#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年7月 第1回 高校生の頃に学んでおきたかったこと テキスト版
renny:今日はテーマは今年の4月、この新年度に入って高校の家庭科で、金融経済教育がカリキュラムの中に加えられることが、それなりに注目されていて、金融庁や実際の運用会社さんも教材として使ってくださいと提供されてたり、若い人に投資資産形成を伝えようとか、っていうような動きが出てきてるんですけれども、吉田さんはこのへんをどんなふうにお感じになってますか?
吉田:まず家庭科の授業っていうのがなんとも言えないところですね。
renny:確かにそうですね。先生は家庭科の先生が教えるのかなとか、そこら辺も含め誰が教えるんだろうっていう興味はあるんですけれども。
吉田:歴史の授業も4月からだいぶ変わって、近現代史は世界史・日本史一緒にやりましょうとか、内容の連携を意識した科目の変更がされてるのに、資産形成は社会科と繋げないのかなって思います。
renny:一応、僕も指導要領とかを見たところ、社会でも政治経済系の科目でも、いわゆる経済の仕組みとかは、カリキュラムの中に含まれてたと思うんですけれども、政治経済系の科目って、自分の高校時代のことを振り返ったら、まずその選択する科目じゃなかった。
吉田:だいたい日本史か世界史しかやらないですよね。
renny:そうですよね。だから高校時代に政治経済っていう科目があったような記憶はあるんですけれども、その選択してる人っていたかな。よっぽど変わった人とか、あるいは理科系の人はいたのかな。でも当時から、そこを学ぼうとは高校時代に思ったりしなかったですもんね。
吉田:ないですね。
renny:ちなみに吉田さんは高校時代って、どんなふうにすごされてたんですか?
吉田:よくよく振り返ると、何か投資に繋がるような、変な繋がり方をするところがあって。プロフィールの時に話せばよかったんですが、中学入ってすぐのときに、生まれつきの病気みたいのが見つかって、結構な大手術をしたんですよ。それで体育の授業もまともにできるようになるのは高校2年ぐらいからで。だからそういうこともあったから、母親は体使わないで、頭だけ使えばお金が稼げるもの、ってことで株式投資を薦めてみたんだよ、という話を最近母親から聞いたんですよ。
renny:そうだったんですね。
吉田:だから中学・高校時代、ほとんど部活もせずに、真面目に勉強しているだけの子供でしたね。
renny:なるほど。そういう意味では僕も非常に近いんですよね。僕は体は動いたんですけど、高校時代は部活はやってなくてですね、ほぼ受験勉強に高校3年間を費やしてたみたいな感じだったんですよね。でも、吉田さんも中学・高校で、政治経済とか特に経済のことを教わるっていうことってなかったんですか?
吉田:なかったですね。ちなみに中学高校一貫の学校に通っていたので、たぶん政治経済って中学のときしか授業なかったかもしれないです。中学の3年間で高校2年ぐらいまでの勉強を終えるみたいな感じの学校で、高校からは大学受験向けで、たぶん日本史か世界史みたいな感じでわかれたように思います。
renny:一緒ですね。僕も中高一貫で、全く同じような感じだったんで、なんとなく覚えてるのは、中学生の頃に何か税に関しての何かレポートか作文を書かされた、中三のときかな、それぐらいですかね。なんとなく政治経済というか、今時で言う公民とか公共に通じるようなので、高校の時に倫理の授業があったのは覚えてるんですけれども、それ以外はもうほとんどなかったですね。だから、今の人たちは家庭科かもしれないですけど、学ぶ機会があるっていうことは、100人の生徒さんがいて、そのうち何人にしっかり刻まれるかっていう問題はあるとは思うんですけど、多少は良くなってるのかなという気がしますよね。
吉田:そうですね。私なんてお金のことを考えずに、大学3年まで来ちゃったっていうようなところがありましたから。
renny:仕事を選ぶとかっていうのでも僕の場合、実家が中小企業の経営というか本当零細企業の経営だったんで、将来の仕事としては普通に安定したサラリーマンになれればいいな。あとたまたま親戚の叔父が上場企業で勤めてたから、当時上場っていうその概念も知らなかったんですが、いわゆるその世の中で一流企業と言われてるようなところに就職できたらいいのかなあ、とかっていうぐらいにしか思ってなかったです。、だから、どこで働いて、どういうふうに生活していくかというような考えが、高校時代って薄っぺらいと言ったらあれですけど、何か知識が少なかったなっていうのは思います。そこら辺って吉田さんはどんな感じでした。
吉田:たしかに何もないですね。高校時代は。
renny:だから、僕も社会人になってようやく、毎朝その日経新聞を通勤の途中読むようになったですど、高校時代は家族が朝日新聞だったんで、特に経済のことにはほとんど無頓着。だからそういうことを考えると、今の高校生はその気になれば、それこそうちの息子はスマホを持ってるんで、情報へのアクセスは格段に違うのかなと。要は、関心を持ってる人はすごい。羽生さんの話の学習の高速道路みたいなことが整備されてて、そこら辺の差っていうのは結構出てくるでしょうし、今回の高校で金融経済教育が始まった場合、すごく吸収する人と吸収しない人で、すごく差が出てくるんじゃないかなあ、というようなことを思ったりするんですよね。
吉田:週末のテレビ番組で「博士ちゃん」とかっていう番組があるじゃないですか。ああいうのって、もしかしたら最近になって、可能になったのかもしれないですね。好きなことを徹底的に調べられるようになったから。
renny:大人がびっくりするような博識な子供が出てくるやつですよね。
吉田:あれの投資家版みたいのが出てくるのかも。
renny:そうですよね。吸収はすごいですからね。それこそ四季報が頭に入ってるとかいう子どもが出てきてもおかしくないですけど。だからそういうふうに考えると、そういうきっかけを持ったりすることが、家庭科であれどんな科目であれ、そういう時期にこれ面白いかも、って思う人が何人か出てきたら、投資のところでも、なんとなく投資って年寄りじみたって言ったら、ちょっと言い方悪いんですけど、お年寄りがやるっていう固定観念が強いと思うんですけども、若い投資家が出てきたら面白いかもしれないですね。
吉田:そうですよね。投資家に限らず、将来金融機関で働く人も結構いるはずなので、触れておいた方がいい話でありますよね。
renny:そういうことを考えたときに、吉田さんは仮にその高校時代にもし何かタイムマシン使って戻れるとしたら、今の経験を踏まえて、これだけは高校時代のご自身に勉強しとくんだったらこれはやっとけ、っていうようなことって何かありますか?
吉田:もうちょっと英語をちゃんとやっておけばよかったって。
renny:それはやっぱり英語をやってれば、もっと世界が広がったっていうようなことなんですかね?
吉田:そうですね。最近は自動翻訳で結構いけるようになったんですけど、自分が20代30代の頃は、英語が読めた方が便利だっただろうな、っていうのはありますね。
renny:そうですね。だからさっきの話に絡めると、世界中の情報がネットで手に入るようになったら、なおのことをやっぱり英語が堪能だと、やっぱり入る情報とかっていうか得られる情報の幅とか奥行きっていうのは、ずいぶん変わる可能性ありますもんね。日本のマスメディアが発信してるのとは、また違ったテーマにリーチできたでしょうしね。
吉田:そうですね。科学雑誌とかを英語で読めたら面白いだろうなって。
renny:使われる言葉がまた一種独特というか、かなり専門的なんで、読みこむのはなかなか大変かな、とは思うんですけど、ああいうのが読めれば、楽しいでしょうね。僕は株式や投資に関してベースになるようなことを高校時代とかにしてれば、大学生活も変わってただろうなと思ったりするんですよね。あとは最近よく見かける意見の一つとして、日本の会社がなかなか新しいことできない理由の一つに、PL、損益計算書の思考が強くて、短期思考に陥っちゃってる、と言われる人がいてなるほどと。いまだに売上や利益がいくらとか、ってすごく興味を持っちゃうんですけど、いざこの会社の総資産の規模がどれぐらいになってるか、というのは、未だに関心が一番目にはこなくてですね。フローではない物の見方として、売上を作るにも、会社の資産がないとそもそも出てこないよね、とかっていうような、そういう仕組みみたいなことは高校生でもわかるかもしれない。投資信託の仕組みを学ぶよりも、もっと経済ってこうなんだよね、って学ぶことが必要じゃないかなと思ったりしてるんですよね。自分の稼いだお金を資産運用してお金を増やしましょう、というのは、具体的なやり方を学びましょう、っていうことではあるとは思うんですけれども。それ以前のことを教わる、学ぶようなことがないと、そのやり方だけを教わっても仕方ないのかな、って思ってるんですよね。
吉田:なるほど。企業のお金がどうやって回ってるか、みたいなことをまず知っておかないと、中身がないっていうことになっちゃうのかな。
renny:もう一つ言うと、最近うちの奥さんが投資に興味を持ち出してですね。いきなりこの商品はいいですよとか、フィーとかコストを見ましょうとか、アセットアロケーションを考えましょうとかっていうのは、枝葉の部分だと思ってて。本当に何から説明するのがいいのかな、っていうのがなかなかいい答えが見つからなくて。どうしよう?と聞かれたときに、難しいことから説明したら、もうそこで関心を失ってしまうかもしれないなと思ったりもして。
吉田:でも、お金が増える減るってところから入ってしまうもの思うんでね。そこから入ってみて、自分で学びたいって思えるかどうかが、すべてなんじゃないかな。
renny:そこで月次レポートの方に、話を絡ませていただくと、やっぱり投資信託を買った人は、月次レポートを見た場合、初めての人は増えたか減ったかっていうようなところに目がいくと思うんですよね。今月はプラスだったのかマイナスだったのか、でもそれ以外の何か違うような関心を向けるようなことが書いてあると、そこから一歩を踏み出せるような媒体になりうるんじゃないかなあと思うんです。でも、なかなかそういうことを意識するっていうのは難しいと思うんですよ。それこそ高校生の人でも分かるように、月次レポートを書いたりすると、若い受益者、若い投資家を増やすことになるんじゃないかな、と思ったりするんですよね。
吉田:たしかに私達の世代も中学高校で何も教わってないので、高校生向けに書けば全ての世代に伝わるんじゃないかと。
renny:今まさにおっしゃったのはその通りで、僕らも何かわかったようでわかってない人もいっぱいいるし、改めてその目線に立って発信することで、もう少し裾野が広がるっていう要素はあるんじゃないかなあと思うんですね。だからそういう意味では、増えた減ったとか、ファンドの評価がどうか、っていうのじゃなくて、何に投資しているのか、というようなところに目を向けられるような仕掛けっていうのがあるといいですよね。
吉田:そこをきっかけに、自分の世界が広がると楽しいですよね。
renny:そうですね。でもこないだ吉田さんにいただいたブログの記事で、日本人の好奇心がいまいちだと。要はスイスの65歳と日本の20歳ぐらいの人の知的好奇心のレベルがほぼ同じじゃないか、みたいな考察が書いてあったんですけど、好奇心を刺激するのは、なかなか難しいところもあると思うんですよ。うちの子供を見てると、他でもテレビとか見てても最近よく感じるんですけど、なんかその最近の若い人は、いわゆる物欲みたいなものがあまりない。もちろんその個人差あると思うのですが、僕らの頃って小遣い貯めてこれ買うんだ。みたいなことはまあまあ、あったんですけど、うちの子は「誕生日に何欲しい?」と聞いても、「いや特にない」とかって言われたり、「クリスマスプレゼントは?」って聞いても、「特にない」とかっていうような感じなんで。最近の若い人はスマホだったら大体何でもできるというか、動画をYouTube見ればタダ、音楽だってタダで聞こうと思ったら聞けるし、漫画も一部はタダで読めたりもするんでしょうから、そうそういうのもあって欲はないのかなあと思うんですけどね。でも物欲の強さと好奇心の強さが相関するのかわかんないですけど。
吉田:でも私は昔からあんまり物欲はなかったように思います。好奇心モリモリですけど。
renny:そうですか。うちの子供は高校生なので、これから進路のことをサポートしてあげなきゃいけないんですけど、なかなかこの子は何がしたいんだろうとかっていうのが見えてこないんでちょっと悩んでたりするんですね。親がいろいろ言っても仕方ないのかな、というかて自分で決めたり選んだという自覚があると、その先進む方向に納得感というか、うまくいかなくても、納得できると思うんですけど。なんか親がリードしすぎると、自分で選んだっていう感覚がないからなんか力入らないのもあると思うんで、なんか難しいなと思ってるんですよね。
吉田:その点うちの母親はすごかったなと思いますね。うまーく餌をまいた感じで。
renny:さっきの知的好奇心じゃないですけれども、何に反応するのかっていうような実験と言ったらいいのかわかんないすけども、そういう試みをしないと、何かにすごく関心を示すかもしれないっていうのもありますからね。
吉田:何に関心示すか分からないので、いろんなものをっていうのは、高校の授業が結構そういう感じでした。たとえば生物の授業でも、教科書には全然載ってないのに、遺伝子関係について結構時間かけてやったりとか。将来この分野で研究者になる子供が出るかもしれないからと、最先端の内容をポツポツに入れていたところがあって。当たるかどうかわかんないけど、いっぱい餌をまいておこうという方針だったんだなっていうのは思い出しますね。
renny:なるほどね。なんか僕のお悩み相談みたいになっちゃったんですけれども、だからあれですね、そういう機会というか餌という言い方がいいのかどうかわかんないですけれども、投資とか会社を知るっていうのは、その餌になり得る要素ってすごくあると思うんで、お金を増やすとか、資産形成とかっていうよりは、その社会を知るというか、仕組みに興味を持つとかっていうようなところで、この金融経済教育が高校で展開するって目線もあっていいのかなあと思いますね。
吉田:そうですね。どういう会社が世の中にあるのか、数多く事例を知った方が、将来の選択肢も増えるんじゃないか、っていうのありますからね。
renny:そうですね。そういうようなところで、投資信託の月次レポートも貢献できるんじゃないかなと思うんで。もし聞いてくださってる投信会社の方がいらしたら、そういう意識を持っていただけたらいいなと思います。
大人になってから、中学・高校時代の教材を振り返ると、その重要さを痛感させられることが、しばしば。世界を読み解くための方法の基礎が、中学・高校の授業にあるのではないか?とさえ私は考えています。
歴史や科学の補助教材の図録は、内容が凝縮されていて、値段も安いので、ぜひとも本棚に並べて、ちょくちょく開きたいもの。また40歳を間近にようやく気が付いたのは、現代文には今を生きるための知の方法が凝縮されているということ。でも経済活動を理解するための内容は、他の科目に比べるとだいぶ手薄な印象が気になるかな。
ただ今回の話を終えて、学校教育で一番大切なのは、やっぱり「知的好奇心」をどう刺激するかなんだろうな、と感じたのでした。
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