TOKYO STYLE
"本書はテクノロジーも、ポストモダンもワビサビも関係ない単なる普通の東京人がいったいどんな空間に暮らしているのかを、日本を外から眺めている人たちにある程度きちんとしたかたちで紹介するおそらくはじめての試みである"1993年発刊の本書は昭和のリアル、バブル崩壊前後の日本が保存された名著。
個人的には著者の別の本『圏外編集者』を読んだ時に、本書を"自分にとってターニングポイントになった一冊"と書いていたのが気になって手にとりました。
さて、そんな本書は奇跡の経済発展を遂げて"ジャパン・アズ・ナンバーワン"とも称され、世界中から注目を浴びていた【かっての日本】そして当時『世界一高く、住みにくい』とも言われた東京。マスメディアが国内外に発信していた『和風』であったり『スタイリッシュ』といったイメージに違和感を感じていた著者が【家賃が安く、狭くても】住人たちは楽しく暮らしている約100軒の物件を簡単な解説を加えて撮影した写真集なのですが。
まあ、狭いが故の必然?あるいは単なる住人たちの掃除嫌いも原因か、本書に掲載された部屋の写真の多くは【生々しいくらいに雑然としていて】ときおり、工夫されたり、単純に最低限の家具しか置いてないことから『シンプルに整理された部屋』が出てくると【深呼吸的に安堵してしまう】という。ページをめくる都度に不思議な圧力を感じ続けた読後感でした。
一方で、2022年現在。本書出版当時と違って。今の日本は海外に比べて【物価も安く】すっかり世界から忘れられつつある国になってしまいましたが。
それでも本書で登場する住人たちの多くがクリエイターという事もあって、物理的に【資料として場所を占めていた】分厚いパソコンや莫大な本、音楽テープやレコードの山を見ると。それらの多くがデジタルデータやクラウド、スマホで代替できるようになった【現在生活、割と便利になっているな】と、比較して、あらためて実感しました。
昭和、そしてバブル崩壊前後の東京のリアルを保存した貴重な一冊として。オススメ。