2021

16時43分階段を登り改札を抜ける。ホームの奥の方に目を向けると赤いランドセルを背負った小さな背丈の小学生達が先生を取り囲んでいた。外の頬を刺すような冷たさが心地よく感じるのは外気に触れる機会がめっきり減ったからだろうか。
聴き馴染みのある声で子供たちを統制しているその人は10年前お世話になった担任だった、忙しそうにしていたし、話しかけるのも恥ずかしく、気持ちがない混ぜになりそのまま電車の到着を待つ。マスクを常につけている生活はそういう点で楽だ。
2つ隣の駅に停まると、爪の先まで靴紐のある靴を履いた人と若草色のジャンパーを羽織った人が乗ってきた。少しだけ車両が揺れ、私の目の前の座席に座る。
15分おきに来るこの線は時間の流れが限りなく穏やかで優しい。
目の前の2人は発話はせず手をせわしなく動かしながら見つめ合い、ずっと途切れずになにか楽しそうに過ごしている。お互いの目をずっと見ながら過ごす様子を見て、私は相手の話をこんなに目を見て聞いたことがあっただろうかと思った。
古くなった車窓からみえるのは靄のかかった河川敷で、夕暮れの水影が眩しく球技に励んでいるこどもの声が遠景と近景、高架線を通るルートを飛び越え聞こえてくる。

2021年に入り自分を取り巻く環境が大きく変わった。少し前までは外に出る時常にイヤホンをお守りのように首からかけていたが、外出の機会が減ってから自然とそうしなくても行動できるようになり、初めて自分のペースが分かってきたように思う。生活への解像度が急に上がった気がするのは、聞こえてくる雑談などに耳を傾けることができるほどには気持ちの余裕が出来たからかもしれない。常に不安はあるけれど、確実に自分の足で進んでいる自覚があるのでなんとかこれを維持できないかな。

お声がけ頂いたtaizooさんに音楽の人として紹介していただいたので Apple Musicで2021年に1番聴いた曲を載せます。

Prelude -Noam Wiesenberg Roads Diverge 

https://music.apple.com/jp/album/prelude/1364906539?i=1364906543


この文章は 2021 Advent Calendar 2021 の15日目のために書かれました。
昨日はnagatafaさんでした。明日は、ぁぃさんです。

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