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投資信託の情報開示が生み出す好循環

月次レポート研究所 Advent Calendar 2023」向けの記事です。



アクティブファンドはなぜインデックスに負けるのか?

世間ではアクティブ投資がインデックス投資に勝てないと信じられている。でも長年、個別株投資を楽しむ私にはあまりピンと来ない。おそらく投資信託業界に限った話だと思われる。

そもそもなぜアクティブファンドがインデックスファンドに劣るのか? 次のような理由が考えられる。

  • 多くのファンドは新規設定時や相場上昇時にだけファンドへ資金が流入し、 相場全体が下落した時は資金が流出する。

  • 運用資産における株式の割合を高く設定していることが多いため、株価が高い時に投資し、株価が安いときには売却することになる。

よって、相場に一喜一憂する資金の動きに振り回され、そもそも投資リターンを追求するための土台が壊れている。結果としてアクティブファンドのほとんどが、その時々の旬のテーマで新規設定され、数年たったら消えていくゴミファンドばかりになってしまう。もちろん投信の回転売買で稼ぎたい販売会社に運用会社が逆らえない、というこの業界の構造的な問題もあるのだが。

アクティブファンドにとって情報開示が重要なわけ

運用会社がアクティブファンドの運用成績を向上させたいと考えるなら、ファンドマネージャーの力量以前に、まずは相場全体の動きに左右されない、資金流入の仕組みを作ることを重視すべきだ。

つまり他の業界でも取り組みが進んでいる、売ったら終わりの売り切り型ではなく、顧客との信頼関係を築き、継続的に収益が得られるビジネス(サブスクリプション等)に切り替えるということだ。

ではどのようにして継続的に個人投資家との信頼関係を築いていくか?

先の見えない投資リターンのみをアピールしていては、運用成績が悪化した際に大きな資金流入を招くことになるだろう。やはり鍵となるのは、毎月の報告書や運用報告会など、継続かつ丁寧な情報提供だ。投資哲学や投資の意思決定プロセス、投資先企業の選定理由などを継続的に開示すること。こうした情報開示を通じて、積立投資を選ぶ顧客比率を高める努力をする。また顧客である個人投資家も、運用会社の情報発信を通じて株式投資に対する見識が深まり、相場全体が急落する局面で、投げ売るする人よりも、追加投資をする人の方が多くなるかもしれない。

ここまで到達してはじめて、アクティブファンドがインデックスと戦える土台が整うのだ。そしてこの土台が整っていないファンドが、個人投資家の資産形成に資することはめったにないだろう。

個人投資家はアクティブファンドに何を求めるべきか?

以上のような話のまとめとして、個人投資家がアクティブファンドを選ぶ際のポイントは、

  1. 販売会社の主導が疑われる純資産総額の急増が見られないこと。

  2. 純資産総額が長期にわたって、なだらかに上昇を続けていること。(積立投資の顧客比率が開示されていていればなお良い。)

  3. 運用理念や投資哲学に共感・納得できること。

  4. 投資の意思決定プロセスが明確に示されていること。

  5. 個々の投資先企業の投資理由が明示され、運用理念や投資哲学に沿ったものになっていること。

  6. 運用に携わる人たちの顔が見えること。

このような条件を満たすファンドに投資したとしても、思うような投資リターンが得られないことのほうが多いかもしれない。それでもアクティブファンドの情報開示を通じて、世の中の理解を深めることにつながれば、様々な恩恵が得られるはずだ。思いがけない転職先が見つかったり、ビジネスチャンスの発見のきっかけになることもあるだろう。

いろいろな場面で紹介済みの話の繰り返しになるが、私の結婚のきっかけは鎌倉投信。また個別株投資のために財務・会計をまなんでいたおかげで、就職氷河期での転落から逆転復帰も果たしている。このほかにも投資と向き合うことで得られた金銭以外のリターンは数知れず、ある種の先入観や思い込みを持った投資家の意見とも言えるだろう。

たしかに効率のみを考えれば、インデックス投信の積立のみに徹するのがいいだろう。でもより深く取り組めば、人生に彩りを与えてくれるのが投資の世界だと私は思う。

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