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「ギレンの野望 ジオン独立戦争記」支援記事②


・はじめに

前回の記事(https://note.com/planetgames/n/ne53b53a5a054)で私は「ギレンの野望」シリーズ最高傑作となりうる素質を持ちながら、その力を十分に発揮することができなかった不遇の作品「ジオン独立戦争記」について簡単に紹介させていただいた。
今回はもう少し話の焦点を絞って、本作の魅力をお伝えしようと思う。
なお、執筆時点での私のプレイ歴は「ジオン独立戦争記」と「ジオンの系譜」の2タイトルである。

・圧倒的不評!「忠誠度」システム

忠誠度など戦略シミュレーションにおいて珍しい仕組みでもないのに、どうも本作においては「忠誠度」の仕組みはかなり嫌われている様子。
そこにはある「誤解」が存在すると思われる。
それは端的に言うなら、「忠誠度はリソース」という認識を得ていないことに起因すると私は考えている。
「部下の忠誠度が少しでも下がるとイヤ」とこのような考えでゲームをプレイしている人が少なからずいるのではないだろうか。
自身の計画遂行に本当に必要なことであれば、部下の忠誠が多少下がろうが、それは「コスト」と考えて積極的に支払えばよい。
部下が不服そうにしていれば、その分適当に休暇を与えて忠誠度を回復してやればよいだけのことだ。
そしてこのゲームはそもそも、部下が何人も離反するような戦略を取らなくても、十分クリアできるように作られている。

・忠誠度の「誤解」

やはり最も嫌われる原因となっているのは、「兵器の生産に対する反対提案」だろう。
実際、伍長などが国の生産計画に異議を唱えてくるなど、よくわからない部分もあるが、現実なら黙って忠誠が低下しているであろうから、これすら口で言ってくれるだけある意味親切である。
それはともかくとしてだ。
以前にも述べたが、初代のように「ガンダムは絶対一機しか作れません!」という仕組みはそれこそ現実的じゃないし、ファンとしても面白さに欠けるところであろうと思う。
かといってジオンの系譜のように機体の生産制限が存在せず、つまるところ強機体だけ使っていればいいというのもまたプレイ体験が固定化しやすく、面白みに欠ける。
そこで本作の仕組みを振り返ってみると、兵器にはそれぞれ生産制限が存在している。
「これを超えて生産しようとすると部下から反対される」
これはどういうことか?
つまり、ジオン独立戦争記における部下からの「生産反対提案」とは、「当該部下の忠誠度をコストとして支払うことで『生産制限を無視することができる』仕組み」なのである。
この観点から言えば「ジーン」などの脱走しようがどうでもいい部下から反対提案が来ればむしろしめたもので、ドズルやキシリアのような重要人物の代わりに「忠誠値を払ってくれる」というわけである。
この認識を身に付けているか否かで「生産反対」に対する印象は変わるはずである。
あくまで選択権を持っているのはプレイヤーなのだ。
強機体のみによるゴリ押しに対してある程度の枷をつけながら、プレイヤーの好みや裁量によって多少の無茶が許されるこの仕組みは、少なくとも私は好意的にとらえているし、前二作と比べて遊びの幅を広げる良い仕組みだと考えている。
量産機の反対提案は苛烈なので少し厳しいが、ザンジバルやペガサス級といった万能艦船は反対を押し切っても必要数をそろえる価値があるし、趣味に走ってアプサラス祭りを行うといった遊びの余地もしっかり残されている。
また、量産機に関しても、戦場での役割に応じて適切な機体を使い分けていれば生産制限を大幅に超過してまで作らなければならない状況にはまずならない。

・忠誠度が抱える課題

忠誠度はとにかく下がりやすい。
反対案を無視して下がる。
撃墜されて下がる。
イベントで下がる。
戦闘で指示を行うと下がる。
戦闘で指示をしたら下がる?
それは後程お話ししよう。
とにかく、忠誠度が低下する要因は山ほどあるのに、
忠誠度を恣意的に上昇させる方法は「特別休暇コマンド」のみである。
佐官以上なら軍団長に任命することでも忠誠を上げることはできる。
他にも忠誠度を上昇させる術はいくらかあるが、プレイヤーが自分の意志で自由にコントロールできる方法は今挙げた二つだけである。
「忠誠度」は新たに導入された広大なリソースである。
それを消耗するリスクを複数にわたって用意するなら、それを回復することについてもある程度恣意的に行える選択肢がもっとあっていいはずだ。
例えば「恣意的な階級の上下」や、「勲章の授与」など方法はいくつも考えられるはずだ。
「宝物の授与」などを設けてマ・クベにアンティークを送ると喜ばれるなども面白そうだ。
とにかく忠誠度を恣意的に上昇させる術はもっと設けた方がよい。
そして、忠誠度にまつわる問題に関して触れるなら、もう一つの圧倒的不評要素「戦闘で指示を行うと下がる」について話さねばならない。
この問題のポイントは明確である。
CPUが到底戦闘を任せられる強さではなく、(委任という要素が)ゲームを面白くもしていない点である。
(そもそもCPUが根本的にもう少し賢いという前提で)キャラクターごとに特徴ある戦術をとるなどの仕組みがあれば、戦いの現状を鑑みて、将を信じ任せるといった判断もできよう。(また、戦況の「見せ方」にももう少しプレイヤーに「現状」が伝わる工夫が必要だろう)
しかし残念ながらこのゲームのCPUにはそのような力はなく、適当に広がって敵陣に突撃して、燃料が尽きたら敵の射程外でだらだらし続けるだけ。
これでは任せられない。
その問題を解決することができれば「委任」は魅力的な選択肢となるし各将軍の戦術や性格を考慮したマネージメントも新たなゲーム性となりうる。
それでも今の仕様で遊ぶしかない我々のために一つプレイの指針を示すとしたら、戦闘は確実に勝てる数を揃え、各軍団同時に戦地へ突入し、全軍団に指示を行い、1ターンの戦闘で大勢を決し、(とどめを刺してはならない)次のターン全軍団委任(委任すると忠誠度が回復する)を行うことで指示による忠誠の摩耗を大幅に食い止めることができる。
が、そもそも、このような小細工なく、安心して委任できるCPUを生み出してほしいものだ。
指示することにコストを要求されている以上、委任はある程度信頼のおける選択肢であるべきだ。
ちなみに戦闘が長引いたときは必ず関係各部隊に休暇を与えるように。
そういう配慮を怠っていると部下に造反されることになる。
とにかく、委任が頼りない、面白くないことが、不快感を高めている。
また、先の話も踏まえ、指示通り戦ってくれた将軍に対して勲章なり宝物なりを与えて忠誠の回復をはかれるといった要素があればフレーバー的にも悪くはないのではないだろうか。
(ちなみに私は本作の設計を可能な限り肯定的にとらえているので「そもそも指示しても忠誠度が下がらない仕様ならよかったのでは」という点は一旦無視する)

・それでもやはり「独戦」が面白い

以上、発売当時多くのユーザーから嫌われた忠誠度について特に不評だった点について簡単に紹介させていただいたわけだが、現状のままであったとしてもやはり私はこの「ジオン独立戦争記」が一番面白いと思っている。
少なくとも私が自分でプレイしたもう一本のシリーズ作品「ジオンの系譜」よりは圧倒的に面白いと私は考えている。
ギレンの野望はキャラゲーである。
プレイヤーはキャラクターとともに歩み、キャラクターとともに成長してゆく。
そのキャラクターが、ただ戦地で強いかどうかだけの「駒」でしかないのはあまりに味気ない。
しかも、そのキャラクターに無理な戦い方をさせて使い潰すことに何のリスクもないということに私は疑問を感じる。
そして本作のキャラクターたちがする提案は「反対」だけではない。
ゲームを戦略的に有利に進める数々の提案を行ってくれるし、自分の愛機をカスタムしたいとねだってくるのも可愛げがある。
これらも直接ではないが忠誠度の仕組みにまつわる要素であり、キャラクターの価値をより多角的にし、「ただ戦闘に強い」というだけでなく、新たな角度からキャラクターに愛着を持つきっかけを作っている。
少なくとも、前作と比較して、よりキャラゲーとして進化しているというのが私の考えだ。
忠誠度システムは、自分の配下であるキャラクター達にそれぞれ人格や意志があることを表現し、かつそれをゲームの攻略と結びつける良いシステムであったと私は考えている。
ギレンの野望シリーズの新作が途絶えてから13年が経過しようとしている。
私は宇宙世紀を主軸とした優れた戦略シミュレーションが発売されるならぜひ遊びたいと思っている。
もしギレンの野望シリーズが復活を果たすことがあるとしたら、それはぜひ、この「ジオン独立戦争記」の仕組みを軸とし、より洗練させ、作りこんだものであってほしい。
本稿は忠誠度システムに的を絞ったため、他の要素にはほとんど触れなかったが、この「ジオン独立戦争記」は他にも同シリーズの他作品にはない魅力があるのだ。
その話はいずれまたしかるべき時にお話しできればと思っている。
以上で本稿を終了する。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

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