七草の日

　日本ではあまりにも、春の七草が有名になってしまったが、この風習のもとはご多分に漏れず中国からである。1年で最初の節句、”人日(じんじつ)の日”である。
　中国の風習では、地区によって違う。ある地方では麺を食べるところもある。長寿の意味を込めて長いものをということである。また、セロリを食べたり（勤勉）、にんにくを食べたり（効果増大）、葱（賢さ）、ニラ（粘り強さ）、肉（豊かさ）、ライスクラッカー（縁を取り囲む）などの7つの食材を、ダジャレに合わせて解釈して縁起を担ぎ、一年の衣食住が足りて家庭内が円満になるように祝いをするのである。

“人日节”的中国民俗，因地区而不同，有的地方吃面条，取健康长寿之意；有的地方吃用芹菜（勤快）、大蒜（划算）、葱（聪明）、韭菜（耐久）、鱼（有余）、肉（取富足之意）、米果（取团圆之意）等做成的“七宝羹”，借七种菜的谐音或寓意，祝福新的一年里丰衣足食，家庭美满幸福

この７つの食材を食べる風習が日本に伝わり、日本の春の七草と呼応した。

この話は神話にもとづく、中国では創造の女神がいるのである（女娲）
その女神が、この世を作るときに鶏→狗（いぬ）→豚→羊→牛の順に動物をつくり、7日目に人を作ったという（だから人日）、そして、8日目に（谷＝穀）穀物を作ったというのである。

在古代中国神话传说中，女娲初创世，在造出了鸡狗猪羊牛马等动物后，于第七天造出了人，人和动物都有各自的生日。鸡的生日是正月初一，狗的生日是正月初二，羊的生日是正月初三，猪的生日是正月初四，牛的生日是正月初五，马的生日是正月初六，人的生日是正月初七，谷的生日是正月初八

漢、魏を経てこの活動はだんだんを発展して、唐の時代には、この人日の節句を重要視するようになる。”人日寄杜二拾遗”という詩の文句から、幸福を祈るだけでなく、行方不明の人が帰ってきたりする。だから、この日は旅行などへ行かずに必ず家で過ごさなければならない。

汉,魏以后，人日逐渐从单一的占卜活动，发展成为包括庆祝、祭祀等活动内容的节日。到了唐代，民间仍相当重视人日节。高适的《人日寄杜二拾遗》诗中就有今 年人日空相忆，明 年人日知何处的感怀之句。它证明唐代的人日节，已不仅仅专用作祈祥祝安，又衍添了一层思亲念友的气氛。时至今日，也有在外的游子在年前回家，过了人日节才能远走他方。人日节这天不出远门，不走亲串友，在家团聚。人日节下午一般吃长面，也叫拉魂面。意即过年时人都走东串西，心都野了，人日一过该准备春耕生产了。故而吃拉魂面，把心收回来，准备春耕生产

それは、おそらく1日には鶏は食べず、6日には牛を食べないため同様に7日には、人を殺してはならないと転じ死刑執行も行われない。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

陸游という官僚かつ詩人が宋代にいた。
幼年は北方の金という国との戦の最中で逃避行を続ける。20歳のときに唐婉と結婚するが、占いによって母に離婚を進められ離縁する。このときの辛い感情は、生涯癒えることはなかった。科挙に首席で合格するも、時の権力者の孫を差し置くことになり、不合格にされるという憂き目にあう。このあとも、おしなべて才覚のある割に不遇であり、かつ彼の幼少に植え付けられた愛国心も報われることはなかった。晩年の20年は貧しい恩給生活を送る。だからこそ、生活の機微を詠んだ字句に陰影がくっきりと際立つ。
そんな彼が、人日について詩を詠んでいる。

人日西郊路，晨光射浅滩。
停桡喜萧散，照影叹衰残。
社酒香浮瓮，春蔬绿满盘。
山茶虽慰眼，不似海云看。

西郊路というのは成都の街である。水運が発達している都市でもある。
光が指す浅瀬を進む舟の櫂を止めて、あたり景色を眺めるがここにも影がさす。振る舞われた葡萄酒の横には野菜の緑が盆の上にあふれている。
椿が咲き誇るが、雲海には似ていないと、どこか目に見える素晴らしい景色と裏腹の心の影が見て取れるような詩である。

この影の源流は、Wikiにある通り、釵頭鳳の歌にある。
元妻のことを想って詠んだ歌である。

紅酥手、黄縢酒
滿城春色宮墻柳
東風惡、歡情薄
一懐愁緒、幾年離索
錯、錯、錯
春如舊、人空痩
涙痕紅浥鮫綃透
桃花落、閑池閣
山盟雖在、錦書難托
莫、莫、莫

このあと読む歌のいくつかは、「釵頭鳳」にほとばしる強い感情が少し薄まって顔を覗かせる。違うバージョンの歌に過ぎない。

-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

本朝では、七宝が七草に取って代わったと書いたが、厳密にはそんなに簡単でもなく、七種菜羹というものが中国にあり、これが日本の小正月の行事に習合されたとみる。

并不是随便找七种不同的菜混在一起就是“七羹”了。各地物产不同，所用的七种蔬菜也不尽相同，但都有着美好寓意，下面我给大家一一介绍主要的几样蔬菜。芥菜代表新春发财；芹菜代表勤快；大蒜代表会算钱；韭菜代表着长长久久；葱代表着吃后会更加聪明；芫荽（香菜）代表缘分；百合代表百年好合；这道七菜神奇的是虽然每种菜都味道非常鲜明，但把他们炒在一起做出来却非常好喝，互为融合~

肉が百合や、香菜に取って代わっている。そのときの食材を取り入れて因縁をつけていったものである。

芹・薺・御形・繁縷・仏の座・菘・蘿蔔のうち万葉集には芹しか出てこないとどこかで読んだ。秋の七草よりもあとの時代で並べられたものである。というのに少し関連して、
江戸川柳には、

七草は源氏平家は小豆粥

と源平の旗を白紅に書かれているが、習俗が入り乱れて存在しているのを揶揄しているようにも思える。

そのとき　そのときのとってつけが習俗になり、一年の占いに使われるのだれば、占いに引き裂さかれてしまった陸游夫婦は浮かばれないであろう。
心を大事にし、モノはとってつけでもよい。モノによって心が引き裂かれてはならない。

来年は、陸游の”游山西村”について書こうと思う。

------------------------------------------------
＜来年の宿題＞
・陸游の”游山西村”
・春の七草と江戸
------------------------------------------------