画面の中の彼と、彼を見る私

気分が塞いだり、何もかも否定的になってひどく落ち込む日がある。そんな時、私はyoutuberたちの動画を見る。自分では思いつかないようなばからしいことをみて笑ったり、話がとても上手くてつい引き込まれてしまったり、自分より下の世代の子たちのあどけない声に癒されたりする。
そうすると、重く滞留した心に新鮮な空気が入り込んで、何となく元気になれるのだ。

でも昨日、ずっと見てきたyoutuberの方が1人、メディア出演、SNSを一切やめ、就職活動に専念するという発表をした。私はあまりに突然のことに面食らった。後からじわじわと、喪失感が心を覆っていった。
キラキラした世界で華やかな笑顔で夢を語る彼と、今日もスーパーで半額のシールのついたお弁当を買って帰る私。私は彼を知っているけど、彼は私を知らない。でも、その距離感が私の心を支えていたことをひどく痛感した。
それと同時に、今まで別次元だと思っていた彼のいる世界が、自分のいる世界と急速に結びついた。それは多分、「就職活動」という今の自分にあまりに身近な言葉が、彼の口から飛び出したからだと思う。

奇しくも、彼と私は同い年だった。歩んできた道が違っていただけで、見る側と見られる側にいただけなのだな、なんて単純なことを思った。仕事とか、恋愛とか、そんな人間らしいことをお互いしていて、成功も失敗も約束なんてされてない場所で、同じように頑張っていたんだな、と気づいた。そうしたら、なぜか涙が出てきた。

彼がメディアからいなくなっても、この世界のどこかで頑張っていることは間違いない。そう思えば、喪失感はもう何処かに消えて、また新しい勇気が湧いてくるような気がする。その意味で、彼はyoutuber、インフルエンサーとしての役割を立派に果たしたし、これからも果たしていくのだろう。

少なくとも私は、本当にたくさんの勇気をもらった。声は届かないけれど、こっそり感謝と彼の新たな門出を祝して、私は明日の私を生きるため、今日も眠りにつく。

#エッセイ
#日記

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