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はちみつ

遅れた自己紹介にもなるが、僕は会社の仕事とは別にワオンプロジェクトというアーティストの支援を目的とする非営利団体、いわゆるNPOの代表をしており、先ほど紹介したマンションの1室「住み開き511」以前も作品を展示できる「居酒屋を改装した多目的スペース」(アトリエ輪音)を5年間運営した経験があった。その事で自分だけでなく他の方の場所活用に関わる機会が数多くあった。

そういった理由で、この場所で最初に僕が浮かびメモ書き提案したのは、やはり同じような『作品を展示する場所』ギャラリー的な活用をする事だった。マンションの中にある「住み開き511」と違って、大阪駅に「より近く」しかも様々な人が訪れやすい立地の「路面店」だったのも大きい。

でも一方で、確かにアイデアとしての実現可能性は高いかもしれないが、直感的な心の声が”これじゃない、なんか違う”と違和感を告げていた。それにあらためて冷静に考えると立地的に訪れてくれる人は確かに多いかもしれないけれど、利用する立場のアーティスト目線だと作品を展示するに三角形の特殊な間取りは「使いづらく」何より「狭すぎる」

うーむ。どうしようか?そんな時に浮かんだのが、以前に東日本大震災をきっかけに京都でわずか2回だけ数千部発刊したインタビューフリーペーパー『とある』の事。あの時、発行作業だけでヘトヘトになり、ようやく完成した後に今度は設置場所を探すのに予想以上に苦労した経験を思い出したのだ。また、ちょうどその時に東京で発刊媒体を置かせていただいていた「フリーペーパー専門店」オンリーフリーペーパーさんに次いで、京都にも新しく只本屋さんという第2のフリーペーパーのお店ができた事を知った。

そうだ!これだ。僕が発刊した後で、今度は設置場所を探すのに困ったように、同じような悩みを感じている発行者の方は絶対いるはずだ。それに東京や京都以外に、大阪にだって「フリーペーパーだけ」を集めた場所がアクセスの良い所にあれば、きっとフリーペーパーを探している人達にとっても利便性があって喜んでくれるはずだ。またもや思いたったら即、行動する。

”はちみつと(加えて)フリーペーパーのお店にしましょう!”

あいかわらず事前の説明や共有をすっ飛ばし、結論だけ関係者メーリングリストに書き込んだので、当たり前に?オープンした後に”なんではちみつとフリーペーパーなんですか?”と度々聞かれる羽目となり、今になっても関係者を困らせてしまっているが、しかしこの時が、自転車置き場のスペース活用コンセプトが僕の中では「はっきりと完成イメージが視えた」瞬間だった。

そして、その後は(僕の場づくりにとってはこれまでの経験をふまえた”いつものパターン”だけど)この場所のストーリ作りを始める。具体的な順番としては、まずはTwitterやFBなどのソーシャルメディアや口コミで興味をもってくれる参加者を広く募り、ペンキ塗りなどの簡単な作業や会議に参加してもらった後に何度も意見交換し反映させると共に、同時に毎回の作業の過程を「短いスライドムービー」にしてWEB上で公開し拡散するのを繰り返す事で完成オープンまでの広報活動も兼ねる。そんな感じだった(もちろんオープンの時にはその「短いスライドムービー」を一本化して、オープンイベントで上映会をするのはお約束!)

そんな実際の完成までの作業より、不確定要素として心配していたのはスペースが狭い関係上、主にソーシャルメディアだけに限定して募集したフリーペーパー自体がそもそも集まるのだろうか?という事だった。しかし、こちらも想像以上に早く遠方の方からコンタクトをいただいた事で”よし!大丈夫!”と手応えを感じた。

ちょうど世間では、SEALDsという学生団体による安保法案に反対するデモが話題になっていたが、彼らの活動に賛同するかしないかという直接的な話では全然なく、しかし彼ら若者達がちゃんと考えて「自分なりのアクション」をしている姿にも大いに刺激を受けた。”うん、デモ活動とかではないけれど、ここで僕はネットでは検索できず、またアマゾンでも購入できない。でも確かに『フリーペーパーという形で声をあげている人達』を守るんだ”そんな気持ちになったのだ。

そして遂に2015年12月、約3ヶ間の制作作業を終え”はちみつとフリーペーパーのお店”はっちが誕生した。

場づくりメモ:その場所だから出来る事をその場所に応じて柔軟に考える

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