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京都西陣なごみ植物店

"『わたしが探しましょうか?』そう言ったのは、春の女神だった。『わたし、植物の探偵なんです』"2017年発刊の本書は、植物にまつわる謎と京都や歴史の知識が混じり合う。優しい日常系ミステリーシリーズ第一作。

個人的には移住してから、京都を舞台にした作品は手当たり次第に手にとっている中で本書にも出会いました。

さて、そんな本書は京都は西陣にある『なごみ植物店』の店員にして、プラントハンターの両親に憧れ"人と植物の仲立ちをする人"となる修行の為に『植物の探偵』を自称する和久井実菜、そしてワトスン役として京都府立植物園の広報部1年目の神苗健のコンビが"逆さまに咲くチューリップがあるのでしょうか?"とか"織田信長ゆかりの食材でお菓子を作りたい"といった【日常的な相談や依頼を解決していく】話が六話収録されているのですが。

まず、京都市街北部の府立植物園から南西しばらくの西陣といった舞台となるエリアの風景が自然と頭に浮かぶようになってきた私にとっては『なごみ植物店』の様な地域に愛されているお店は(フィクションとはいえ)【確かにありそう】と思わされる描写で、設定自体を楽しく受け止めることができました。

また、本書は怪談やファンタジー作品で評価を得た著者にとっては、そういった要素が全くない(あとがきいわく)『冒険』とも言える作品らしいのですが。収録された物語それぞれの伏線を回収しクライマックス的に盛り上がる!【といった展開は全くなく】ほのぼのと優しい人たちとの日々に終始しているのは、何となく殺伐とした雰囲気を日々感じている最近【これはこれであり】と思わされるあったかさでした。

京都、そして花や植物好きな方へ。また日常系雑学ミステリ好きな方にもオススメ。

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