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可制御の殺人

"『人間のシステムはとても複雑だけど、入出力のデータセットがたくさんあれば、制御に介在する精神すらモデル化できるかもしれない。鬼界くんは今、それを研究してるの』"2022年発刊の本書は著者デビュー作『システム同定』を操る謎の男が暗躍する連作短編集。

個人的にはミステリを読みたくなったので、推理新人賞の候補作として高く評価された本書を手に取ってみました。

さて、そんな本書は賞の大賞となった表題作、自らの邪魔者となる友人を排除しようと密室殺人を企てる犯人、Q大学工学部学生・千冬視点の倒叙作から始まり、主人公を変えながら、また理系学生ネタをはさみながら物語は様々な連作短編の形で進んでいきつつ、後半にかけては各作品で必ず登場する『鬼界』という【人間も機械と同様、適切な入力(情報)を与えれば、思い通りの出力(行動)をして操れる】という得体のしれない人物を通じて、各作品の人間関係や伏線が繋がり、見事に回収されていくのですが。

表題作しかり、ミステリとしてはやや強引な展開が多い気がしましたが。それを補うかのように【『鬼界』という人物に存在感があって】総じてとても楽しく読ませていただきました。

また本書がデビュー作とのこと。ぜひ落ち着いたら続編として『鬼界』を再登場させてほしい。と思いました。

理系大学を舞台にしたミステリ短編を探す方にオススメ。

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