SIDE "B"
【SIDE B】
「ありがとう。でもそれは…」
『わかった。伝えておくね』
事務所内で同じく顔を会わせる同僚だったから、ではなく困っているその人を見ていたから。
私は自分の仕事としてやった。
中小企業なんて、ちょっとした不祥事があったりすれば、簡単に傾いてしまう。ことの前後はもうあまり憶えていないけど、確か彼女はオオゴトの少し前に転職していた。
個人の事情があって、待遇の良い所への転職。ベテランにそうされてしまうとダメージが大きい所、彼女は頭の回転も早く、また穴埋めにトラックドライバーとしても動ける、仕事のできる人だったからその部署としては痛かった。
その負担は”上司”が抱えている所に、オオゴトも重なって暫くは、皆が大変な中を過ごしていた。
「平本が居ればな…」
何度か耳にしたように思う。
その小さなボヤキはとても大きな本音だった。それだけ上司を支えた右腕、現場も仕切ることができる程の実力が彼女にはあった。
『もしもし、わたし。元気?・・・、あのさぁ、戻って来ない?部長が”アイツが居れば…”って、よく言ってるよ(笑)』
説明は簡単に済ませ、単刀直入に伝えた。
「うん、なんか聞いてる。大変なんだよね。でも悪いけど…ここは待遇が良いし…」
うん。私もそちらの情報が多少は耳に入っていた。ボーナスもあり待遇が良い。その点はこの会社よりずっと良くて、確実に彼女の望む条件を満たしていた。
だけど、違うことの方が。こちらの情報の方がとても重要だった。
「新しい所で、アイツ色々あるらしいよ…(苦笑)」
新参者の扱いは、どこに行ってもあるのかな。中々新しい人を即、”仲間”として受け入れる事を人はできない。そんなエピソードを部長から聞いていた。
もちろんそんな事を話したりしない。彼女は今、強い立場にある。
『そっちは待遇が良いんでしょう?今こっちは、ヒラさんを部長が欲しがってるんだよ。交渉できるじゃない、したらいいよ。自分がこれだけは必要だって金額を伝えたらいいよ』
会社員生活の中で、中々そんな風にできる場面なんてないんだから。それは当然のこととして持ちかけた。
「……うん、わかった。ありがとう。でもそれは…」
「私は、その言葉をやっぱり部長から聞きたい…」
今思い出してもとても素直で素敵だなぁと。仲の良い2人だったなぁと(笑)気兼ねなく言い合いもしていた、そんな上司部下だったと記憶している。
もちろんその後に、彼女は戻って来た。
私の元に届いた入社情報を見ると、大して”乗せていなかった”ように思った。
(もっと乗せたら良かっただろうに…笑)
以前にいた時よりは上がっているけども、恐らく転職先のそれよりはきっと下がるだろうと推測した。それでも彼女は戻って来た。上司への信頼と心地の良さが、ここへ戻してくれた。
現在がどうなっているかは、私はわからない。
私が病院勤務をしている時に一度、工場長と2人でひょこっと来たみたいだった…。彼女は”総務の人”になったみたいだった。
私の後にその場を務めてくれたのは、彼女だった。
人生には意味がある?
「意味はない」と、よく言われている(のかな?)
個の意味をつけていくのが、モノガタリ、時代に意味が見えてくるのがヒストリー。
どちらもストーリーを創り出してそこに「ある」。
あると言えるのは、そこに意味が”ない”から。
空っぽだから、色を付けられる。無色からのカラーづけ。それができるなら、やっぱりそこに意味はあるのだと思う(笑)
(9/24ラインメモ)
・・・
”その時”というのは、ただ経験しているだけで、意味や解釈をつけるには、必ずその時という瞬間からズレていなければならなくて。ズレなければ意味解釈は付かない。
唯一”ズレない時”というのは、外に現象を見る時、と思う。
この自分の中に起きる・起こることに対して自らが「知る」にはラグがあり、外に見る時には”反応”ができる。
一番身近な「自分」のことをこの自分自身で観るには、”距離”を挟まなければならない客観(視)。一度”外の目”にしてみなければまずは見ることすらできない、ということ。
そして最低でも「見る」ことができたら、また更に意味・解釈へと繋げるための”距離”という経過、時間が必要になる。注意は「時間が必要」なのではなくて、意味解釈などを観るために観察していると、「時間が経っている」=「時間が必要」という意味。
自分自身を知るためには自分を見つめることが必要なんだけど、それにはこの自分だけを見ているだけではちょっと難しくて、解り難くて。他者・外を見て「その反応」の部分の、自分の顕れを見た方が早い。
ただしそれは、容易な受入ればかりじゃないので、つい目線を(主語を)、「他者」へと移し替えたりしてしまうのだけども、”コト”から離れて、自分の”反応”の方にピントを調整すること。
時間がかかってもそれを忘れなければ、他者に傾いていた軸が少しずつでも自分へ戻していける。その行いが当たり前に出来ている状態というのは、他者との比較のない世界になっている。
外の世界を見ていながら、そこに”自分”しか観えなくなる。
そんな表現も出来るかもしれない。
「うみのみかをサポートしたい」と行動させてしまう様なクリエイターです(*^^*)。私も同じように読まれた方のサポートになる事を意識しています。 自覚を保ちしっかりと進んでいきます!