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クリスマス・イヴ

 クリスマスがキリストの誕生を祝うというが、イエス・キリストの生誕日が12月25日だとされるのはいささか乱暴で根拠がない。聖書にも書いてない。ミトラ教とか太陽神の誕生を祝う日が由来となっているとか諸説がある。また、”イヴ”とはEveningのことでユダヤ暦が日没を一日の終わりとしたので、日が沈んだときにクリスマスが始まるということである。「この恋あたためますか」というドラマの中では一般的にクリスマスは24日の夕方〜25日の夕方までという意識があるということであった。

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 さて、クー・クラックス・クランという秘密結社が1865年の12月24日に結成された。アメリカという国の南北戦争が1865年の4月に終結した。南部の再建が必要だったが、リンカーンが暗殺され、これを引き継いだのが、アンドリュー・ジョンソンで彼の政策では、奴隷が解放されたのだが、自由だけが与えられ、土地もお金もなく放り出された。これを支援したのが、「ユニオンリーグ」という秘密結社だ。リーグは”L”、すなわち”リンカーン”、”自由”、”ロイヤル”(これRじゃん?)、”リーグ”を意味する暗号を用いたという。ユニオンリーグによって社会進出を果たす黒人を、苦々しく思っていた南部白人は、奴隷制を復活させようと持ちかける。黒人にも協力を求めるのであるが、かなわないとリンチにかけた。K.K.Kはこのような背景で、南部連合の6人の退役軍人によって始まる。南部白人のユニオンリーグへの抵抗が本義である。彼らは軍人であってプランテーションの領主ではない奴隷制に反対するという思想はもたず、ただ政治の彼らなりの考え方としての不均衡を憂いた。だが、人種差別もリンチによる悪の快感も結社に関係なく通底にあるものである。リンチに加担する者が増える中、連邦政府はクラン対策法を制定、1868年までに第一期クランは消滅する。
 20世紀に入り第一次世界大戦によりナショナリズムが勃興する。ナショナリズムとは、アーネスト・ゲルナーによれば、”政治的な単位と民族的な単位が一致しなければならないと主張する政治原理”であるという。神のお告げをきいたジョゼフ・シモンズがアトランタ郊外のストーンマウンテンに登り、十字架に火をともしながらクラン復活を宣言する。反ドイツ主義を全面に掲げスパイ摘発活動が最初の活動であった。組織はだんだんと増えたが、リンチ事件の発生はだんだんと減っていった、といってもこの組織があろうがなかろうが、黒人差別は依然としてはびこっており、リンチまでは至らないが暴力事件や経済的な苛めは残る。第二期の特徴として、慈善活動をおこなったことも知られる。貧困を救い、教育を施す活動の多くが多くの人の賛同を得た。1924年には、数百万人を数える会員がいたという。しかしながら、産業構造がプランテーションから工場に変わり、移民問題が社会を揺るがす時代に生まれていた。クランはこれに対抗する形でWASPという優生学を標榜していたのである。移民問題すなわち安い労働力によって自らの職が奪われるという問題を組織にすがった白人労働者たちのレジスタンス運動であったが、1924年に組織の理念である政治への参加が果たされ、移民法が制定されると急激に数を減らしていった。ほかにも結社幹部によるレイプ事件や、慈善活動による金集めに勤しんでいた幹部の懐具合が明るみに出たのが減少の理由であるが、根本的には、WASPに関する成果がなにも見られていないことがあるのだ。一向に白人中心社会が訪れないことに諦観を抱き組織を去っていったのである。第二次大戦後、第三のKKKが組織されるのであるが、それもまったく同じ構造であるが、もっと節操なくネオナチとも結びついているという。
 こうした差別的な活動の根底には、白人であることという既得権益が脅かされていることのレジスタンスとして表出してくるのである。同じような構造が、日本の嫌韓や、ネトウヨなどに見られることはいうまでもない。それらは高度な知識社会になることへの怖れが噴出し、”日本人であること”を既得権益としてその妄想にしがみつく輩に過ぎないのである。
 一方で、ナショナリズムと対極にあるのがリベラルである。そうしたリベラルの代表であるGoogle、Amazonなどの多国籍企業は、つぎのような措置を発表した。つまりは白人至上主義者の掲げる旗や、ネオナチの書籍、KKKの商品はすべて取引禁止にする。

Des drapeaux de la suprématie blanche, des livres néo-nazis et des marchandises du Ku Klux Klan étaient tous en vente.
Les Algorithmes d'Amazon et de Wish ont également recommandé d'autres articles de la suprématie blanche.
Les trois entreprises ont déclaré à la BBC que les produits racistes étaient interdits sur leurs plateformes.

Amazon a déclaré à la BBC : "Les produits en question ne sont plus disponibles et nous avons pris des mesures contre ceux qui ont offert les produits et violé nos politiques."
Google a déclaré à la BBC : "Nous n'autorisons pas les publicités ou les produits vendus sur nos plateformes qui affichent des contenus choquants ou qui encouragent la haine. Nous appliquons ces politiques avec vigueur et prenons des mesures lorsque nous constatons qu'elles sont violées".
Wish a déclaré : "Nous nous efforçons de supprimer ces éléments et prenons des mesures supplémentaires pour éviter qu'ils ne réapparaissent."

 K.K.Kだけをやり玉にあげることはできない。トクヴィルは、結社に入会するアメリカ人の性向を”ヨーロッパのような伝統的な階級組織がないアメリカ社会において、個々のか弱き市民はなんらかの団体に身を寄せる”と分析している。
 相互扶助と称して、なんらかの宗教的なあるいは民族主義的な支柱にしがみつく性向は、経済格差と性愛の格差によって助長されるのである。
 クリスマス・イヴが、そのような格差を露呈する象徴的な行事であると私見では思うのである。
 しかしながら、急進派のリベラル=リバタリアンが自由とグローバルを叫んでもいきつくところは、ディストピアなのかもしれない。経済的自由をAI化によって富の分配が全人類に行き渡ったとしても、性愛の差別などすべての差別化する欲は消えないからである。そんな矛盾をどのように解決していったらいいのかは、もはや神に頼ることしかどのみちできないのかもしれない。なにはともあれ、メリークリスマス!

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<来年の宿題>
・差別とはなにか☆
・クリスマスの起源
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