見出し画像

戦後経済史

"私は、『豊かになるには、まじめに働く必要がある』と考えるのですが、その原則が成り立たなくなっている状態です(中略)それは、あり得ないはずです。少なくとも、そうした状況が長続きすることはあり得ません"2015年発刊の本書は元大蔵官僚、経済学者の著者が『1940年体制論』の視点と実体験から戦後から長期停滞の現代日本社会を解き明かした良書。

個人的には著者の本は初めてなのですが。研究者の方にすすめられて手にとりました。

さて、そんな本書は前述の通り、戦後日本の『世界史でも稀に見る高度成長』の【始まりから終わりまでのサイクル】を現場の第一線で大蔵官僚として担ってきた著者が、1940年生まれとしての自らの実体験を回顧しつつ、あらためて【1990年代以降に続く長期不況の原因は戦時中に構築され、戦後も温存・継続しているシステムにある】と主張している『1940年体制論』の確認、そして日本社会の今、そして未来について警鐘を鳴らしているのですが。

民間金融機関で働く顔もある私にとっては、著者が大蔵官僚として現場で体験してきたことを冷静にふり語っている本書の内容は(歳の差こそあれ)まるで【自らの半生の合わせ鏡の様な読後感】でヘタレ"半沢直樹"としてバブルの不良債権処理に追われたり、リーマンショック前後の報道や前政権のトリクルダウン論法に違和感を感じていたこと等の過去の記憶と重ね合わせながら【もやもやとした霧が晴れるかのような興奮と共感しきり】でした。(『1940年体制論』も興味深かった)

また(あくまで私見ですが)"まじめに努力した人が努力しただけ報われる"より、"楽して自分(たち)だけがてっとり早く報われる"方がもてはやされる風潮や、少なくとも『ビジネス本』や『自己啓発本』界隈には、そういった類の本が散見され、しかもよく売れている(らしい)事に私は個人的にも、そして【この国全体の未来についても不安を感じている】のですが。本書から感じる著者の真摯な人柄、そして【当たり前のことを当たり前に指摘、提案している内容】にホッとさせられるような癒しがありました。

あらためて戦後の高度経済成長、バブル(崩壊)について検証したい方や、今の『経済政策』に違和感と疑問を覚えている方にオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?