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柿の日

正岡子規が有名な句を詠んだ日が1895年10月26日で、柿も旬になることから、全国果樹研究連合会が記念日に制定

柿も蕎麦も栄養価が高い食品であるものの、いっしょに食べると体が冷えることから、食べ合わせはよくないとされる。

実はカリウムに利尿作用があり、蕎麦と柿の両方に含まれていることで
いっしょに食べると下痢になることもあるから、そういった戒めが残るという人もいる。

正岡子規の「柿食えば 鐘が鳴るなり法隆寺」・・・

子規は蕎麦が好きだったかというと
おそらく好きだったのであろう・・・

”酒のあらたならんよりは蕎麦のあらたなれ”
と詠んでいるくらいだから。

芭蕉の解釈学を鋭敏な感覚で推し進め
与謝野蕪村を発掘した功績があり、さらに、小林一茶を高評価する原稿が発見されたという。

長野を旅した子規が

”木曽近し蕎麦と直白の山続”

と詠んでいる

一茶も

”しなの路やそばの白さもぞっとする”

という句があり
似たようなことに共鳴する感覚と
それを一掬の絵のように残す絵画性は、相通ずるところがあるのであろう。

長野は田舎蕎麦もたしかに有名だが更級という蕎麦の名所がある。
また正岡子規の句に、

”蕎麦屋出て永坂上る寒さかな”

とあり、麻布の永坂更科の蕎麦屋のことを描いている。

そば殻を外して真っ白な蕎麦を供する更科
実はこの更科の名前を巡って
7代目 布屋太兵衛と
8代目 馬場繁太郎の間で暖簾騒動になった

その技術や手間が本文であって名前はどうでもというところであるが
商いとしてはそうはいかないのであろうし、そもそもこの白さゆえに御膳そばの功名を得たのである。
でも、更科蕎麦を食べる客側としては、その騒動はちょっと遠くに眺めることとし、柿に話を戻そう。

正岡子規は蕎麦はどうか知らないけれど、柿は好物だったらしく
この有名な句のほかにも柿が登場する句を多く詠んでいる。

柿の実のあまきもありぬ柿の実の
渋きもありぬ 渋きぞ うまき

柿を贈られた子規が詠んだ句だが
柿の果肉の様子が伝わってくるようだ。

飛沫と渋きをかけたのか。
甘さだけではない 自らの健康をも味わっているようでもあり リズムの中に感慨がある。

柿は世界で見ると大きく二種類あるとのこと、

Il y a des centaines de variétés différentes de kaki mais on peut les classer en deux grandes catégories soient le kaki d’Asie et le kaki américain, une plus jeune espèce. Ces fruits sont disponibles en automne, soit de septembre à décembre environ. Les kakis demeurent accrochés à l’arbre même après la chute des feuilles.

アジアの柿と
アメリカ産の柿、、、、

そして、アジアの柿もまた二系統がある。
もっとたくさんの種類があるはずだが大きく分ければということか、、、
すなわち富有柿と蜂屋柿である。

Les deux variétés d’Asie les plus populaires sont le hachiya et le fuyu qui ont la grosseur d’une tomate. Le hachiya possède une chair sucrée et tendre ainsi qu’une pelure mince et lisse de couleur orangée. Il doit être consommé lorsqu’il est très mûr et très mou sinon il n’est pas comestible. Quant à lui, le fuyu peut être consommée lorsqu’il est encore ferme. Ce fruit renferme des graines brunes non comestibles à retirer avant de le consommer.

蜂屋柿は渋が多くて干さないと食べられない。ところがこの文だと甘いとされているので記事を書いた人は、干し柿を食べたと推察する。
柔らかくしないと食べられないとしている。
これに対し富有の方はまだ硬い内に食されるとあるから、ますますそうなのであろう。

松尾芭蕉は、

渋柿や 一口は喰ふ 猿の面

ずいぶんと、実に素朴に詠んだものである。

子規は万葉に帰れと提唱したのだが、万葉集には柿の歌はないそうである。
素朴さが売りの柿だが、
和菓子での甘さの基準が渋柿をでないようにとされていることや
絵にも映える。

葉の色が渋くなり、寒さが見えてくる季節、柿の実をみると、心がなんとはなしに弾む。そんな情景を描いてみるとまさにそれにぴったりの絵をみつけた。酒井抱一の柿図屏風である。

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秋を彩る柿、それを探しに散歩でもしてみよう。

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<来年の宿題>
・柿と和菓子 あるいは茶の湯
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