Takezawa

読書。詩。絵。 「ことば」と「線」が、記憶の呼び水。

Takezawa

読書。詩。絵。 「ことば」と「線」が、記憶の呼び水。

最近の記事

【詩】引っ掻き傷

せめてもの  爪痕残せと  糸月の 薄明に浮かぶ  いじらしさ この言葉が浮かんだときのこと、備忘を込めて。 朝の6時37分。 カーテンの外はうっすらと明るくなっていて、寒さが気持ち良い。 目線の先には、白く細い月。 もう朝だというのに、意外にくっきりと輪郭を残していて。 働きものだなぁ、なんて思いました。 ときたま、お月様が切られた爪の端に見えることがあります。 あなたは、何に見えますか?

    • 【詩】苦い

      ホームに消える背中  ドアが閉まる ぷしゅり 鎖骨の真ん中から喉へ さみしさが じわり …この感情を にがい と言ったのは だれ? この言葉が浮かんだ場面について、備忘を込めて。 ふたりで電車に乗って帰ったときのこと。自分の最寄駅の方が遠かったので、見送るかたちになりました。 先に電車を降りたその人の姿を、目で追っていたけれど、当然ながらそのうちに見えなくなってしまった。 そのときに、はじめての感情に出会いました。とっくに成人しているにも関わらず… どんな感情

      • 【詩】夜風

        側溝 誰かの影 耳元で擦れる 木の葉 睫毛を揺らした 2月の夜風  この言葉が浮かんだ場面について、備忘を込めて。 買った物で、生活や世界の見え方が少し変わることがありますよねぇ。 私の場合は、motherhouseというブランドの、革製のカードケースです。 「夜風」と名付けられた、薄墨色のカードケース。 そのカードケースを持ち歩くようになってから、夜に吹く風を意識するようになったのです。 冬の風は冷たいけれど、下を向きがちな夜道で、すーっと風が吹いたとき。

        • 【詩】小雨

          小雨の夜道 コンクリートに光が滲んだ メッキがぱらり と落ちてゆく 世界が拡がったのか はたまた  ちがう色の偏りに染まっただけなのか 車窓に映る冬の空  曇天とは言い難い この言葉が浮かんだ場面について、備忘を込めて。 夜の京都を歩いた日の、帰り道の記録です。 その日は雨だったので、町が水分を含んでて、街灯やヘッドライトがきらきら反射してました。 「雨上がりの夜は光が滲んできれい」という話で盛り上がった、駅までの楽しい道のり。 帰りの阪急電車で、その記

        【詩】引っ掻き傷

          【詩】月曇り

          まだらな 雲の層 かまわず溢れる 月の光 涙に勘づいた 瞼の裏側 月に遠慮を着せたところで きっと似合いはしないだろう この言葉が浮かんだ場面について、備忘を込めて。 帰宅中に感じたことを書きました。 空を見上げると、月に薄い雲が重なっていました。ただ、きれいだな、と思いました。 月はスマホで上手く撮れないので、いつも、じぃっと眺めることにしています。 月があまりに綺麗なせいで、泣いてしまいそうな夜もあります。月のせいです。 そんなことを、ややこしく説明す

          【詩】月曇り