夫、私の好きなかたちをしている

夫と毎日ハグをする。
結婚して随分経つけれど結婚当初からしてるし、なんなら最初の頃よりもいま現在の方が回数は増えている気さえする。

今住んでいる土地があまりにも寒いからかもしれない。
夫の体温は猫のようにいつも温かいのでつい手を差し込んでしまう。

夫に抱きしめられたり抱きしめる度に、あまりにもピッタリとしっくりとジャストフィットするので、時折「この人は私のために特別に作られた人間じゃないかしら」と本気で思うことがある。
夫はここ数年の間で太ったら痩せたりを繰り返しているけれど、それでも毎日しっかりフィットする。
愛の成せる技なのかもしれない。

夫の顔が好きだ。
シンプルな造りをしていて余計なものがなくてずっと見ていられる。
一重で垂れ気味の瞼も 色素の薄いブラウン色をしている瞳も、ツルツルの肌も、ふっくらぷりぷりの唇も全部がかわいい。
初めて会ったときから歯並びが綺麗だなと思って見ていた。
子供の頃に矯正をしていたからとはいえ、ズラリと整っている歯列はいつ見ても小気味良いほどである。
声が低いところと、健康的でつやつやしている爪は形まで綺麗なところも良い。
尻がぷりぷりしていて、コボちゃんに出てくるセクシーな女のひとのような漫画尻も好きだ。

モデルや俳優のシュッとした見てくれの良さとはまた異なるけれど、アクスタなどグッズ化しても映えるフォルムで唯一無二の愛くるしさがある。
実際に骨折したときの夫の写真でアクリルキーホルダーを作ったことがあるけれどその出来栄えは最高だった。家の鍵に付けていたところ実家の兄に「その特級呪物なに？」と聞かれて掴み合いのけんかになりかけた。
私しかそう思っていないことは私が一等わかっている。それでいいし、それがいい。

夫と毎日ハグをする。
事あるごとにハグをする。
おはようおやすみ、いってきますいってらっしゃい、だけではない。
家の中ですれ違うとき、クッキーが焼き上がったとき、夫が洗い物をしてくれたとき、些細なことが合図になり私たちは何度も抱きしめ合う。

良いときだけのハグではない。
私が困ったことになったときも「大丈夫だよ」と夫はハグをしてくれる。
夫のハグはどんな不安もじんわりと溶かしてくれる。危機的状況でも「なんとかなる」と思わせてくれる。
そのせいか夫が困っているときは、私も夫を抱きしめる癖がついた。
お互いを抱きしめ合いながら「大丈夫だよ、絶対良い方に行くよ」と言い合うと段々と本当に大丈夫になってくる。

けんかになりそうなときですら、どちらからともなくハグをする。
完全にけんかになってしまったらなかなか難しいけれど、「今の言い方カチンときたな」とか「しまった言葉がキツくなったな」など思ったタイミングでできるだけ素早くハグをする。
「けんかしたいわけじゃないの、でも今の言い方は意地悪だったねごめんね」と言ってハグをするとお互いに嫌な気持ちが萎んでいくのがわかる。
でもこれは夫とのハグがあまりにも気持ち良いからそうなれるのかもしれない。
ハグってすればするほど気持ち良くなるし、相手のことも一層好きになる。

今日で結婚して７年になった。
付き合い始めてからは11年、出会ってからは14年ほど経っただろうか。

毎年一年前よりも好きになっている。もうこれ以上好きになることはないんじゃないか、と思うほどずっと好きなのにそれでも好きになっている。
もちろん盛大なけんかをする日もあるし、先日エレベーターで目がしみるような気さえする臭すぎる屁をされたときなんかは「マジでこいつもう無理」と絶縁したくなったりもしたが、それでもやっぱり好きだと思ってしまう。毎日抱きしめられるとあんなに臭かったおならのにおいがやわらいで記憶から薄れてしまうのかもしれない。

夜は回らない寿司屋へ行った。
ビールを飲んでお寿司を食べて「ずっと楽しくて美味しい11年だねえ」と言い合った。
私たちはこの11年間大きな困難や事件もなく穏やかに生活しているが、その穏やかさは互いに努力と協力をして育んできた部分も大きいので、改めて運の良さと夫の頼もしさに深く感謝をした。

3月28日というのは月末でもあるし年度末でもあるので毎年お互い何かしら慌ただしいことがあるし、当日にお祝いできなかった年もあるけれど、今年は一緒に過ごせてとてもラッキーでした。

眠いので夫におやすみのハグをして寝ます。

ハナレグミ/家族の風景
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