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公衆電話の日

日本ではじめての公衆電話は、新橋と上野駅前に設置された。
1900年の9月11日のことである。

かつては、自宅に電話があることが社会的なステータスであった。
自宅に電話を置くには、電話加入権という権利を得なければならず、
そのためには、施設設置負担金を支払わないといけなかった。この負担金の金額、7万2000円というお金は高額でこの支払能力がステータスにつながる。税制上も資産価値があるとされていた。時勢的にスマホ時代になり価値が見直されて、現在は必ずしもこの限りでない。

 昔のドラマや映画では、下宿人にはこの負担は重荷であり、どうしても大家に気をつかいながら借りるというシーンがある。これでは、恋路も進まなかろうと、公衆電話がドラマにも登場してくるのである。

 昔は公衆電話は赤電話であった。そのうち薄いピンク色になった電話が出てきた。公衆電話と自家用兼用のやつだ。商売をやっている実家にも薄いピンクの電話があった。そして、いつのまにか街の公衆電話は緑色になった。
電話ボックスは街のいたるところに見られた。
 私も金の無心で実家に電話をかけた苦い思い出がある。
電話をするということは、私にとって非常事態だった。緑色の受話器を握りしめながら親にすまないと謝ったのだ。その陳謝りはNTTの線を伝って、薄ピンク色の電話とつながっていた。
 当時は幸いバブルで、バイトにすぐにありつくことができた。アルバイト情報誌は電話帳みたいに分厚かった。バイト先に面接の申し込れをしたのも公衆電話からだった。電話ボックスは自分と社会とをつなぐ箱でもあった。そして日常生活に変革やピンチがあった場合にはいる箱なのである。
 友人と待ち合わせで会えなかったときや、予定外のことが起こったときに、あの半密室に入る。そんな場所であった。

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 私はどんなに友人に責められても電話を家に引かなかった。非常事態が日常になってしまうのが、ただ怖かった。
携帯電話が出たときも、当然拒み続けた。下の表は携帯電話の料金の推移である。

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 なんで、みんなが持っているのか不思議だった。携帯電話が普及したのは私が社会人3年目くらいになったときだと思う。いつもそういったことを感じる。一人前の社会人とみなされるためには、とにかく金がかかるのだ。
アルバイトじゃないんだから携帯くらい持て、と会社の同僚や先輩のアドバイスにも屈しなかった。逆に意地で持たないでいた。
 私の上司は会社から持たされていた、しかし、毎月お金を経理に入れていた。理由・・・私用電話である。最寄り駅の公衆電話には、奥様に車迎えを頼むサラリーマンが列をなす。その列に並びたくないからと電車の中から奥様に、”もう少しで着くコール”をしていたのだ。その代金を毎月現金で返納することになる。上の表をみると、”もう少しでつく”と電話しただけでも当時(1996年ころ)には結構な料金になるのだ。上司に私は、「基本料金とかも按分負担するのがスジですよね」と冷やかしたりした。
 お金に余裕さえあれば、携帯電話はメリットだけが目立っていた。
私はマクルーハンを読んでいたので、その先になにが起こるか・・・(携帯電話に自分の時間が奪われる現象)ある程度予想がついた。だから頑なに持たなかったという部分もある。

 携帯をみんなが持つようになって、公衆電話は役目不要になったのか・・・すぐにそうなったわけではない。
 通話料金が結構高額なので、やはり普段使いはすぐにはできない過渡期が当然あった。それも金額が下がるにつれて普及する。しかし、それ以外に、もっと大きな理由がある。国際電話である。
 いまでこそ、国際テレカがあれば携帯からも国際通話が可能であるが、携帯電話と電話はいまほどシームレスな関係ではなかった。国際電話をするとなれば、コンビニなどでKDDIのプリペイドカードを購入し、公衆電話にいって通話するという方法が過渡期であった。
 当時住んでいた街でも公衆電話ボックスは結構な数があり、夜中にその電話ボックスの中で座り、電話をしている海外の方を何度もみかけたことがある。ある人は大きな身振りで形相も穏やかでなかったりした、そして、泣いている人もみかけた。
 公衆電話は、今風の言葉でいうと、エモい。クールなスマホ、ホットな公衆電話だ。
 けれども、ちっともエモくなくエグい話もある。コンビニで買うはずの国際テレカだが、これを上野公園のイラン人から買うルートがあった。コンビニで買うと5000円する。プリペイド式で5000円分の通話ができる。これが大久保で買うと3000円で買えるという。ところが、上野のイラン人から買うと1600円で買えた。なにを隠そう、大久保の店(?路上販売)はイラン人から仕入れたものを横流しにしているだけだ。ひところ、だいぶ興味をもったが、なにやらきな臭い話なので、調べてみたりはしなかった。

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<来年の宿題>
・ 携帯電話の仕組み
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