります.
※BCC:基底細胞癌

眼瞼の再建において前額部や頬部,鼻周囲の皮膚を使用した皮弁が行われてきました.しかし眼瞼の皮膚は特徴的で,菲薄であり細かいシワを有するため,以上の皮弁では patch like appearance な印象となってしまいます.
今回の症例では,皮膚の性質が似ている皮膚組織を利用するため,欠損部に隣接する外眼角外側の lateral orbital propeller flap が選択されました.

症例

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左下眼瞼外側に10×8mm大,生検よりBCCであり,深部は皮下組織までの皮膚腫瘍.

BCCに準じて3mmのマージンで切除し外眼角に orbital propeller flap を挙上.細心の注意を払い止血を行い,6-0ナイロンで固定.ドナー部分も6-0ナイロンで閉創した.

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※この場合皮弁を栄養する皮下茎は少なくとも3mmは必要となるとのこと.
※しかし顔面の場合は良好な血流を有するため,皮弁の幅・長さに上限はなく,柔軟な再建が可能.

術後24ヶ月 写真も工夫されているとは思いますがきれいな仕上がりです.

スクリーンショット 2020-04-27 16.30.51

この Cheek flap VY伸展皮弁 と比較して今回の皮弁の利点は:
手技の簡便さとRSTLに沿って皮弁を挙上できるためドナーが目立ちにくく侵襲が少ない
②眼瞼と皮弁の色調・質感が似ており,ドナーの傷は外眼角のしわに一致することで目立たない.
③外眼角には十分な余剰皮膚があるため閉創に苦慮しない.
④加齢に伴い皮膚の伸展が見込める.
⑤最も重要な点として皮弁の可動性が良いために軟部組織の再建に有用.

Propeller flap は pedicle の位置により central axis type, acentric axis type に大別される.Acentric axis type では180度まで回転が可能であり有用性が高い.


今回の皮弁が特徴的なのは非対称性の双葉皮弁として挙上していることです.
皮弁の尾部(茎から遠位)は皮膚欠損を覆えるように大きく,皮弁の頭側はドナー部分の閉創を補助できるように小さく挙上しています.

次回 眼窩周囲の再建方法についてまとめます.

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