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いい肉の日

語呂合わせで、宮崎県のより良き宮崎牛づくり対策協議会が11月29日に記念日を制定。

A5ランクとかいうが、プロはA3あたりを食べるらしい。
A5は脂がきつい。いままで食べた牛肉で一番旨いと思ったのは赤身だ。
そして産地は近江牛。参考Note:  焼き肉の日

もっといえばイタリアで食べたギアナ牛。旅の思い出とともに味が増幅されてしまい、比較ができない。
肉はviande。ワイン同様、赤と白がある。
白はviande blanche
仔牛 うさぎ 鶏肉を指す。

Viande du veau, du lapin, de la volaille, etc., qui a une couleur blanche après cuisson.
ex)
On prescrira d'abord un régime très-doux, n'accordant que des soupes, (...) du poisson cuit à l'eau et des viandes blanches (Geoffroy, Méd. prat., 1800, p. 331).

赤はviande rouge
血の滴る という表現にぴったりの肉である
ジビエ なんかも入る。黒で表現する場合もある。どちらの色も焼き上がりの色で表現される。
今まで食べた中で美味いものを3つあげろと言われたとすれば、

フィレンツェで食べたTボーンステーキが入る。

道に迷った先で入ったこじんまりとした店。
店の照明は、バーのようだった。
カウンターはなく、テーブル席には現地の人しかいない。

英語の説明もなく、おススメを出してくれと
辿々しいイタリア語をやっと発音する

店員はニコやかな笑顔で厨房に何らか伝えた 。

やがて出てきたのがTボーンステーキ。
ソースはかかっておらず、レモンが添えてあった。
結構な量だったが、ペロリと平らげた。

とにかく美味かった。

キアナ牛であろうことを知ったのとフィレンツェはTボーンステーキが名物だと知ったのは帰国後の後日談である。

C'est une race bouchère anciennement de trait. Elle fournit une viande tendre qui a fait la renommée du bistecca alla fiorentina (steak à la florentine).

希少なものらしいし、なんだか 地産地消したい気になって
日本で食べようと欲が出たことはない。

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最近はまっているのがアンガス牛である。
先日紹介したShakeShackで使っているのは
このお肉で、こっちは反対に日本でもぜひ味わいたいと思うから変なものである。
参考Note: ハンバーガーの日

アンガス牛はスコットランド原産で
今ではアメリカ大陸やカナダ、オーストラリアでも生産される。

キアナ牛は白くアンガスは黒い

アンガスといえば
Tu ne peux pas goûter à une meilleure viande que ça
という記事がある。
牛のブリーダーJeannot Luckenuikについてである。名だたるレストランの名店が彼の牛に評価をあたえている。

Jeannot Luckenuik, un éleveur de Lefebvre qui est dans le domaine de l’élevage depuis plus de 30 ans, a toujours visé l’excellence. Il alimentait le restaurant du réputé chef cuisinier québécois Martin Picard, Au Pied de Cochon, en bœuf Angus, lorsque ce dernier l’a dirigé vers le Wagyu sans même le savoir.

その経緯には大変苦労があったようである
Wagyu Québecというサイトにも書かれている。

il n’a jamais regretté sa décision de réorienter son élevage de bœufs Angus vers le bœuf Wagyu en 2011.
≪Au début, on utilisait l’appellation Kobe Style, parce que les gens n’avaient aucune idée c’était quoi de la viande de Wagyu. Il y a même des agronomes qui ne connaissaient pas ça!≫

拙訳)最初は神戸式と呼ばせることにしたんだ
なぜかって? 和牛がなんであるか 知ってる奴なんていなかったからだよ それを知らない学者だっていたんだ。

それはともかく、和牛よりも外国産の牛のほうが旨いと感じるのは、年のせいも大きいのかもしれない。

 ここで、日本の牛肉産業についての話題として、過去ログをみてみよう。
2011年の8月3日の記事である。

安愚楽牧場の支払不能問題を東京電力が負担するのは
いかがなものか・・・
その是非をとやかくいう 論点の持ち合わせがないが
もともと、牛の債権化、証券化というのは危険をはらんでいた
という専門家もいるそうである

先物で小豆やとうもろこしの販売権が取引される
不安定な収穫に対し、
農家にとっては不作でのリスク回避につながる制度である
安愚楽牧場の場合には 5-7%の還元をうたっているが
オーナー制度なので、牛が死ねば
飼い主の配当はゼロで購入代金はパーである
そもそもこのモデルはあやうい成立なのではないだろうか
たとえば
牛が伝染病にかかったら 今回と同じことがおきるであろう
原発の事故は引き金のひとつには違いないが
別の原因でも起こりえた現象である
たとえば、ユッケで死者が出た問題も
牛肉の価格の下落の原因である

さまざまな理由で資金ショートが起きたのであろう
そういったリスクと引き換えに配当金利を得ていたのであるから
リスクがあっても補填するのはどうだろうか・・・

もともとこういった 物権の債権化が発祥したのは
17世紀のロンドンであった
コーヒーショップに集まる人々が 
株式会社をつくり、保険制度や証券取引をつくった
当時 戦費のためイギリスの国庫が空になったとき
アメリカの土地を担保に回して債権化し国庫が潤った
航海術の向上が一般的になるまでになると
アメリカに行くことができる
自分の土地はあるのか・・・
じつは架空の土地を作って配当することができるので
アメリカに行って確かめさえしなければ この制度は無尽蔵である
南海泡沫事件は そのバブルがはじけた結果であることは
このブログでも かつて ふれた
コーヒーショップにいたダニエルデフォーが
「ロビンソンクルーソー」の中で
やたらとデータを重視する
たとえば 船の描写で
マストの長さや、幅 その先端付近のシミまで言及するのは
リアルなものを求めたのである
この書き方は皮肉でもある
リアルなデータを集めても 虚しいのである
それは 言葉と物(フーコーの仕事)の世界である

データとリアルものとの差異などとっくに気づいていたのである
普遍言語運動のあとの展開から 言葉が恣意性をもつこと
すなわちシニフィアンとシニフィエの結びつきが無理やりであることなど
とっくに気づいているのである
循環させること 流通を作り出すこと
そこに金脈の元を見出したのだ
デフォーは 編集者でもある
そして、彼のつくったもの 株、貨幣、保険・・・
リアルなデータを集め提示し 循環させる
そこに真実があるのである
ショートするまでは
データと真実の一致など必要ない
しかしこれは大事な概念でもあるのであって
マニエリスムといった技法にもつながることについて
このブログでも再三ふれているところである。

ともかくも、
事物と事物の結節点(橋)
橋を橋でつないでいく、そして循環が生まれる
このつないでいく作業は 
デリダの脱構築(ずらしていく)の作業にも似ているだろうか
もともと脳の認識だって モナド的な単位でみれば
刺激(パルス)をシナプス(橋)でつないだ総体である
こうなるとすべてが不確かに思えてくる

さて
牛肉の話にもどそう
安愚楽の牛のオーナーも
牛の真価などに興味はない
牛が生み出す利益のみがリアルなものである
そして、牛の値段(データ)そのものも
牛の真価など表してはいまい
たとえ放射能に汚染されていない牛であっても
風評というデータのせいで牛の価値は下落するのである。

上滑りの空回りな牛肉投資。そこに食品から、旨いものからどんどんつきはなされていく民衆の状態が見て取れる。看過できないと怒るべきか、食についての無知蒙昧をあきれるべきか。

参考Note:  牛タンの日

牛肉をみるたび思い出すのは、キアナ牛の鮮烈な印象と、意地汚いブランド信仰である。
私は最近、羊肉の旨さのほうが牛より上であると胸をはるようになってきたのだ。

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<来年の宿題>
・羊肉について
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●見出しの画像
飛騨牛のシャトーブリアン(画像はお借りしました)

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