見出し画像

絵本の日

ビブリオキッズ&ビブリオベイビーが記念日に制定。
「絵本論」が出た日にちなんだという。

自分は心が矮小だな、と感じるときがままある。
バスに乗り込むと、ブザーを押していいかどうか親に訊く子供の声を疎ましく感じ、自分が先に押したことが何度かある。
つい先日も、飛行機で窓側だった、内側に座った子供が窓が見えないとうるさいので窓を閉めて寝た。結果もっとうるさくなった。
ざまぁみろ!とそう言いたいだけであった。大人げない行動だ。
こういった大人げないのは、昔からで、甥と相撲をとっても本気を出してしまう。少しは手加減すればいいのにと妹に呆れられる。甥は本気の私がかえって面白くて余計に相撲をせがんだ。思い切り逆効果である。

だから、絵本は普段は読まないのである。どうせ子供向けだろうという変な先入観があるのである。そして子供向けはやさしく書いてあり、私の知識欲は満たしてくれないだろうという精神的に矮小な感覚、難しいことがいいことみたいな、ある種の権威主義なのだ。

スクリーンショット 2020-11-30 4.52.06



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

つぎの記事では、バンビがナチスの検閲にかかり、発禁になった理由について触れている。
フェーリックス・ザルテンが描いたバンビには、実は強いメッセージ性があるという。そのメッセージ性にナチスは畏怖を感じたのだ。

Noirceur du monde
Mais derrière la fable bucolique, ce sont de plus sombres réalités qui apparaissent. Bambi découvre la noirceur du monde – mort, deuil, cruauté –, et à travers lui Salten exprime ses inquiétudes sur un monde à la dérive. Juif viennois ami d'Arthur Schnitzler, correspondant de Freud et admirateur de Theodor Herzl, Salten voit l'antisémitisme qui resurgit, le climat de haine et de ressentiment de l'après-guerre. « Cette terrible détresse, dont on ne voyait pas la fin, répandait la rancœur et la barbarie. Elle réduisait à néant tous les usages, elle minait la conscience, anéantissait les bonnes mœurs, détruisait la confiance. Il n'y avait plus pitié, ni repos, ni retenue », écrit-il dans Bambi. Comment ne pas y voir un écho prémonitoire de la barbarie prête à s'abattre ? Ce n'est donc pas sans raison que les nazis y virent une allégorie du sort des Juifs d'Europe.
●cruauté ... 残忍
●l'antisémitisme ... 反ユダヤ主義

”終わりのないひどい苦痛は、恨みと野蛮さを広めました。それはすべての用途に還元され、良心を損ない、善良な道徳を全滅させ、自信を破壊しました。憐れみも休息も拘束もありませんでした”
このようにバンビに書くユダヤ教徒ザルテンに、ナチスがヨーロッパにおけるユダヤを描いたと怖れたのも理由のないことではないのである。

画像2

ベンジャミン・ラコーム(Benjamin Lacombe)の可愛らしい絵に、メッセージ性が上手に隠匿されたかのように見えたが、ナチスの危惧と猜疑心はそれを上回ったのだろう。
ラコームは、ザルテンのテクストに惚れ込んでいた。
そして、追い詰められた人間の危険と恐怖を感じさせたかったという。

C'est cette dimension du texte qui a séduit l'illustrateur Benjamin Lacombe. Il le met en images dans une nouvelle édition du texte chez Albin Michel, avec une traduction de Nicolas Waquet, et dans la collection de classiques illustrés que dirige Lacombe lui-même. « Depuis longtemps, je voulais, dans un album illustré, traiter du mal absolu de l'antisémitisme. Un mal qui resurgit toujours, sous une autre forme, ou de biais, comme les mille dangers de la forêt de Felix Salten. » Lui-même descendant de déportés, il a « voulu faire ressentir le danger et la peur de tous ceux qui sont traqués ».

バンビは雄だったんだ、みたいな軽率な感想を遥かに超える絵本バンビに、
自分の無知と矮小さを恥じるのである。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

矮小な自分を超えて、自分は池田あきこさんの”ダヤン”に魅力を感じる。

画像3

大学時代の書棚には、なぜか一冊、上の本が飾ってあった。
そんな自分のプレゼンレイヤーを褒めてあげたい気がする。

早朝の飛行機をとった会社への恨みや、今日の宴会でおべっかを使わないといけない身の危険に対し、子供の声に対する恐怖を感じたのであるが、それは独裁組織を作ったナチスの暗黒のようだ。子供の無邪気には関係のないことであるのに、私は暗黒組織の手先になってしまったのだ。
そういった心のレイヤー(子供嫌い)は、人前では隠し通すほうがいいのであろうと思う。
さて、子供が熱中するからという理由だけの、有用性を超えて、絵本はいまものすごくシュールだという。これから心を入れ替えて絵本と接していこうと思う。

------------------------------------------------
<来年の宿題>
・シュールな絵本
------------------------------------------------


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?