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今日は鵜飼の日

面白うて やがて悲しき 鵜飼かな

芭蕉の句であったか。
とにかく鵜飼は、1300年もの歴史をもつ。
フランスでもよく鵜飼のことは知られている。
バルザックの”人間喜劇”にも列せられる”平役人”にこの言葉(corman)が出てくる。
 バルザックはこの作品の中で役人の生理学を展開している。
主人公は、7省もあるセクションを3省に減らせると改革案を上梓し
はりきろうとするのだが、主人公の妻のせいで失脚するのであるが、実に細やかで写実的に人間模様を書いており、現代を舞台にしてもそのまま通じそうである。

Métivier et Chaboisseau peuvent nous donner un coup de main (...) je ne veux pas lâcher ces deux cormorans (Balzac, Employés,1837, p. 84).

 MétivierとChaboisseauは人名であるが、裏の意味があり(この”平役人”の中で職業役職がそのまま名前になっているのが散見される)、前者は日雇い、後者はヨーロッパカジカのことである。
ここでの引用には書いてないが、なんらかの新聞沙汰になる事件について策略の手伝いをしてくれる人のことを鵜飼と呼んで、”その2人を手放したくない”(ne veux pas lâcher)と言っているのである。
 このように、cormanという単語は鵜を表し”なにかの使い走り”に対して使うといった具合に浸透していることがよくわかる。

 さて、鵜飼を描いた絵画がある

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日本の西洋画の第一人者 高橋由一の作品である。
高橋由一は

est un peintre japonais, connu pour son travail de pionnier dans le développement du courant yōga (style occidental) de la peinture japonaise de la fin du xixe siècle.
(・・・・)
Bien que Takahashi a surtout produit des portraits et des paysages, son tableau le plus connu est celui d'une nature morte d'un saumon, reconnu par l'agence pour les Affaires culturelles du Japon comme bien culturel important.

 バルザックと同じ19世紀の人である。
なんといっても彼の「鮭」の絵が有名で、重要文化財(culturel important)に指定されている。

 東洋の鵜飼が(おそらく長い時間をかけて)西洋に伝わり、それに対して日本に”洋画”を持ってきた高橋由一。
いまのグローバルの交流ではなんとはなしにできてしまうことなのかもしれないが、ありがたい状況を理解するとワクワクが広がる。 

 芭蕉の句ではないが、やがて悲しきグローバルになってしまわぬように、
それぞれの文化に惚れ込むような興奮を少しでも書き付けていきたいと思うのである。

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