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ガートナー、2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドを発表

「Gartner IT Symposium/Xpo 2020」において、業界のトップ・トレンドを明らかに

 米国コネチカット州スタンフォード発、2020年10月19日 — ガートナーは、企業や組織にとって重要なインパクトを持つ「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」の2021年版を発表しました。
 「企業の全部門にわたるオペレーショナル・レジリエンス (回復力) が、かつてないほど重要になっています。
2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドは、次のとおりです。

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Trend 1: Internet of Behaviors
振る舞いのインターネット

 多くのテクノロジが人々の日常に関する「デジタル・ダスト (粒度の小さいデータ)」を捕捉して使用できるようになっており、振る舞いのインターネット (IoB: Internet of Behaviors) と呼ばれる状態が生じています。
 IoBは、顔認識、位置情報の追跡、ビッグ・データといった、個人に焦点を絞ったテクノロジを組み合わせ、結果として生じたデータを、関連する人の振る舞いに結び付けるものです。
 2025年末までには世界の約半数の人々がIoBの対象になるとガードナーは予測しており、今後は個人のデータを収集/分析し、行動を促すことに関して倫理観などの議論が行われると考えられています。


Trend 2: Total experience
トータル・エクスペリエンス

 「トータル・エクスペリエンス (TX: Total Experience)は、マルチエクスペリエンスを、カスタマー・エクスペリエンス、従業員エクスペリエンス、ユーザー・エクスペリエンスと結び付ける戦略です。今後3年間で、TXを提供する組織は競合他社を上回る主要な満足度評価指標を達成するとガートナーは予測しています」
 主としてCOVID-19の影響により、やりとりのモバイル化、仮想化、分散化が進んでいるため、企業にはTX戦略が必要となっています。TXでは、複数のステークホルダーのエクスペリエンスを向上させ、革新的なビジネス成果を達成することを目指します。パンデミックから回復しながら、エクスペリエンス・ディスラプター (エクスペリエンスの創造的破壊者) となり得る新たなテクノロジを活用して差別化を図ろうとする企業に対して、このように重なり合うエクスペリエンスはいくつもの重要なビジネス・モーメント (機会) をもたらします。
 複数のエクスペリエンスが組み合わさった「Total Experience」なサービスを提供することで、企業は差別化を図ることができ、競合他社との競争に打ち勝つためには「Total Experience」の概念が今後は重要とされています。


Trend 3: Privacy-enhancing computation
プライバシー強化コンピュテーション

 世界のデータ保護規制が成熟に向かいつつあるため、あらゆる地域のCIOは、かつてないプライバシーとコンプライアンス違反のリスクに直面しています。プライバシー強化コンピュテーションは、機密性やプライバシーを保持しながら、使用中のデータを保護します。
 2025年までに、大企業の半数は、信頼されていない環境や、マルチパーティ・データ・アナリティクスのユースケースにおけるデータ処理のためにプライバシー強化コンピュテーションを実装するとガートナーはみています。企業は、個人データの移転、データ収益化、不正分析といった機密性の高いデータを扱うユースケースを必要とするデータ処理活動を評価して、プライバシー強化コンピュテーションの候補の特定に着手すべきです。
 2025年までに「Privacy-Enhancing Computation」を大企業の半数が使用し、機密性の高いデータを処理する性能を評価し、より安全なネット環境を整備することが各企業には求められることでしょう。


Trend 4: Distributed cloud
分散クラウド

 分散クラウドとは、パブリック・クラウド・サービスをさまざまな物理的な場所に分散させ、パブリック・クラウド・プロバイダーがサービスのオペレーション、ガバナンス、進化に対する責任を引き続き負うというものです。分散クラウドは、低遅延とデータ・コスト削減のニーズと、データ・レジデンシの要件を抱える組織のシナリオに対して、俊敏な環境を提供します。また、データとビジネス活動が発生する物理的な場所の近くにクラウド・コンピューティング・リソースを配置するという顧客のニーズにも対応します。
 2025年までに、クラウド・サービス・プラットフォームの大部分は、ニーズ発生地点で実行される少なくとも何らかの分散クラウド・サービスを提供するようになるでしょう。
 クラウドコンピューティング市場においては、エッジ機能と分散型クラウドの連携によって、新たなユースケースの創出が見込まれており、2025年までに各クラウドサービスプラットフォームは、分散型クラウドサービスの提供を行えるようになるでしょう。


Trend 5: Anywhere operations
場所を問わないオペレーション

 場所を問わないオペレーションとは、あらゆる場所に存在する顧客をサポートし、従業員がどこでも仕事ができるようにし、分散インフラストラクチャ全体にわたるビジネス・サービスの展開を管理するように設計されたITオペレーティング・モデルを指します。これは、在宅勤務や、顧客との仮想的なやりとりだけにとどまるものではなく、5つの中核領域 (コラボレーションと生産性、セキュア・リモート・アクセス、クラウド/エッジ・インフラストラクチャ、デジタル・エクスペリエンスの定量化、リモート・オペレーションをサポートする自動化) にわたる付加価値の高い独自のエクスペリエンスを提供します。
 2023年末までに、企業の40%は、場所を問わないオペレーションを適用して、仮想世界と物理世界を融合させた、最適化されたカスタマー/従業員エクスペリエンスを提供するようになるでしょう。
 ガートナーは2023年末までに企業の40%が「Anywhere Operations」の運用を行うとしており、安全なリモートワーク環境の整備などサービスの普及が見込まれます。


Trend 6: Cybersecurity mesh
サイバーセキュリティ・メッシュ

 サイバーセキュリティ・メッシュによって、資産や人がどこに存在するかを問わず、誰もがあらゆるデジタル資産にセキュアにアクセスできるようになります。クラウド・デリバリ・モデルを通じてポリシーの意思決定とポリシーの適用が分離され、アイデンティティがセキュリティ境界になります。2025年までに、サイバーセキュリティ・メッシュは、デジタル・アクセス制御リクエストの半分以上をサポートするでしょう。
 「Cybersecurity Meshは、クラウドのアプリケーションや制御されていないデバイスからの分散データへの安全なアクセス/利用を保証するための最も実用的なアプローチになります。」とガードナー社のバーク氏は述べており、2025年までに、約半数以上のデジタルアクセスの制御/要求を「Cybersecurity Mesh」はサポートすると予想されています。


Trend 7: Intelligent composable business
インテリジェント・コンポーザブル・ビジネス

 インテリジェント・コンポーザブル・ビジネスは、有益な情報にアクセスしてそれに俊敏に対応することで、意思決定を抜本的に改革します。例えば、将来的には、データと洞察で構成される豊富なファブリックによって、マシンの意思決定が強化されるでしょう。インテリジェント・コンポーザブル・ビジネスは、再設計されたデジタル・ビジネス・モーメント、新たなビジネスモデル、自律的なオペレーション、新しいプロダクト/サービス/チャネルを実現する道を開きます。
 デジタル化によって新たなビジネスモデルや自立した運用モデルの構築の可能性が高まる中、「Intelligent Composable Business」の活用が見込まれています。


Trend 8: AI engineering
AIエンジニアリング

 ガートナーの調査では、人工知能 (AI) プロジェクトのプロトタイプから本稼働に移行しているのは、全体の53%にすぎません。CIOおよびITリーダーは、AIプロジェクトを拡大させることが困難だと感じています。その理由は、本稼働クラスのAIパイプラインを構築・管理するツールの不足です。AIの本稼働への道は、換言すれば、AIエンジニアリングへの着手です。AIエンジニアリングでは、機械学習やナレッジ・グラフといった、運用化されたさまざまなAI/意思決定モデルのガバナンスとライフサイクル管理に重点が置かれます。
 AIエンジニアリングは、DataOps、ModelOps、DevOpsの3つの核となる柱に基づいています。堅牢なAIエンジニアリング戦略は、AIへの投資から最大限の価値を引き出しながら、AIモデルのパフォーマンス、拡張性、解釈可能性、信頼性を向上させます。
 「AI Engineering」は、運用可能なAIと意思決定モデルにおけるガバナンス/ライフサイクル管理を強化し、AIを活用したシステムのパフォーマンス、スケーラビリティ、解釈可能性、信頼性向上を促進することでしょう。


Trend 9: Hyperautomation
ハイパーオートメーション

 ビジネス主導のハイパーオートメーションとは、企業が規律をもって、できる限り多くの承認されたビジネス・プロセスとITプロセスを迅速に特定・精査し、自動化するアプローチです。ハイパーオートメーションは過去数年にわたって容赦ないペースで勢いを増していますが、パンデミックによって、すべてが「デジタル・ファースト」であることが突然求められるようになり、需要が高まっています。ビジネス部門のステークホルダーからの要求が満たされないまま蓄積された結果、企業の70%以上は、数十件のハイパーオートメーション・イニシアティブを実施するようになりました。
 今後も戦略的技術トレンドとして「Hyperautomation」は大きな注目を集めることが予想され、「デジタルファースト」時代においてその需要はさらに高まることが予想されます。

 戦略的テクノロジのトップ・トレンドは、日本でも多くの企業の注目を集めているガートナーの主要なコンテンツです。今回のトレンドでは、9つの重要なトレンドが列挙されています。
 日本においてもデジタルのトレンドはますます加速しています。今や、多くの企業がこれまでのやり方を見直し、ポストコロナ時代に訪れるであろう新しい世界に向けて、準備を開始しつつあります。こうした企業にとって、2021年の戦略的テクノロジのトップ・トレンドは、重要な道しるべとなるでしょう。
 すべての企業が、かつてない変化の中で将来的にサバイブするためにも、こうした大きなトレンドについての洞察を獲得し、戦略的な観点で検討していく必要があります。その場合は、ビジネスの現場やCIOが率いるIT部門に対する、積極的な人材投資が不可欠となります。


 CIOをはじめとするITリーダーにとって世界で最も重要なコンファレンスである「Gartner IT Symposium/Xpo 2020」では、CIOのリーダーシップに関するさらなる分析や、テクノロジとビジネス戦略に対するアプローチを再構築する方法について紹介します。ITリーダーは、本コンファレンスに参加することにより、ビジネス課題の解決とオペレーションの効率化を目的としたIT活用法についての知見を得られます。

(参考)https://www.gartner.com/smarterwithgartner/gartner-top-strategic-technology-trends-for-2021/

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