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渚にて

『だれもこの戦争を止められなかったの?』『どうかな。。人間の愚かな行為は、だれにも止められないときがあるものだろうな。』"1957年発刊、映画化作品も有名な本書は、第三次世界大戦後に生き残った人類に忍び寄る滅亡を静かに描いたオールタイムSFの傑作。

個人的には随分と昔に映画を先に観た記憶がおぼろげにあったのですが、すっかり内容を忘れていた事もあり手にとってみました。

そんなT・S・エリオットの詩からタイトルが引用された本書は、突発的に発生した第三次世界大戦により北半球は高放射線を撒き散らすコバルト爆弾で全滅(言及されませんが、日本はもちろん。。)偶然、深海潜行中で生き残った米原子力潜水艦が寄港したオーストラリアを主な舞台として、残りの日々が描かれるのですが。前半に関しては危機的な状況にも関わらず【平穏な日常が淡々と描かれていて】ちょっと驚きました。(とは言え、案外そんなものかもしれませんが)

ただ、それを踏まえた上での、灯火のような希望も潰えて、いよいよ放射線が南半球へ到達。登場人物たちが、それぞれに人としての尊厳を保った上で【同じように淡々と死を受け入れていく】後半の描写には、些か理想的かもしれませんが、引き込まれました。あとがきではありませんが、放射線以外にも様々な地球滅亡の危機を抱えてしまっている現在、果たして自分が同じ状況になったら?と考えさせられます。

定まった運命を受け入れる物語。オールタイムSF好きな人にオススメ。

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