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日本の小説を読む

"発言は正論よりもむしろ的外れの方が喜ばれた。的の外れ方が大きければ大きいほど笑声も大きくなり、会の別称たる『笑う会』の趣旨にかなうのだった。スカタンを人前で口にするには勇気がいる"1996年初版の本書は1958年から京都で400回以上続いた"シロウト"日本小説読書会の記録。良書。

個人的に何年も読書会をリアル、メタバースで主宰している事から本書に興味を持ちました。

さて、そんな本書は1958年、当時ベストセラーだった五味川純平の『人間の条件』の人気を分析すべく著者含む京都大学人文科学研究所(人文研)のメンバーを中心に開催した討論会をキッカケに、以後月1会の集まりとして、また取り上げる作品は(外国文学研究者は外国語ばかりありがたり、日本のものをないがしろにする知的怠慢がある!と)【明治から現代(昭和)までの日本の長編小説】会員は積極的に発言が求められる会としてスタート。1996年、第410回で幕を下ろすまで続いた読書会の様子を、前半は会自体の発端から終焉までを著者が、また後半は当時の読書会の様子を16作品セレクトして収録しているのですが。

前述したように私自身が(日本文学ではなく主に海外文学ですが)同じような課題本について毎月、仲間たちとシロウトなりに好き勝手に話し合う会を主宰していることもあって、大先輩の"伝説の読書会"として共感しかなかった。

また"シロウト"と本書で書きながら、著者含めて参加していたメンバーは多田道太郎、高橋和己、杉本秀太郎他、研究者や小説家としてそれぞれ名を残す錚々たる方たちなのですが。そういった方々の違う側面が知れる。という意味でも貴重な記録だと思います。

全ての読書会主宰者、読書会関係者にオススメ。

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