見出し画像

明治初期 米国留学女性たちが見た日本

津田梅子 山川捨松 そして彼女たちの大切な友人アリス・ベーコン         ご存知でしょうか。大河ドラマ「八重の桜」では 水原希子さんと河北麻友子さんが演じていた女性たち。モデル体型の彼女たちが まだ明治初期 開国したての日本で 外国の事もあまりわからない人がほとんどの中 颯爽と洋装でスマートな身のこなしを披露していた感覚でした。津田梅子は次期5000円札の肖像画にも決まっています。なんと来月広瀬すずさん主演のドラマが放送されるのですね。

画像3

画像4

明治政府が国費で米国留学させた少女たち。10年間の滞在で  日本語よりも英語のほうが自由に話せるようになっていた彼女たちが感じた 帰国後の明治期の日常。最近 図書館で借りたのが 彼女たちが手紙などで書いた 生き生きした感想をまとめた3冊の書物があります。

図書館の蔵書は 古い出版物は どんどん閉架書庫行きになってしまいます。1990年代くらいの出版であっても。(この年をまだこのあいだのように思うという時点で 私の年代がわかってしまうか)読みやすく興味深い内容だったので 紹介をしていきたいと思います。

画像1

画像2

久野明子「鹿鳴館の貴婦人 大山捨松」「華族女学校教師の見た明治日本の内側」 大庭みな子「津田梅子」

明治維新直後に 米国に国費留学した5人の少女たちと そこで滞在した家の少女アリス。その友情関係が のちに 明治 日本の教育事情や女性たちの現状を知っていく中で 女子教育や女性のレベル向上にむかって 同志関係になっていくことがわかりました。

<山川捨松>
幕末 会津藩の闘いでは 幼児で鶴ヶ城籠城に加わり 敗戦のあとは 青森の未開拓地へ藩士一族が追いやられ 彼女は函館でフランス人に預けられ
国費留学のメンバーに10~11歳で決められる。時代や親やまわりに翻弄された子供時代。米国で 大学まで進みトップで卒業 イギリスの世界や日本に対する政策への見方についての卒論スピーチが褒め称えられるほど 
当地では有名になった女性。

<津田梅子>
幕末 父は欧州を見てきていたという家庭。身分は高くないけれど
先見の明があったのか 女子にも教育をという理想を持っていた父。
梅子の姉たちも 英語がわかるような教育をうけている。父に留学を決められたのは6~7歳。捨松と一緒の米国の家にいたけれど 途中から子供がいない教育者の家庭で 実の娘同然に育ててもらう。
2回目の留学で入った大学では カエルの研究するほど 理系女子だったらしい。アメリカに残り研究を続ければという声もあったけれど
本来の専門とはちがう 教育者として女子の学校を作ろうという使命感で帰国。

<アリス・ベーコン>
父は牧師で 清教徒の家庭 兄弟もおおい。日本の帝国憲法の一部の草稿にも携わった家庭。日本からの男性留学者たちにも関係があったりした人なので たぶん 国費留学の少女たちの預かり先になった。生活はそれほど豊かではなかったため 収入の面でも助かったようだ。上質な家庭教育や 丁寧な語学指導も 捨松にほどこす家。捨松と1つ違いで 成績も彼女同様優秀で 学校以外での遊びも一緒に仲良くしていた。なんでも話せる間柄になっていた。

この3冊の本は 捨松のひ孫にあたる久野明子女史と 津田塾出身の
作家大庭みな子女史が 書いておられます。
執筆にあたり 実際に彼女たちが書いた手紙(ほとんど英語)を保存してくれていた米国の関係者たちから まとめた資料を得て それを翻訳し 本に詳しく著しています。米国での少女たちの生活の内容、帰国後 日本語を忘れてしまったほどの米国的に育った彼女たちが 正直に感じたままの明治期の日本についての感想、リアルな生活描写、米国人女性が長期間滞在した中での明治日本についての感想、などが書かれてありました。

どれも現代的な文章で とても読みやすく 中身が生き生きしてて 生活ぶりが書かれており 現代と変わらない人間模様や 毎日があるのと同時に
この国は 彼女たちが不満に感じた150年前と いまだに変わっていないなという失望さえ感じさせられる部分もあるのです。
また米国人から 当時の日本の様子がどううつったのか も考えさせられることが多いです。

アリスは 中年になって 少女の頃 梅子と捨松と約束したことで招かれて 来日が実現しました。
梅子が作ろうとした女子のための学校・それを応援する捨松。
そして 女学校の教師として アリスの来日。
アリスはアメリカに帰国してから 当時の暮らしなどを克明に記録して出版していました。アリスにかかわりのあった周辺の東京の人々や 旅先で出会った地方の人々のことも いきいきと伝わるように描かれています。

そして この3人の女性たちが 先見の明や 批判精神 確かな視点などをもっていたことを 読み進めていきながら あらためて感じ入ります。

そもそも NHKの「英雄たちの選択」を見たきっかけで 彼女たちの存在に
興味をもち 深く知ってみたいと思わせられたのでした。
彼女たちにかかわる書物は そこそこ出てはいますが
図書館蔵書を検索して初めて 閉架から発掘してきてもらうことになります。そのきっかけがなければ 人生で出会うことは たぶんなかったわけで。こういう状況は とても惜しいではありませんか。
素晴らしい内容を まったく知らずに過ぎてしまうなんて。

今回 梅子さんのドラマ化も契機になり この著作にスポットが当たればいいのにという思いで 記事を書いてみました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?