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映画「首」感想

 グロいの苦手なくせに見てきた。グロいの苦手だから見てる途中にめちゃくちゃ後悔した。でも面白かったよ〜〜って話。以下ネタバレあり。






 いや見るの間違えたわ……って思ったのは、お饅頭のくだり。普通に怖くて泣いちゃった。あんなことされて、それでも好きって言える遠藤憲一…しかもその後光秀好き好き言い出すから、なんだ本命は光秀か???と思ったり。
 オクサリ様が心の中に住みついているから、監督さんには申し訳ないけど超ざっくり関係捉えるなら、
信長→周りの男みんな自分のものにしたい。悪魔。誘い受けだと美味しい。
光秀→村重一筋だと思いきや意外とそうでもない、多分心の内では信長に惹かれてた。ずっとお慕いしておりました、は命乞いのためと村重には説明してたけど、あれ恋を自覚した瞬間だと思う。強い信長がよかった人。人の親である信長は弱いと思って見限った、と私は解釈。でも抱いた村重も大事だったから直接手を下してはない。
村重→メンヘラ。

 冒頭、首がない遺体のなかから蟹さんたちこんにちはしてくる場面、あれ見てまずウッとなる。江戸川乱歩「盲獣」思い出した。「盲獣」もね、海辺の町で殺された海女さんの四肢が切断された遺体から流れる血溜まりを、蟹さんがぴちゃぴちゃ歩くのよ。あれトラウマだったな、近代文学の授業の課題のために読んだけどできることならリタイアしたかった。
 尾張弁でまくしたてて人を蹴って叩いてハゲだの猿だの言いたい放題だった信長さん。饅頭こわいからの食い尽くすようなキスを見て、あ、この映画ガチだ、って思った。男性同士の惚れた腫れた、小説や漫画だと美化されがちだけど、あの描き方は愛する男を本能のままに自分なりのやりかたで愛する、って感じがした。美化された同性愛も好きだけどね、綺麗で。
 そんな信長さんを裏切る光秀さん、信長が跡継ぎを息子にするつもりだと知って裏切ることにしたわけだけど、これは信長も子を持つ親であるという、信長の弱さを知ってしまったからの裏切りだと思った。弱いから裏切るの、狂ってていいよね。信長さんには誰よりも狂人でだからこその強い人であってほしかったのよね、わかるよ~~~~~弱さはいらんのよ。弥助も本能寺で信長の首をスッパリ斬ったわけだけど、あれもいよいよ死ぬとなったときに諦めていた信長の弱さを見て見限ったんだと思った。あの場でも全員殺して最後に腹切って死んだるわい、の心意気でいてほしかったのよね。光秀、温度が一定というか、私は天下とか要らないんですよ、の顔をして中身はドロドロだったのがよかったな。まぁ今作に限って言えば全員狂人なわけですが。今の私達と同じ感覚の人達は全員とっくに死んでるよねぇ。それはそうと光秀さん、色気もたまらん。えっち~~~~~~って何度も思った。最後の、これが欲しいならくれてやる、からの自分でグッサリ、あそこの演技とってもよかった。
 誰もが欲する首。武功の証の首。あれを、最後の最後に秀吉が、首なんかどうだっていいよ、と蹴り飛ばしたところでスカッとした。爽快感があった。あんなに、茂助なんか友達を殺してまで首とってたのに、茂助が憧れた百姓から大将になった秀吉様本人は、首なんかどうでもいいってさ。笑っちゃうよね。なんのために茂助は生きたんだろうね。
 みんなが欲しいお金とか利益とか、世の中の争いのほとんどはいかに自分が人より多く利益を得るかを競っているのだと思うけど、でも最後にああやってどうでもいいよと一蹴されたらたまったもんじゃないよなぁ、と思った。私はあれ見て、もともとなかった競争心がますます薄れたかも。人間ってくだらないな。

 好きだったシーンは、家康暗殺に失敗して、もう光秀なんか殺してやる、宣教師、殺せ、の場面で出た光秀の「ずっとお慕いしておりました」。あれ言われた瞬間の光秀お前もか~~~!!!!と心底嬉しそうに抱き着く信長、よかったなぁ、チャーミングだった。天上天下唯我独尊、周りの男はみ~んな自分のものにしたかったのかなぁ、だとしたらかわいいな。

 気になったのは、観世流「敦盛」。あれを見る信長、全員殺してから腹切ったらスッキリするだろうなぁ、と呟いていたのも相まって気になった。「敦盛」は、自身の子供と同じくらい若い平敦盛を泣く泣く殺した熊谷直実が彼の死を弔う話だったように記憶してるんだけど、これを作中に挟む意図はなんだったのかな。天下をとるためなら一族郎党皆殺しにするし寺社勢力も潰しにかかるけど、心のどこかでは気にしてたとか???信長の弱さが垣間見えるシーンだったような気がする。

 血みどろの世界で、体を売ったりお米を隠したり落ち武者狩りをしたり、そうやって生きる庶民の姿もよかった。みんな等しく数時間後には死ぬかもしれない命。戦国時代ってすごい時代。
 あの時代でお茶を嗜むものだから、おいおい情緒大丈夫かよと思ったのだけど、常に命をかけた緊張状態にあるからこそ、躙り口から丸腰で入るお茶の席が、比較的安らげる場所というか、政治の場所ではあったけど物理的な力で解決を図るような場所ではないことが重要だったのでは、と思った。でも私だったらお茶なんか飲んでる場合じゃないけどね。

 とりとめのない感想になってしまったけど、うん、こんな感じ。私にグロ耐性があったらもう1回行く。

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