『投資家の日常は、いとをかし。』 #8 2024年4月 後編 テキスト版
こちらのポッドキャストのテキスト版です。前編は↓
日経STOCKリーグ
renny:後編では、まず日経STOCKリーグについて。これは株式投資というか株式投資の分析というか、上場会社中心にそれでポートフォリオを作るまでのプロセス、どういうふうな考え方でスクリーニングして、どういうテーマ、問題意識を持って選定したかというようなことをレポートにしてまとめて、中身を競うコンテストです。2023年度の審査結果が3月に発表されまして、第24回ということでかなり長くやってるコンテストですね。中学生、高校生、大学生それぞれの部門があって、2023年度は中学が276、高校が688、大学が484、専門学校14、トータル1460のレポートが応募されています。吉田さん、日経STOCKリーグの存在っていつ頃からご存知なんですか?
吉田:2010年頃から読んでる気がします。(※補足:正確には2009年でした。この頃に老舗企業の探求をしていた頃があって、たまたま2003年の入賞レポート、早稲田大学3年「温故知新ポートフォリオ~組み込め日本の伝統と革新」に出会って、興味深く読ませてもらって以来の追っかけ)
renny:そうなんですね。僕はこの1,5年ぐらいかなと思います。証券会社が模擬トレードみたいなので、株式投資をやっているのは見たことあったような気がしますが、レポートをしっかり書いて、その中身の質を競うものがあるのは、全然知らなかったです。2023年で24回目だから、2000年ぐらいからなので、僕も吉田さんも学生時代にはこういう機会はなかったですね。僕は学部的にやんなかったなとは思うんですけど、今回最優秀賞を取られたのが三重県立四日市高等学校の2年生。「Mie×セミコ~半導体革命起こせ~」というタイトルのレポート。1462のレポートから選ばれた最優秀賞ということで、吉田さんはこの最優秀賞のレポートってお読みになりました。
吉田:読みました。あと表彰式の動画を見たら女子学生2人が話してました。
renny:女子学生が2人入ってたんですね。STOCKリーグのウェブサイトに行かれると、誰でもレポートを読めるんですけど、リーダー名もメンバーも名字だけなので、メンバーの性別はわかんないんだな。三重県が誇る半導体産業ってことで、半導体と聞いて三重ってイメージありましたか?
吉田:あんまりなかったですね
renny:今は半導体というと熊本というイメージですよね。このレポートは三重県との繋がりって観点から調べたレポートで、実際に企業を訪問してインタビューもされてますね。担当の先生の指導もあるんでしょうが、高校生でこういうところにインタビューに行くっていうのは、なかなかすごいですよね。
吉田:すごいですよね。自分が高校生のときは絶対的ムリな気がする。
renny:そうですよね。すごくしっかりレポートを書かれてて、どちらかというと中学生、高校生の人たちのレポートの多くはテーマや業界が絞られてるようなところはありましたが、これだけしっかりと調べられるのはすごいなというふうに思いました。吉田さん、ストックリーグのレポートをご覧になってお感じになったことってありましたか?
吉田:個人的には面白いなと思ったレポートが三つありました。まずは立教大学の「GOOD BLACK COMPANY」。今の時代って、労働時間の長さだけでブラック企業と認識される世の中なので、若い人たちがハードワークだけど、生き生きと仕事をしている会社を選ぶ指標みたいな、難しい計算式が書いてあって、私にはよくわかんなかったんですけど、そういうのを見出そうとして分析してるっていうのがいいなと。なんかこのまま労働時間どんどん短くしていっちゃったら、日本は人口が減っちゃうし、どうなんだろう?みたいなところがあるので、若い人がこういうふうな着眼点で分析してくれるっていうのは、未来が感じられましたね。
renny:そうですね。前編でお話しタイパとは逆かもしれないですよね。立教大学からもう一つ入賞しているグループがあるんですよね。タイトルが「OPTIMIZE SOCIAL&ECONOMIC BENEFITS」。指導されてる先生が同じ方なんですよ。石田惣平先生。今年から一橋大学に移籍されたみたいです。吉田さんが他に2つ興味をお持ちになったものはなんですか?
吉田:神戸市立本多聞中学校の「オタクは世界を救う!!」。独特で読み物としても面白かったです。
renny:すごく面白く読んだんですけど、投資先を選ぶところのポートフォリオ見ると、ちょっとオタク感が消えていてそこが勿体なかったかな。
吉田:この分野に上場企業には少ないのかなっていう気はしましたね。
renny:そういう面はあるかもしれないですよね。審査委員の講評にも「推し活に対する熱意と文章力で読ませる力がある」と評されていて、たしかになかなか説得力あるというか、すごく面白かったですね。
吉田:そうですね。推し活に関する本とかも結構出てるんですけど、そういうのよりも面白かった印象があるんで、これは本当に面白かったです。
renny:おもしろかった三つ目のレポートはどちらですか?
吉田:東京大学の「PBRユニコーン」です。この人たち個人投資家として今後伸びしろありそうだなって雰囲気がありました。他の入賞レポートと違って企業訪問をせず、個人でもできる数字を集めて分析しているところが。
renny:なるほどね。僕もさっきもお話しました通り、大学の方々のレポートの方がテーマが広めというか、ポートフォリオを作る際にいろんなセクターの会社が入れられるテーマが多いのかなって印象がありました。その中で面白いなと思ったのは、大阪公立大学「新しい株式市場のリーダーズ~ビジョンで掴む資金と成長~」。公募増資と絡めたレポートです。今は公募増資する会社ってほとんどなくて、自社株買いが重視される中で、公募増資について調べられたのは面白いなぁと。公募増資発表時の株価下落はファイナンス理論では説明できない。企業と投資家間に情報の非対称性があるため、新株発行の重要性が投資家に伝わらずに株価が下落する。よって企業の長期的な見通し、つまりビジョンを投資家に説得することで、情報の非対称性が緩和して、株価下落が抑えられると考えたと書かれています。たしかに本来、公募増資は株式の価値が希薄化するから株価が下落すると思いますが、ファイナンス的には新しく入れたお金がちゃんとその活用されて、同じだけのパフォーマンス、リターンを生むんだったら、株価下落の要因にはならないはずなんですよね。でもなかなか難しいところだとは思いますよね。
吉田:そうですね。なんか増資で株価は下がるもの、って固定観念もありますからね。
renny:でもこのレポートを読んでいて、すごく知りたいなと思ったのは、こういうレポートを書いた人たちは、その後どうなったのかなって。今も投資家として活動されてるとか、そういうことを追いかけてもらいたいなと思ったんですよね
吉田:1人だけ知ってます。12、3年前に日経STOCKリーグで賞を取った人が、その後運用会社に就職して、今は金融庁でたしか金融教育のことをやってるんじゃなかったかな。(※補足:2005年度に最優秀賞を取られた方)
renny:へえー。この人たちがその後どうなったのか、NISAはオルカン1択派になっているのかとか、すごく興味があります。こういう学びがその後どういうふうに生きるのか、すごく知りたいなと思ったんですよね。中学生でやるはしんどいかなと思いましたが、高校生ぐらいならできるだろうし、大学生は基本的には商学部とか経済学部、経営学部の学生になってしまうんでしょうけど、面白いのになというのは思いましたね。
吉田:ここまでのことをやれば、何かしら残るんじゃないですかね。
renny:変な話、投資信託の月次レポートより、はるかに面白かったですよね。
吉田:投資信託もうこういう分析してるのかな。なんか独自に作った難しい計算式が出てきたりするじゃないですか。
renny:ありましたね。筑波大学附属駒場中学校のレポートでも、中学生でここまでやるんだと思ったり。あと審査員の中にどういう人がいるのかなと。
吉田:野村アセット・マネジメントの人かな。
renny:野村証券とか野村グループが協賛してるんですよね。こういうイベントは長く続いてほしいと思いますし、こういうレポートに取り組んで、株式投資を考えてみる機会を得た人が増えるといいですよね。おそらく指導できる先生が逼迫しているんでしょうけど。
吉田:そうでしょうね。
renny:ここから巣立った生徒さんが先生側になったりするといいですよね。ということでですね、ウェブサイトの動線がイマイチで昔の受賞レポートになかなかたどりつけないですが、日経STOCKリーグの受賞は投資のアイディアに繋がるかもしれないということで。
吉田:実はありますよ。実際、私はそういう使い方をしています。
renny:そうなんですね。たしかに着眼点として擦れてないというか、そういう視座もあるのか、っていうようなところありそうですもんね。
吉田:こういう視点でこの会社を見たことなかったな、といういうのが出てくるので、これは結構面白いですね
renny:そういう意味で宝の山かもしれないですね。みなさんも昔のレポートもご覧になってみてはいかがでしょうか。
ポッドキャストのカバー画像を変えたら…
renny:この吉田さんとのポッドキャストは「投資家の日常は、いとをかし」というタイトルつけましたが、僕が他にもやってるシリーズを全部まとめて、全体のタイトルとしては「投資を語らう」にしました。これまではカバーの画像はフリー素材の写真を使ってましたが、プロの方に発注してカバーを変更しました。カバーを変えると聴いてくださる人が、どうも増えるらしいという話を聞いたんですね。やっぱり変えてみると、増えたような感じがするんですよね。あと不思議なことがあって、3月の前編と後編の2つを比べると、どういうわけか後編の方がアクセス数が多いんですよね。自分で言うのも変なんですけど、タワー投資顧問の清原さんの本をご紹介した前編のほうが聞かれそうなのに。最新のエピソードの方が聞かれやすいんですかね。吉田さんはポッドキャストを聞かれることってありますか?
吉田:今まであんまりなかったんですけど、今月風邪を引いて、何にもできなくて、寝ながら聴いていました。
renny:吉田さんは読書に時間を充てられることが多いと思いますが、YouTubeの動画ってご覧になりますか?
吉田:YouTubeは東京大学の講義の動画が面白いので見たりします。高校生向けの講座が結構面白いんです。
renny:どういう分野のものなんですか?:やはり理科系?
吉田:理科系もあるし、哲学とか文科系もありますよ。
renny:それは知りませんでした。高校生だけじゃなくて大人が見ても役に立ちそうな気はしますね。
吉田:あとはレシピ動画とかも見ます。有名な料理人がコロナの頃に一斉にはじめた印象です。これ作ってみたいなって料理があったりするので。
renny:そういえば吉田さんが通っているお店で、献立ができるまでの動画をYouTubeで配信されているのもありましたね。
吉田:「乃木坂しん」さんですね。今月の献立の試食会動画が、食べながら批評もして、ここはこう変えた方がいいんじゃないか?と検討している動画が面白くて見てます。
renny:なるほどな。だからやっぱりその視覚に訴えなきゃいけないものは、ポッドキャストに合わないのかもしれないですね。
吉田:料理は特にそうですね。
renny:目で見ないとわかんないですもんね。風邪を引かれて身動きが取れなかったときはポッドキャストを聞いてみて、何か「をかし」なものはありましたか?
吉田:結局、食べ物の話を聞いていたような。。。
renny:食べ物の話もビジュアルがなくても、想像を膨らませばいける面もあるってことですか。僕は読んだことないですけど、池波正太郎の著書に食べもの関連もありましたね。
吉田:そうですね。ちなみに私が聴いていたのは、平野紗季子さん、食のエッセイストって肩書なのかな、その人のポッドキャストです。
renny:ポッドキャストは聞くところによると、あんまり炎上しないらしくて、そこがいいところらしいです。このポッドキャストも、聴いてくださる方が少しずつ増えてきてるようなので、引き続き、株式投資とその周辺にまつわる「いとをかし」のお話できたらなと思います。
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