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うーたん大好きだよ

Eテレ「いないいないばぁ!」20年出演のうーたん、3月31日をもって卒業

 これは2023年3月7日午後2時半ごろ、家族ラインに送られてきた記事の見出し。リンクを開き、詳細を読むにつれて涙がぼろぼろと溢れてゆく。確かに最近のいないいないばぁ!では、はるちゃんのこれまでの活動が回想として映されていたから、卒業しちゃうかもなと思っていた。そして私はこれまで何度も女の子が交代する様子を見てきたから、女の子との別れに慣れている。でもまさかうーたんが…ずっと一緒に育ってきたのに。こらえきれずに嗚咽した。受け入れられなかった。

 追い打ちをかけるように、インスタグラムの「わんわんとうーたんNEP」という公式アカウント名は、いつの間にか「わんわんとぽぅぽNEP」に変えられていた。

 次第にいないいないばあっ!を見れなくなった。いないいないばあっ!を見ない限り、うーたんがテレビの中で元気に笑っている思い出は更新されないと思ったためだ。「必ず世代交代は必要なんだ」、「うーたんは20年よくがんばったよ」と家族に励まされた。分かっているけれど、理解していること(理性)と感情は異なる。
 そして自室にあるうーたんのぬいぐるみを見ることも辛かった。頭の中では冷静に「テレビに出なくなっても、うーたんのぬいぐるみ(うーと呼んでいる)と遊べばいいだけのことで、うーたんとの思い出は自分でこれからも作っていけばいい」と考えていた。それでも理性と感情は異なる。テレビの中で動くいたずらっ子のうーたんも大好きだから、やはり辛い。

 思い返せば幼い頃からうーたんが大好きだった。例えば小学生の頃、トイレトレーニングするうーたんを応援し、親近感を覚えていた。中学生の頃、うーたんが出るところだけいないいないばあっ!を見ていた。高校生の頃は母とだけうーたん口調で話していた(ナイショのこと…言っちゃった‼)。大学生になり一人暮らしを始めて、うーたんのぬいぐるみ(うー)を買い、ぬい撮りをするようになった。排水溝を掃除しながら「ごみごみポイ」を歌い、就活で落ちるたびに「だいじょうぶんぶん」を聴いた。

 私はうーたんと育ってきた。うーたんがあって、今の自分がある。

 転機はふと訪れた。NHKプラス(NHKをスマホで見れるアプリ)をたまたまタップしたことがきっかけだった。するとこの回が表示された。

 耳なじみのないタイトルだったが、それは初放送のためだった。好奇心から見始めると、うーたんが寝坊し、家の中で着替え、パーティーに出かける準備をする様子が楽しく描かれている。そして私は、決して忘れられないであろう一瞬を目にした。
 うーたんはきれいに着飾りパーティーに出かける準備を終えると、私たちに背中を向け、画面中央にある扉を開いて出ていく。扉が閉まるとそのまま静寂が数秒続いた。…そして何事もなかったかのように、うーたんが友達とパーティーを楽しむ様子が映った。番組の終わり際に、うーたんの後を引き継ぐぽぅぽが映された。
 うーたんは私たちに言葉のない別れを告げた。そして遠い場所にいても幸せそうだった。私はテレビの中にいるうーたんと、固く繋いできた手と手をほどいた。

 素晴らしい演出を手がけたNHKの方々、ありがとうございます。おかげで、悲しい気持ちが幾分か楽になりました。うーたん、さようなら。遠いところにいてもずっと幸せでいてね。大好きだよ。

※見出し画像は、Albert (https://twitter.com/Albert5L?s=20)が手がけたものです。