見出し画像

#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年10月 第1回 新しい?投資信託の「わけかた」前編 テキスト版


renny:月次レポート研究所のポッドキャスト、10月のテーマは、この数年、もしかしたらもっと前からモヤモヤとしてたことが、最近、晴れたことをお話させていただきます。簡単に言うと、投資信託をどういうふうに分類するか。投資信託に限らず、投資の仕方そのものにも当てはまるかもしれませんが、たとえば実際に商品を作っている人、も含めて、多くの人に投資信託を二つに分けてください、とお題を出したら、多くの人は「パッシブ・ファンド(インデックス・ファンド)が一つと、もう一つはアクティブ・ファンド」という分け方をされると思います。吉田さんもそういう分け方に違和感ないですよね?

吉田:そうですね。それが一般的ですよね。どんな本にもそう書いてありますし。

renny:二つに重なっている部分がなく、綺麗に分けるやり方としては、非常に長く、そして多くの人に支持されている分け方だと思います。僕のモヤモヤの正体は、何かそのインデックス・ファンドとアクティブ・ファンドの二つに分けるのはいいのですが、何かちょっとこの分け方以外にないのかな?とずっと思っていたのですが、吉田さんはそんなこと思われたことってありましたか?

吉田:自分の中では勝手に分けちゃっていたりします。最終的にはrennyさんがnoteに書かれていた分け方(企業価値を探求するファンドとそれ以外)と同じところに行き着くと思いますが「頭を使っている投資家と頭を使ってない投資家」。頭を使わないで証券市場で稼げるほど甘くないだろう、っていうような感覚ですね。

renny:なるほど。考えるか、考えないか、という分け方ですね。インデックスかアクティブか、というのは、たぶん投資を始めてすぐの頃に、バンガード創業者のボーグルさんが書かれた「インデックス・ファンドの時代」を読んで、インデックス・ファンドっていうものがあって、その対極というか、もう一つのカテゴリーとしてアクティブ・ファンドがあると意識するようになりました。でもアクティブ・ファンドの中身をいろいろ見てみると、たとえば投資先が数百社、インデックス・ファンド並みに分散されているファンドもあれば、10社、20社しか投資先がないというような厳選型みたいなファンドもあって、この二つが同じアクティブ・ファンドにくくられるのって、なんか違和感あるなと。なんかインデックスとアクティブっていうあり方が、本当にいいのかな?と思ってたんです。

吉田:統計の取り方もうまくいくわけがなくて。アクティブ・ファンドはインデックス・ファンドに勝てないとよく言われるけど、アクティブ・ファンドには販売手数料を稼ぐためだけに3年ぐらいでなくなるようなのが混ざっていて。そんなファンドをごっちゃにしてリターンを算出したら、インデックスに負けるに決まってる。今のインデックスとアクティブの分け方で、研究をするのも間違ってるんですよ。

renny:そうですよね。成り立ちがアクティブ・ファンドの中にもいろいろあって、それを一緒に合算してパフォーマンスを比較しても、勝ちづらくなっちゃうのはあるんだと思います。ただ一方で、アクティブ・ファンドでよく言われるのはフィー、コストが非常に高いから良い成績が出ない、とまことしやかにというか、それこそお役所の資料にまで出ていたりします。 僕自身で調べてみると、もちろん取引を重ねて、しかも持っているだけでかかるフィーが高いのであれば、当然パフォーマンスにマイナスに働くところはあるとは思います。でも、そのフィーが安いから成績が良いか、って言ったら、実は全然そういうわけでもなくて。だから刷り込みみたいなのが、すごく強いような気がして、実際に調べてみたら、特に日本の株式のファンドの場合はフィーとパフォーマンスに相関はほぼない、と僕は受け止めています。何をそこまでみなさん、フィーだ、フィーだとおっしゃるのかな?なんていうふうなことを思ってたりしますが、フィーについては、吉田さんはどんなことを思われてますか。

吉田:出したお金に見合った仕事をしてくれているのがちゃんと分かれば。たとえば月次レポートにしっかり書いて、開示してくれるとか、そういう形で仕事してくれてることが分かれば、別にいいとは思うんですよね。

renny:そうですよね。インデックス・ファンドとアクティブ・ファンドっていうふうなことを分けたときに、インデックスは株価指数をベンチマークに連動するファンドをすることを目指すファンド。アクティブ・ファンドの方はそれを上回るように運用されるようなファンドと整理されることが多いですが、上回ることを必ずしも目指さなくてもいいんじゃないかと思うんです。要はベンチマークを上回る仕事ってなんなの?と。きちんとその整理されてないままに、とにかく結果として勝っていればこのファンドはすごいね、というのはすごくモヤモヤします。どういうプロセスを経て成績が出たのかよくわかってなかったら、ただの運なんじゃないかなと思ったりもするんですよね。

吉田:そうですね。説明がないのに儲かってる、みたいなのはちょっと気持ちが悪いので、そのうちマイナスになるんだろうなと思っちゃうし。納得して持ち続けるっていうのは難しくなるでしょうね。

renny:ベンチマークに勝つか勝たないかは別にして、どういうお仕事に対して対価を支払うのかと考えたときに、さっき吉田さんが「考えるか考えてないか」というふうに非常にわかりやすくおっしゃったんですが、一つの切り口として「企業とか投資先をちゃんと調べているかどうか、それを基にして投資判断をしているかどうか」、「何に対してフィーを払ってるのか、どういう仕事を期待してるのか」っていうことに対しての、一つの判断基準になるとは思います。ファンドの話に進む前に、吉田さんは昔、ブログで企業価値評価について、いろいろお書きになっていましたが、企業価値について吉田さんは今、どんなふうに捉えられていますか。

吉田:まず計算して出せるものではないなっていうのがありますね。

renny:でも世の中的には、例えばその教科書的には企業価値は、その事業体が将来生み出すキャッシュフローの現在価値に割り戻したものだ、みたいなことはファイナンスの教科書には普通に書いてあると思いますが。

吉田:そのやり方だとたぶん財務諸表に載ってる数字が基になると思います。最近は非財務情報と表現することが多いですが、BS・PLには載っていない情報が、たとえば特許やブランドが企業価値に含まれて時価総額や株価を形成している時代なので、計算して出せるもんじゃないだろうな、っていうのはあるんですよね。だから、この会社の企業価値は何億だから、適正株価がこれぐらいです、みたいなのは難しいんじゃないかなって思います。

※補足・・・このあたりの研究は、Baruch Lev“The End of Accounting and the Path Forward for Investors and Managers” (日本語版は「会計の再生」)が参考になります。英文ですがここの記事に掲載されている図が一番分かりやすいです。

renny:企業価値評価は100人が測ったら100通りの答えが出るようなものじゃないですか。ただ一方で、投資するかしないかと判断をするのには、やっぱり企業価値評価を物差しに判断されている投資家も多いはずですし、そういう投資家が実際にどのぐらい市場の中にいるか、割合自体ははっきりしないですよね。感覚的に上がりそうだから買います、下がりそうだから売ります、という投資判断をしている投資家もたくさんいる中で、その企業価値を調べて、要は難しい作業を経て、答えを出そうとした上で投資判断をするとかっていうのが投資家の本来あるべき様の姿なんじゃないかなと思います。だから企業価値を探って極めようとしているようなファンドや投資家にお金を預けてみたいなと。ベンチマークに上回るかどうかはやってみないと分からないところがあると思うんですよね。特に短期では。ただ長期的には経験を積み重ねていくと、成功例は増えてくるんじゃないかなと思います。吉田さんはその投資信託に頼らずに、ご自身でそういう投資をされていると思いますが、やっぱり経験を積み重ねることによって、なんとなくこの会社はこれぐらいの価値があるんだろうな、っていうような精度は経験で上がるとお感じになってますか?

吉田:経験である程度は上がるかな。でもどうしても運の要素が何割か残ってしまうので、運の要素をできる限り小さくしていく作業っていうのが、企業価値を追いかけること、っていうイメージですかね。

renny:うん。ちょっと最初の話に戻りますが、二つに分ける方法としてはインデックス・アクティブ以外に、「企業価値を探求しているファンドと探求していないファンド」というふうに行動のところで分けることができるんじゃないかなと。吉田さんが冒頭におっしゃった通り、それは「考えてるか、考えてないか」とすごくシンプルに言い換えてしまえるようなところもあると思いますが、実際インデックス・ファンドの場合は企業価値を探求しない。それは吉田さんの表示を借りれば考えてない。でも世の中のアクティブ・ファンドと呼ばれるものとか、アクティブに投資をされてる投資家にも、企業価値を探求していない層は間違いなくいると思うんですよね。だから、そういう意味で、企業価値評価を切り口に、答えのない難しい作業を続けて、投資判断をしているかどうかでファンドに分けてしまえば、クリアになるというか、どうしてこのファンドとこのファンドが同じカテゴリーになってしまうのか、という疑問がなくなるのかなって思ったんですよね。

吉田:そうですね。企業価値を探求している人たちにとっては、インデックス・ファンドが有利だと思ってくれる投資家が増えれば増えるほど、やりやすいかもしれないな、と思ったりもします。

renny:そうですね。インデックス投資家は、それこそベンチマークの中に含まれてさえいれば、どんな会社でもう買ってくれるわけですよね。だから歪みというか市場が値づけを間違うっていうようなことはあり得るのかな。ただどうなんでしょう、インデックス・ファンドとかがどんどん増えていくと、ほとんどの会社が割高になっちゃうんじゃないかなと思ったりするんですよね。だからそういう意味でその企業価値を探求する投資家はロング・ショートしないとリターンをあげられないようなこともあり得るのかなと思ったりもするんですけど。

吉田:詳しく証明できる話ではないですが、ここ何年かの実感として、7,8年前ぐらいからかな。株価が全体的に下がるときは、企業価値も何も見ないでとにかくすべてが下がってくるけど、そこから戻るときは、ちゃんとした会社の株価の方が早く戻ってくるっていうような印象があって、個人的にはすごく投資がしやすいんです。暴落時に買うのが大好きな人間なので。私が経験を積んだからうまくなったとかいう話じゃなくて、トランプ大統領が出てきたあたりからかな、もしかしたら市場全体のインデックス運用の割合が増えすぎちゃって、歪みやすくなってるのかな?という印象があるんですよ。

renny:確かにどうなんですかね。僕も証明というかデータをとって見てるわけでもないんですが、もちろんコロナとかその後もそうなんですが、おっしゃる通り、トランプさんが出てきたころぐらいから、1日で動く幅がなんかすごく激しくなったような感じはありますよね。

吉田:一方向にバーッと動くことが増えたような。

renny:そうですよね。本当に今日とかでも日経平均が600円とか700円ぐらい下がってたりするんですよね。もちろん日経平均自体が昔よりだいぶ上がってるから、その値幅だけで判断するのは違いますが、なんかよく動くなっていうふうな感じは、日経平均だけじゃなくて、アメリカのダウ平均も動きが激しいように思います。パッシブ運用というかインデックス・ファンドが増えたからそうなってるのか、投機的なお金が増えてるのか、何が理由なのかよく分からないですが、動きがそれだけ激しいと、吉田さんのように、暴落したら買いますよとかって、企業価値を探求している投資家であればそういう行動が取れると思うんですよね。そういうことを考えると、今の1日に結構な値幅で動く市場っていうのは、そういう投資家にとって有利に作用するっていうようなこともあり得るんじゃないかと思いますが、それは身を持って有利になってるとお感じになってます?

吉田:そうですね。なんか簡単になってきて、これでいいのかなって若干不安になってる状況です。

renny:そうなんですね。少し長い時間軸で見たらわかんないですけれども、最近は案外ボックス的な相場というか、大きく下がるけどもそのまま戻すみたいななんかすごくレンジが大きいな、と感じていて、下がったからそろそろ買い場が来るのかなと思ってたら、すぐにちょっと戻したりして、タイミングとれないなと思ってます。でも吉田さんはタイミング良く行けてる感じなのですか?

吉田:なぜか、だいたい恐怖指数(VIX指数)とセットで見ているだけで拾えてしまうという、不思議な状況が続いてるんですよ。あとこれから起こるかもしれないこととして、インフレがこのまま続いていった場合、高インフレ時代だった1970~80年の頃は、たしかS&P500はほとんど上昇しないんですよね。でもバークシャー・ハサウェイ、バフェットさんの成績って、その頃のパフォーマンスが一番いいんですよ。(だから今後、インフレで株式市場全体が横ばいになったときに、アクティブ投資が復活することもあるかもと思ってます。

※補足:バフェットvs S&P500の比較については“Warren Buffett's Letters to Berkshire Shareholders”の1ページ目に毎年掲載されています。

renny:なるほど。ここで前半を終わりにして、後半は企業価値を探求してるいかどうかで、投資信託に当てはめたお話を続けていきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?