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鈴木貫太郎氏の作ったある動画のタイトルが不適切である件について

鈴木貫太郎氏はYouTuberです。

氏のチャンネルの登録者数は13万人で、氏の作った動画はすぐに再生回数1万回を超えます。

動画の内容は主に、数学の問題の解説と、詰将棋の解説です。

この鈴木氏の作った動画に次のものがあります。

Twitterのアンケートが意外な結果に!「モンティホール問題変形バージョン」

この動画のタイトルが不適切であるというのが本記事の趣旨です。

モンティーホール問題とは

まず、モンティホール問題について説明します。

クイズ番組で、優勝者がボーナス・ステージに進みました。

3つの箱があり、そのうちの1つに賞金が入っています。

優勝者は、賞金の入っている箱をオープンすると、賞金をもらうことができます。

優勝者は暫定的に1つの箱を選びました。

すると司会者は、残った2つの箱のうち1つを開けました。するとそれは空の箱でした(ここで重要なことは、司会者は賞金の入っている箱がどれかを知っていて、必ず空の箱を開けることになっていること、また司会者が2つの箱のうち1つを開けるという行為は必ずおこなうことになっていることです)。

そして司会者は優勝者に言いました。「あなたは最初に選んだ箱を開けることもできますし、残った1つの箱を開けることもできます。どちらかを選択してください。」

優勝者は残った1つの箱のほうを開けることにしました。

さて、優勝者が賞金をもらえる確率はどれだけでしょう?

正解は1/2でなく2/3

ここまで読んでくださった方の多くは「そりゃ1/2でしょう」と思われたことと思います。

しかし、正解は2/3なのです。

なぜか?

それについては、上にあげた鈴木氏の動画を見てください。非常にわかりやすく説明されています。この点に関しては、鈴木氏の動画は優れているといえます。

コインの問題

一方、鈴木氏は次のような問題を紹介しました。

3枚のコインがあり、1枚は両面が金色、1枚は両面が銀色、そしてもう1枚は片面が金色で片面が銀色です。

この3枚から無作為に1枚を選び、机の上に置いたところ、金色の面が見えました。

このコインの、見えていない面が金色である確率はどれだけでしょう?

この問題も、一見、答は1/2であるような気がします。

しかし正解は2/3です。

ここまではいいのです。

私の主張したいことは以下の点です。

コインの問題とモンティホール問題は全く別物だ

鈴木氏は、コインの問題を「モンティホール問題変形バージョン」として紹介しています。

しかし、コインの問題はモンティホール問題と全く別物です。

確かに、どちらの問題も、一見1/2に思えるが実は2/3が正解であるという点では同じです。

また、コインの問題ではコインが3枚でしたし、モンティホール問題でば箱が3つでした。

しかし共通しているのはこれだけです。

どう考えても、コインの問題は「モンティホール問題変形バージョン」とは言えません。

まず言いたいのは、問題の難易度が全く違うということです。

コインの問題は、一見1/2が答えのように思えるといっても、少し落ち着いて考えれば2/3が正解であることは誰にでもわかります。

それに対して、モンティホール問題は数学者でさえ間違えるほどの難問なのです。

この問題(と正解)がある雑誌に掲載された後、数学者からの反応も含めどのような反応があったかについては、次のウィキペディアの記事をご覧ください。

箱が4つの場合をコインで再現できるか

2つの問題が別物であることは次のように考えればわかります。

まず、モンティホール問題で箱の数を3つから4つに増やしてみましょう。

4つのうち1つに賞金が入っています。

優勝者は、まず暫定的に1つの箱を選びます。

司会者は、残る3つのうち2つを開けて、空であることを示します。

そして優勝者は最後の1つの箱を最終的に選択します。

すると優勝者が賞金を得られる確率は3/4になります。

次に、コインの問題でも3枚から4枚に増やしてみましょう。

4枚のうち1枚を無作為に選び、机の上に置いたら金色の面が見えました。

見えていない面が金色である確率は?

この問題で、4枚のうちどの種類のコインを何枚にしても、答えを3/4にすることはできないのです。

これが、2つの問題が全く別物であるという根拠です。

さいごに

鈴木氏の出したコインの問題は、いかなる意味においても「モンティホール問題変形バージョン」とはいえないことがわかりました。

よって氏の動画のタイトルは不適切です。

この動画を視聴した多くの人が、コインの問題とモンティホール問題に深い関係があるように誤解してしまうでしょう。

もし、鈴木氏がこの記事を読んでくださるということがあれば(そんなことは万に一つもないでしょうが)、何らがの形で訂正をすべきだと思います。

(2021/01/05 追記)

その後、鈴木氏とメールでやり取りしました。私の主張は概ね理解したと言ってくださり、タイトルも「モンティホール問題の類題」に変更してくださいました。深く感謝いたします。また、「直接連絡して相談するのが筋ではないか」と言ってくださったらんだむひも氏にも感謝いたします。

この記事を削除すべきかとも思いましたが、ひとまず残しておくことにします。削除しようと思えばいつでもできるので。

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