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髪とクレームと私

小学校や職場で誰かが怒られていると、こちらまで怒られている気がしてタイタニック号のように気持ちが沈んでいく。

ましてやクレームなど、コンクリ詰ドラム缶の如き沈ませられっぷりだろう。
向けられている矛先が自分でも他人でも相手でも等しく落ち込む。
クレーム先が明らか悪だと感じさせてくれる相手であればまだ良い。横柄な態度や、嘘とわかるようなサービス対応に対してであればまだ胸は痛まない。

問題は態度は別に悪くない相手に対して。

美容院から帰宅したら、夫に後ろ髪が変だと言われた。
どうやら、私のうなじでは波が起きているらしい。
髪を一気に刈り上げてもらったのだが、4層くらいにわけられたガタつきがあると。
メロスには政治がわからぬように、私にはトレンドのヘアスタイルがわからぬ。
髪への関心が低いゆえになんか良い感じにしてほしいと思うが良い感じにしてもらえる語彙力も見知った関係性の美容師さんもおらぬ。

担当さん良い人だったし、まぁ、泣き寝入りするかぁと思っていたが、目立つほどに変だったらしく、夫が美容院に電話をしてくれるという。
この時点で冷や汗しかない。

ただでさえ、美容院が苦手だ。
あまり関心がない髪に対して、そこそこの金額を支払い、その対価に対人関係が発生し金額の割には私の伝え下手故に良いと思える髪型になった成功体験が少な過ぎるのだ。
対応する美容師さんも大変だろうと思う。
その上のクレーム。
今年度の逃げたいランキングTOP5に入る。


夫が美容院へ電話をかける。
温厚だが強気に内容を伝え、夜の美容院へ向かうことになった。

着いてすぐ謝罪を受け、真っ直ぐ席へと通される。
中堅風の人当たりの良い美容師さんだ。
ただ私の後ろ髪に波が起きる前のファーストカットで
「女性は前髪が全て、後ろはどうでも良いんですよ」
と言っていた彼の思想がこんなところで発揮されようとは。
髪に興味がなさ過ぎる私はほへぇそうなんですねとのほほんと刈り込みを入れられていたが
嫌な伏線回収、嫌なワンピースがあったものだ。

夫監修の元、切り直してもらう。
男達が私の髪を巡り、エゴシネーションを繰り広げている。私は物言わぬトルソーとして沈むのみである。ほんとすみません。

最善を尽くして貰ったが、これ以上の修正は長さ的に不可能と結果髪が伸びてから再度切り直してもらうことになった。


「クレープ」や「クリーム」は名が体を表していると思う。響きが愛らしく、美味しそう。
それなのにクレームと言ったら
クレープとクリームの第一子みたいな名前をしておきながら、なぜ音と意味に乖離があるのか。
もっと濁音とか入れた方が厳めしくて良いと思う。
グレームとか。

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