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私に足りないのは


私に足りないのは人生経験とあとなにかしら



クールな表情とは裏腹に、
歌いはじめた彼女は照れくさそうに笑っていた。


別に喋ったこともないし、どこの誰かもわかんないし、通りすがっただけの歌声、特にすごく上手ってほどでもない歌声に、気がつくと耳は恋をしていた。

私に足りないものを、見つける気がないようにみえた。

足りないのが私でしょ、愛しなよってきこえた。


きっと彼女は誰とも目を合わせない。
足りないものを言わせない。


私がクラシックを分かるようになったら、結婚してくれる?


急に、しゃがみこんだ。クールで上から目線の彼女が、下から覗き込んできた。そこに魅了され、私のような人生経験がない若輩者は、恋に落ちるのだ。この曲は、私より、背が高くて、人生経験があって、頭がいい人に歌って欲しい曲だと思った。

きっと私は、強さの中の弱さに、引き寄せられる。

そして今日も私は、音楽と奏者に恋をする。


音楽をあらゆる五感で捉えて、人色をつけたり、景色を装飾したりして、目を瞑る。趣味です。


昨日は、文化祭に行った。軽音部のライブでの話。その他、たくさん大学生と大人を見た。

そんな中でも、
私はあの、長身の彼女を忘れられずにいる。


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