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自由論

"とりわけいまのような状況においては、例外的な個人が大衆と異なる行動をとるのを、控えさせるのではなく、励ますべきである。"1859年発刊の本書は市民社会における自由を根源的に論じ、多数者による同調圧力、均質化に対し、少数派擁護こそ社会的豊かさに繋がると説いた普遍的名著。

個人的にはコロナ禍において様々な自由に制約が加えられる中、質的功利主義者として『満足な豚であるより、不満足な人間である方が良い。同じく、満足な愚者であるより、不満足なソクラテスである方が良い』といった名言で知られる著者の考えを知りたいと思って手にとりました。

さて、そんな本書は市民社会になって、今度は人々の間での相互抑圧、多数者による好みに基づく趣味的判断による暴虐が問題となってきた時代に、まず自由の概念を2つ【個人は、自分の行動が自分以外の誰の利害にも関係しない限り、社会に対して責任を追わない】【個人は、他の人々の利益を損なうような行動をとったならば、社会に対して責任を負う】とシンプルに定式化しているわけですが。

最初に印象に残ったのは【論じ方の丁寧さ】本書でも知的自由の理想の在り方としてソクラテス-プラトンの弁証法を挙げているように、本書でも例えば『言論の自由』について、少数派意見に対して多数派意見が『間違っている』場合『正しい』場合、あるいは『両方とも正しい』場合それぞれにわけて必要性の理由を説明していたりといった【一方的な考えを決して押しつけてこない、また場合によってはキリスト教批判も躊躇しない語り口】に感心させられました。

また著者は、自由の定式化を『普遍的な判断基準』として確認した上で、自分の頭で考えて生きている個性的な少数派『変わった人』こそが、不寛容な慣習による非難や妨げを超えて【民主主義をうまく機能させ、社会に革新や進歩をもたらす】として擁護しているわけですが。現在のSNSやネット上で相変わらず"多数派"が"自分たち"こそ正しいと見なし、逆らう少数派に対して【一方的に暴力的にふるっている今】でも充分に通用する指摘だとシニカルに感じてしまいました。

個人の守られるべき自由について。また社会の豊かさについて。考えたい方にオススメ。

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