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ドン・キホーテ後編1

"ドンキホーテが言った『われわれの伝記の作者は、どこかの魔法使いの賢者に違いない。そういう人間なら、自分の書きたいと思うことを何でも見通すことができるのだからな』"1615年に発刊された本書は、作中にて「前篇が(贋作も)出版されて出回っている」設定から再び始まる自称騎士の物語。

個人的には前篇が非常に面白かったので、引き続き前編から10年後に発表された後篇にも手を出してみました。

さて、そんな本書はとても400年前に書かれたとは思えない、さらにメタフィクションの凝ったつくりになっており、登場人物たちが【前篇が既に出回っている】という設定の中で、前篇を批評したり、矛盾(サンチョ・パンセの驢馬の話など)を説明したりした後で【とにかくも3度目の旅へと出発】相変わらず行き当たりばったりなれど、物語が起きていくわけですが。

後篇になって気づくのは、まず【ドン・キホーテとサンチョ・パンセのそれぞれの変化】でしょうか。わざわざ作中で"この章が偽作ではないか"とした上での、愚かしさとは全く異なる【的を得た発言をするようになってきた】サンチョ・パンセ、そして全ての現実を非日常に変えてきたドン・キホーテが後篇では、旅籠は城でなくちゃんと旅籠に見えるなど、手に負えない狂気から【今度は現実との乖離で悩む】姿になっているのに驚かされました。

また後篇からの新しい登場人物たち。ドン・キホーテの偽物的ライバルとして物語をさらにカオスにみちびく『鏡の騎士』こと、学士サンソン・カラスコ、良識的な『緑色外套の騎士』がドン・キホーテの【対比的位置付けになっていたり】また本筋と関係ないエピソードが多く挟まれた前篇と違って【物語として統一感もあって】10年の歳月の間の洗練を感じさせる気がしました。

400年に書かれたとは思えない、凝ったつくりのメタフィクション文学傑作としてオススメ。

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