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眼窩底骨折におけるプレートの選択

Orbital wall restoring surgery with primary orbital wall fragments in blowout fracture
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6949506/

眼窩底骨折における眼窩底プレートの選択に関する論文です.

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By Ben Mortimer

眼窩底骨折というとバドミントンの桃田選手が交通事故後にシャトルが2重に見えるとのことで話題になりました.


眼窩底骨折は眼窩を形成する骨の中で目を支える眼窩の底の骨が骨折している状態です.
吹き抜け骨折や,blow out fracture と呼ばれることもあります.

眼球の運動は眼球の上下左右に停止している筋によりスムーズな運動が可能となっています.眼窩底骨折ではこの眼球を動かす筋肉が骨折部に絞扼することで眼球運動が妨げれることがあります.
※筋肉が作用する部位に付着している部分を停止と呼びます.この場合ですと眼球を動かす筋肉ですので,眼球についている部分が停止部分となります.

本来であれば左右の眼球が協調して立体視を実現していますが,患側の眼球運動が障害されることにより左右で視野のずれが生じるために複視がおこります.

眼球運動障害や複視を伴う眼窩底骨折では早期に手術を行うことが望ましいです.絞扼している筋肉を解除し骨折している眼窩底の穴を埋めなくてはなりません.

もともとは自家骨移植チタンなどの非吸収性プレートが使用されてきましたが,現在では吸収性プレートを使用することができます.
それぞれのメリット・デメリットを確認します.

自家組織移植では自身の組織であるため,眼窩底で異物反応や感染を引き起こす可能性が低いですが,採取部が必要となること,手術時間が長くなること,移植片の予測不可能な吸収が起こるなどの問題点があります.
非吸収性インプラントはこれらの欠点を補えるため,広く使用されていますが,やはり人工物であり感染や異物反応のリスクがあり,また異物感を自覚する場合あります.
そのため最近では吸収性メッシュプレートが利用されることが多いです.吸収性プレートでは最終的に生体内に吸収されることで,異物反応・感染のリスクが比較的少ないです.


眼窩底骨折においては,1-2年ほど力学的な作用,形態を保つようなものが最適とされます.その期間で骨折部に十分な線維性組織が形成されるためです.吸収性プレートは buttress の骨折を伴わない眼窩底の小範囲の骨折に良い適応で,強い負荷がかかる大きな欠損等では推奨されません.

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顔面骨のButtress
緑:水平方向 ピンク:垂直方向
力学的に負荷のかかる位置となり,この部位に骨折を認める場合は征服後にやはりプレートで固定が望ましいです.


広範囲の眼窩底骨折で吸収性プレートを使用したケースでプレートの buckling(負荷に耐えられず変形すること), sagging(負荷のため湾曲すること) を生じたとの報告があります.またそのようなケースではプレートが完全に吸収された後に眼球陥凹等の症状を生じる可能性が高いと考えられ,長期的な結果に関してはまだ経過観察が必要となります.
※この場合眼球陥凹は眼窩内容物が眼窩底骨折部位から逸脱することにより生じると考えられます.

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