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壊れたギターが生きる元気を贈ってくれた YAMAHA SG-1000 1981年製造

物 人 事 そして 価値と目線の話

この物語の本質はここにあります。


YMAHA SG−1000というギター

ギターと知っている人には説明不要のジャパンメイドのギターです。
その中でも、80年代、このギターはある種の人々には特別なギターでした。
その特別を語る上で無くてはないならいギタリストが、 #高中正義  さんであり、 #野呂一生  さん(  #Casuiopea ) だったわけです。さらに、#ブッダ のインレイを施したSGを持つ #カルロスサンタナ  さんも、SGを使うミュージシャンとしてはあまりに有名です。この時期のヤマハは、それこそ #ポプコン  や #ライトミュージックコンテスト  そして、#イーストウエストというアマチュアの登竜門までを網羅する、日本の音楽産業を支えた時代でした。、まさに、高中さんに憧れて、耳コピしまくるギターキッズの憧れ、#フュージョン というジャンルが生まれ、その世界に浸かった若者の憧れだったのです。
また、ちょっとギターを知っている人には ギブソンSGと同レスポールのあいのこみたいなコピーもどきギターと思えたかもしれませんし。

【基本的な仕様】

この時代のSGは最高級機種が SG-2000 サスティーンブレードとスルーネックというのが最上位異機種の特徴で多くのアーティストに支持されました。当時の定価は 150,000円 でしたね。
私のSGは、SG-1000 サスティーンブレードは無く、セットネックです。
一方でハムバッキングをシングルとして使えるバイサウンドシステムが付くというモデルです。定価は100,000円でした。
ともにボディーがメイプルトップにマホガニーのボディ
ネックがメイプル マホガニーのラミネートで指板がエボニーでした。
さらに、ここから下位グレードにはSG-800 80,000円 SG-600 60,000円
がありました。
それ以前に SG-500 SG-700 というモデルも有り。さらに、この年代以降も様々な派生モデルが出ているギターです。
1000 2000に関して言えば、スルーネックとサスティーンブレード
セットネックとバイサウンド という仕様の違いもあり、同じシリーズでも音の違いが明確であり、上位機種と廉価版と言うだけでない評価があるのも事実です。いずれにしして、ギターの重量が4.5Kg と極めて重いこともこのギターの特徴で、下手するとレスポールよりも重いわけです。
本当に思いですね。
一方で、音はパワフルでかつ、メローで、エフェクターで音いじりも自在なので、スタジオ向けのライブは厳しいのでは無いかと思わせます。

出逢い


このギターとの出会い
出逢いは16才 高校2年 
それこそ、バイトで買った一本でした。
高校生がバイトで買うと言えば、当時の定番は、#グレコ の #レスポール #フェルナンデス  の #ストラト  となりそうですが。
憧れの高中さんや野呂さんのギター、無理してもこれだったのです。にしても、ハードケースだけでも安くなかったよね? と当時の自分に聞きたいものです。
けれど、そのためか、アンプもエフェクターも後回し、持ち帰って生音で弾いておりました。
これが1981年ですから、今から遡ると実に42年も前になります。

このギターの輝き

以前に、このnoteにも書いた ことがありますが、僕の高校時代は、最初は自分で弾くことをメインに頑張ったのです。それこそ、多くの曲をコピーしては、仲間で集まって演奏をshひて、スタジに通い、そんな普通の高校生でした。それが、ある時、アマチュアバンドを複数集めて、それぞれが手売りでホール代を捻出するみたいなコンサートを何度かしたんですよね。そうしたら、演奏自体よりも、そちらの方が面白くなってしまって・・・
コンサートプロデュースの方が楽しくて、ホールと交渉してバンドを集めて、ライブを作る。バンドが何となく出演して、バンドの呼んだお客さんが来て、入れ替えでお客さんが出てバンドが変わるとお客さんも変わる。この繰り返しだけじゃ限界あるよね・・ と感じて。どのバンドにも属さいお客さん、この手の音楽が大好きなお客さんが足を運んで、数バンドを観てくれる。そんな当たり前だけれど、難しいことに取り込んだのです。
例えば、どのバンドの地元でもない場所にホールを抑えるとか。
そうしたら、そういう人が来始めたんですよね。
まあ、その時、とんでもない強力なバンドが1つあった事がとても大きかったのですがね、そのギタリストが、僕のギターに輝きをくれたのです。
彼は、とかく弦を切ってしまいがちがギタリストで一人いて、彼も私と同じSGを使っていましたが、彼のは600だったのですが、とても鳴りが良くて・・ でステージ上で弦切れに備えてバックアップとして僕の1000を使いたいという申し出があったんですよ。
断る理由は何処にもないので、そのようにしてもらいました。
やがて、そのバンドの出番になり、落とされた客電、ステー上にはアンプのランプと灯る、やがてステージに証明が、その時です。
僕のSGのブラスパーツが輝き、サンバーストのボディーが美しく浮かび上がったのです。もちろんバンドメンバーに視線がいってるでしょうから、他の方が気づいたのかは解りませんが、このギターのステージ映は、ため息が出るものでした。
1982年頃の話です。

弾かない楽器と市場価値

高校を卒業した後は、不思議なくらいピタリと音楽から離れてしまい、自宅でSGを弾くことはあったものの、もはやスタジオもホールも遠い話になってしまいました。就職してからは、それまでに増して、ギターどころではなくて、ただ、同時知り合った人が、楽器屋さんの店長だったこともあり、買ってっ弾いて朽ち果てていたSGをリペアしてくれました。弦高調整、フレットのすり合わせ、ネック調整、さらに電気系統のメンテでした。
けれど、その後も、活躍の場はなく、僕のSGは20世紀を終えます。
2000年代になって、一度だけ、このギターの価値が知りたくて、楽器屋さんに、買い取り価格を教えてもらったことがあります。
当時店員さんの言葉は結構厳しかったのですが・・・

国産ギターの場合は、オールドというカテゴリーが無いので、市場価値的にはただの中古楽器ですから、値はつきません。

そんなものかなあぁ〜 と納得 店頭には、割と良さげなSG1000が1本あって、価格は50,000円 程度、微妙だなあ と思ったのを今も覚えてるのです。

ここに来て気づく音の変化

それが、何の心境の変化か、このSGを再び引き始めたのが、2010年頃
アンプに繋いで音を出すと、このギターの音が良い メチャクチャ音が良いのです。昔はどちらかと言うと、強いけれど硬い音で、オーバードライブよりもディストーション みたいな感覚だったのですが、この頃から、色んな意味で、表現力の広がったと言えます。
何故か、それは分らないのですが、明らか経年変化なのか、音は変化しています。

今の価値 2023年9月の出来事

御茶ノ水を歩いていた時に、ふらりと立ち寄った楽器屋で、SGを見つけたのです。以前に値はつかないと言われたお店です。みてみると、1000ではない、SGが、かなり高値で並んでいるではないですか。
眺めていると、店員さんが話しかけてきて、「これは結構いい状態ですね」と言うと、この個体の状態は良いですねという。このギター特有の塗装の白濁が極めて少ないから。「以前に聞いたんですが、国産ギターは値がつかないとのことでした」というと、「それはいつ頃ですか? 今は市場環境も変わってますから値がつくかもしれませんよ・・」という、「こんど試しに持ってきてみます。」という会話の後で店を出た。
ちなみに、他店で同年式の1000を見つけた 150,000円の値札が付いていたのです。
帰宅して、ケースから出して弾いてみた。
本当に良い音がした が、しかし

私のSG割れてました

音もよく、弾きやすく ひとしきり満足したあと
せっかくだからきちんと拭いておこう
こう考えて、掃除を始めた
白濁が酷いとはいいながら表面はきれいだ(比較的)
裏面を見ると、塗装面にクラックが、それもかなり深いクラックで、爪できちんと割れ目が辿れる。
#ウエザーチェック  とか #ウエザークラック  なんて可愛いものではなくて、このギターの構造がよく分かるくらい接着面の剥離が外の塗装にクラックを入れているのがわかります。

向かって右肩のトルグスイッチカバーのすぐ左から、ボディーカブに向かってクラックが走り上下とも回り込んでます。


木材を繋いだかとが全部わかるのです
ここも複数の木材を組み合わせて


表面は別素材なので綺麗です

これは、放置したらバラバラになるか?
40年を超えて致命傷か
三連休の最終日、開店とともにショップを訪れた
こんな時に行くのは、あのお店ではなくてリペアといえばココというお店に迷わずに出掛けた次第です。

普段信じないネットの口コミも、ここだけは違っていたこと、高校時代ここの名前は、何故かもっとヤマハに近かったような、その頃から、ヤマハのギターのリペアはここと信じているので

クラフトマンの話

このギターを一目見るなり
「もっと外れちゃうとか、剥がれてしまっていれば、やりようがあるのだけれど、現状では割れ目に樹脂を注入してヒビを消すくらいしかやりようがないとのお話。やりようがないという作業だけでも、結構大変ではないだろうかと思いつつも。本当に逝っちゃってれば、塗装全部剥がして、張り合わせをし直して、綺麗に整えて、塗装し直して、ヘッドのインレイはいじれないからマスキングして黒塗装はし直して、そこまでやれば良いのだけれど。もちろんそうなると、ギター1本買えちゃうくらいの値段はかかるけれど・・・と的確な説明。
ありがたいことです。
ここでいう、ギター1本とは、お安いギター1本のお値段では無くて、間違いなくこのSGなら、購入価格の倍はかかりそうだけれどね。
そして、現行の剥がれの開きを停めて樹脂を流し込んで塗装を整えるだけでも、これ以上の悪くなるのは止められるとのお話。せっかくだからネック調整とフレットの打ち直しも必要か尋ねると、フレットは代えなくても、擦り合わせで大丈夫との話。 予算見積もり23,000〜程度とのこと。
何よりも、現在の状態で、弾いていても、壊れてしまう事はなくて、こでで良ければ、大丈夫 という話までしてくれたのです。

本気でやるなら、ここはマスキングして黒は塗りなおす
ヘッド裏も塗り直し、メッキパーツはどうなるのだろう
フレットはまだ大丈夫 

弾く分には問題なし

この言葉ってあらためて思うとすごい言葉だってお気づいたのです。
流石だ このクラフトマンのおじさん
年齢は同じくらいかもしれないが
取り合えず、どうするかは少し考えることにした
治すとしても、どこまで・・・

高いギター1本買える値段をかけて治す。中には、このギターじゃなきゃ駄目だと、大金掛けてでも治すお客さんがいるそうで、これじゃなきゃ駄目ということ、色んな意味で解ったきがしたのでした。

僕は何を考えていたのかと少し考えた

弾くなら問題なし
これじゃなきゃ駄目だと言ってお金をかけて修理するひともいる。
この両者に共通していることがあるのです。
それは何かといえば、楽器として という単純な理由です

楽器として弾くなら問題なし つまりこの状況は音には影響もなく、いきなり壊れることもない

お金をかけて修理する人も、楽器として弾く上でこの1本じゃなきゃ駄目なので、大金かけて治してでも、この1本を弾きたいということです。

そこには、いくらで売れるとか、楽器として弾くよりも、なにか別の価値を求めるという、極めて不健康な気持ちがこちらにあったのでは無いかと、事実あったわけですね。

だから、僕は黙ってこの1本を好きなように弾いて持ち続けていれば良い。
弾けなくなったら、リペアも可能 それで良いじゃないかということなんです。

弾かない楽器を 持つことの喜びなんて 何?
楽器は弾いてこそ意味がある
自分の楽器の価値なんて人が決めるものじゃない決めるのは自分自身それで良いのです。


これと同じ様に、自分の価値なんて 人からの評価で変わるものではない
自分の価値くらい自分で決めろよと、壊れたけれど 良い音を出してくれる
ギターが僕に伝えている気がしたのです
人の価値は、他人に決められるものであってはならない
そう思うのです
自分の価値くらい解って生きよう 自分の価値は自分で胸を張って

帰り道、過去 2回 お邪魔したお店、一度持ってきますと言っていたので、 「今は市場が違います」それだけが気になって、聞いてみた。
正直にボディー割れてましたと伝え。

うちも、クラックを見て、音を出して、「うちもこの状態では出せないので治して、店に出します そうなると、修理代と売値のバランスがあるので、ほとんど利益が出ませんので・・・ という、確かにそうかもしれない。
リペア後の売値から逆算している事は何となくわかる
かなり、この葛藤の時間は長かった様に感じた。
そして、「あとは、お客さんの判断になるのですが?」
結論無く、僕は何を判断すればよいのだろうか???

少しの沈黙のあと、5,000円です。

お礼を言って店を出た。

#買ってよかったもの


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