見出し画像

#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年8月 第2回 スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド(愛称:対話の力) の月次レポートを読む 後編 テキスト版

上記の前編に続く、後編のテキスト版です。

renny:月次レポート研究所のポッドキャスト2020年8月の第2回です。前回に引き続き「スパークス・日本株式・スチュワードシップ・ファンド」の2022年7月末の月次レポートについてお話しします。このレポートでは投信会社の皆さんが株主総会にどういうふうに関わってらっしゃるかということが結構詳しく説明されていまして、これは6月のポッドキャストで取り上げた株主総会っていうテーマにも、結構関係してくるのでお話します。前回もお話したんですけれども、投信会社さんが株主総会に出席できるかどうかは法的には明確にされていないということで、しかもその決着が見えないままの状況というのは全然知りませんでした。6月のポッドキャストで吉田さんからその株主総会の話をいろいろお聞きしたんですけれども、吉田さんが出られた株主総会で、投信会社の方がいらっしゃるな、ってお感じになった場面はありましたか?

吉田:いえ、全くなくて。プロっぽい質問は一切出なかったですね。例外的にキヤノンの株主総会で、毎年だいたい最初の方に質問する方がいて、その人と御手洗さんとのやりとりが名物みたいなところがあって。財務内容について結構突っ込んだ質問するんですよ。このキャノン以外で決算内容を追求するような質問って出ることは滅多になかったです。

renny:なるほどね。そういう意味では、レポートで書かれている通り、投信会社の皆さんが株主総会に出ようと思っても出席できないっていうような状況になってるのかなあ、というふうに感じます。

吉田:そうですね。

renny:レポートの方では、現状では企業が実質株主としての機関投資家に投信会社もも含まれると思いますが、この機関投資家の出席を認めるか否か、仮に出席を認めても、他の株主と同じように株主総会当日に会場で議決権を行使し、自由に質問発言することを認めるか否かは、各企業の裁量に委ねられていますと。裁量に委ねられているのであれば、実態どうなのかっていうのを、会社側が対応をおおっぴらにしていることはないと思いますし、逆に投信会社さんの方が、どういった扱いを受けてます、ということを発表されてることも、あんまなかったのかなと思うんですけれども。

吉田:ないですね。たぶん運用会社の方も、株主総会前の業績説明会にマスコミとかと一緒に呼んでもらって、やりとりして満足して終わり、みたいな感じだったんじゃないかな。

renny:そうですよね。でもこの中で、企業の中には定款に定めることにより、自己名義で株を保有していない機関投資家が一定の手続きを経れば、名義株主と同じように株主総会に出席し、株主としての権利を行使することができるように対応している企業もあります。J.フロントリテイリングは2017年にそのような定款変更を行った代表的な事例です、というふうに書かれています。定款そのものを変更している会社もあるんですよね。そういう定款の会社がじゃあどこなのか、っていうのを一覧できるようなとこって、おそらくないですよね。

吉田:ないですね。定款って有価証券報告書についてることが多いのかな。

renny:株主総会で定款変更するときはその議案として出てくるんで、定款の一部が出てくると思うんですけれども、会社のウェブサイトで定款をちゃんと載せてる会社ってあるのかな。

吉田:あまりないですね。EDINETで検索できたような。(※補足:収録後にEDINETでの定款の調べ方をまとめました。)

renny:登記簿を見なさいっていうことなのかな。登記簿にも載ってないのか。

吉田:登記簿には載ってないです。

renny:だから定款ってどうなんだ?ってまた新たな疑問が湧いてきました。レポートの続きに戻りますが、今年の6月にこのファンドのチームの皆さんがオンライン含めて6社の株主総会に出席、傍聴しました、ということです。この月次レポートの2ページを見れば、14社にこのファンドは投資していて、3月決算の会社が何社あるのかはわからないんですが、一応6社の株主総会に出席傍聴しましたと。そのうち会場で株主総会の出席を認め、質問や発言にも制限なしと、という会社は6社のうち1社しかなかったと。なかなか、厳しい対応なんですね。2つの会社については投資先について実際どうだったか、っていうようなことで説明されてます。

スパークス・日本株式スチュワードシップ・ファンド 2022年7月の月次レポート P5

renny:まずは、ワコム。こちら株主総会に出席することは認められなかったと。ただこの会社は株主総会ライブ配信している数少ない企業の一社であり、オンライン視聴によって株主総会の様子を知ることができます。また株主総会で必見なのは、同社が例年総会終了後に開催する事業説明会で、事業説明会はチャットを通じて自由に質問コメントすることも可能ですということで、オンラインでライブ配信されてたというような会社だということなんですね。6月のポッドキャストのときにも吉田さんにお話を聞きましたけど、こういう会社が増えてきてるんでしたっけ?

吉田:そうですね。コロナでバタバタしてすぐの2020年3月期の総会はもう全然間に合わなかったけど、2021年からオンライン配信の総会が増えだして、今年の6月の総会からは、自分が持ってる投資先は、ほとんどオンラインで見れたかな、っていう感じです。

renny:ファンドとしては出席できなかったんだけれども、ワコムの事業説明会は非常に好印象と褒めてますね。ワコムの株式株主になって良かった、株主としてワコムや社員の皆さんもっと応援したいという気持ちになった人も多かったのではないでしょうか、ということで、出席できるかどうかは別にして、コンテンツとして非常にいいものを発信されてたようですね。

吉田:そうですね。ここまで紹介してもらえるなら、出席を断った会社も出席させてあげればよかったのにね。

renny:次にMARUWAさん。こちらは1社だけ出席して発言してもいいよという会社。この会社はIRや投資家との対話に必ずしも積極的ではない企業と見られていますが、このような温かい対応してくださり、それは一部分だけを切り取った印象だったと思うとファンドも反省していますと書かれています。そういうことが分かることは大事なのかもしれないですね。投資家とどういう風に向き合ってるか、っていうのが、結構わかるというか、対応がイマイチな会社は、個人投資家の皆さんに対しても、同じような姿勢で臨まれてる可能性もあるんじゃないかなと思ったりはするんですよね。

吉田:たぶんそういう会社って、個人投資家だけじゃなく、顧客や取引先との関係もどうなの?って思っちゃいますからね。

renny:MARUWAの株主総会に関しても、このレポートで、普段のオンライン決算説明会を上回る充実した内容だっただけに、会場にいることに優越感を感じつつも、一方で同社に対する理解を深めることができる有益な話を聞いているのが、たった20名足らずの株主であることは、本当に勿体なく残念に感じましたと書かれています。ちょっと褒めておいた方が、来年以降、出席できるケースが増えるんじゃないか、っていうよ思惑ももしかしたらあるのかもしれないですよね。

吉田:そうですね。

renny:でもワコムさんにしても、MARUWAさんにしても、こうやって株主総会の感想が発信されるということは、想定されてなかったんじゃないかなあとは思うんですけどね。このレポートでは、株主総会こそが企業と株主の対話エンゲージメントの原点だということですっていうことを感じられたと書かれてます。株主総会は機関投資家を閉め出しているような形になってますけど、決算説明会にはどんどん来てください、みたいな感じが実情だと思うんですよね。アナリストとかそういう人たちが来ている決算説明会っていうのは、必ずしもその人が株主ではないと思います。そういう意味では実質株主である以上は、株主総会に混ざって議論する方が意味あるんじゃないかなあと思うんですよね。

吉田:株主総会と決算説明会を一緒にするわけにはいかないでしょうからね。決算説明会はコロナ後、個人投資家も普通に見れるようになったんですよ。決算説明会を会場に人を集めてやらずにオンラインでやるようになったので、そのまま中継動画をホームページ上で流してる会社もあるので。そうなると、機関投資家が株主総会に出られないのは不公平かなと思ったりもしますね。

renny:個人投資家も機関投資家も、より多くの株主が株主総会に行かないともったいないと思うようになるためには、株主総会を形式的なものとして扱うことをやめ、株主と積極的に交流対応するための場として、株主総会の目的や意義を再定義することが必要と考えます、とレポートに書かれていて、ごもっともなんじゃないかなと。

renny:ちょっと話が飛んじゃいますが、この種の企業との対話をはっきり前面に出したファンドはいくつかあってですね、実はこのファンドも昔はこういう対話の内容であるとか、エンゲージメントをされている投資先については、A社とかっていう書き方をしてた時期があるんですよね。それがこの1年ぐらいで方針変わって、具体的な名前を挙げられるようになりました。だからさっきの帝国繊維のときは、株主提案等を結構大々的にやられてたんで社名が出てましたが、それ以外のときは基本的には名前伏せる形で月次レポートを出されていました。この方針転換は僕自身は進歩というか、投資家にとっていいな、っていうようなことをやられてると思うんですけれども。それは、吉田さんにどうですか?ってお聞きしたらそれはそう名前出した方がいいに決まってるじゃんっていう答えになると思うんですけれども。

吉田:なっちゃいますね。変わったきっかけって、ファンドマネージャーが変わったとかそういうタイミングですか?

renny:ちょっとそこまではどうかわからないんですけれども。5W1Hっていうことでいくとですね、こういうレポートを誰が書いたかっていうのも、すごく大事なことなのかなと思ってまして。今回のレポートを読むと、ファンドの運営をされてるご本人というか、実際に株主総会に参加された人が書かれたというふうに感じられるような内容だと思うんで。これはとても大事なことだと思うんですよね。

renny:スパークスさんの別のファンドで「キョウソウの架け橋」なんかは、月次レポートでは、誰が書いたかっていうのは名前も出てこないんですけれども、スパークスさんがやってらっしゃるnoteのページに行くと、ファンドを運営されている清水さんが、ほぼレポートと同じ内容を発信されてて、間違いなくファンドを運営されてる方が発信されてるを気づける感じになってます。スパークスさんを見てると、この1年2年ぐらいで、すごく月次レポートや発信に力を入れられてるな、っていうような印象を持ってます。

renny:どうでしょう。今回取り上げた月次レポートをご覧になって、吉田さんの感想って、全体でどんな感じでしょうか?

吉田:しっかり書かれててすごくいいなって思いました。ただ気になったのは、読みやすさところがちょっと気になって、見出しの付け方を工夫すると、もっといいのになぁ。

renny:なるほど。発信の仕方というか5W1Hで言うとHowみたいなところだと思うんですけれども、ほとんどの運用会社さんの月次レポートはPDFのフォーマットで発信されていて、最近はWebサイトで併用されてるようなところがちょっとずつ出てきました。スパークスさんの場合は、note等で一部編集版というか、そういうようなページを作られてたりするんですけれども、PDFで発信される、このスタンダードみたいなのっていうのはどういうふうに思われます。

吉田:PDFは仕方ないかなって。今回のレポートの原本はどうやらExcelで作ってるようなんですね。そうしたらもうPDFにして発表するしかないんだろうなって。

renny:そうですよね。何か別なフォーマットにしようと思うと、また別の手を加えないといけないということになりますからね。たしかに読みやすさっていう点では、そこまで月次レポートにリソースを投入できるようになるか、そういう会社が出てくるか、っていうのはあるとは思うんですけれども。本当になんか読みやすさとかっていうことを考えると、株式投資に馴染みがないっていうようなぐらいの編集者をつけてわかりやすく、その伝えるためにはどうしようかっていうぐらいに、何か作り込むようなことになったら、もっと月次レポートって面白くなるんじゃないかなとは常々思ってはいるんですけどね。でもそこまでやるとなかなかないのかなと。

吉田:でもそこまでやらなくても、たとえば今回のレポートだと、株主総会の話がメインなので、その手前にちゃんと見出しぐらいつけて書き始めようよ、とか。。。

renny:見出しのところは、ワコムさんの名前が出てくるときに初めて出てくるんですよね。そこまでは結構怒涛のように、ファンドの運用状況からもうそのままずらっ書かれてますもんね。

吉田:あと長文のときは、フォントはこれでいいのかとか。エクセルの標準のゴシック体をそのまま使ってそうな雰囲気があって。結構そこに気を遣っている月次レポートもあって、あれは鎌倉投信かな? たしかあそこのフォントは、学校の教科書で使われてるのと同じ、ユニバーサルデザインの教科書体とかっていうフォントで、子供が集中して長時間読めるように設計されたフォントなんです。フォント選びまでいくと、こだわってるのが伝わりますね。

renny:そうなんですか。でも視点はなかったです。吉田さんとお話する事前の準備で、どうしてこのファンドがいいなと思われてるんですか?と質問を受けましたが、その月次レポートの発信内容がずいぶんと具体的に、しかも今回のような内容は、この「対話の力」というファンドの内容に沿ってるというか、ずれてないところもありますし、そういうようなところがいいなあ、というふうに思ってますね。当然これで完璧かって言ったら、いろいろこうしてほしい、ああしてほしいとかっていうのはあります。たとえばそのデータの部分とか、吉田さんがおっしゃったように、投資先14社だったらもう全部載せちゃえばいいんじゃない、みたいなところとか、いろいろそういうのはありますが、ちょっとずつでも前進していることが感じられるファンドなのかなあと。

renny:そんなところでですね、今回は一つのファンド取り上げて、時間を使いきった感じなんですけれども、こういうふうな感じで1本ずつ取り上げていくようなスタイルで進めてみるのもいいですかね?

吉田:いいと思います。私も興味あります。

renny:そうですか。では次回も別のファンドで、できれば違う投信会社さん運用会社さんのファンドのレポートがいいと思うんで、来月また月次レポートが出揃ったあたりでピックアップして、吉田さんとお話してみたいと思います。


収録の中で読みやすさが気になると話しましたが、事前準備で読んだ際に、書き込みを入れながら読みました。もしこのレポートを作成された方が、この記事を読んでくださっていたら、下記のファイルをダウンロードください。ご参考になりましたら嬉しいです。

また読みやすさについてフォントについて言及しましたが、収録後にこんな記事を書きました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?