#月次レポート研究所 のポッドキャスト 2022年7月 第2回 アクティブファンドを「監視」? テキスト版
文字起こしも慣れてきて、だいぶスピードアップしてきたので、今回から話に登場する資料の該当部分の切り貼りも加えてみました。
renny:今回は金融庁の「資産運用高度化プログレスレポート」を受けて、先日、日経新聞でアクティブファンドを金融庁が監視する、みたいな報道されていました。これは何だ?と思って、そのレポートを見てみると、アクティブファンド、特に大手の運用会社、系列の運用会社の商品が、どうにも具合が悪いというか成績も良くないし、ゾンビのようにたくさん残ってる、ということで問題視されてて、プロダクトガバナンスみたいなことを提起されていました。アクティブファンドをより質の良いものを増やしていくにあたって、金融庁のこのアプローチがいいのかどうかみたいなことをですね、今日はお話してみたいと思っております。吉田さんは金融庁がアクティブファンドを監視・監督すること、どういうふうになるのか分からないですけれども、その辺をどうご覧になってますか?
吉田:状況的には金融庁が出てきちゃっても、しょうがないのかな。今まで運用会社は、同じグループの系列会社の証券会社で売るための投信を作る形が多くて、大体、証券会社の方が立場が強くて、そっちの言いなりの商品を作ってしまうことで、顧客である私たち個人投資家とってはあまり良い商品ではない、という仕組みができあがっちゃって(以下に補足を追加)。自分たちで直す方向に一向にいかないので、金融庁が出てきちゃってもしょうがないかなって思います。
renny:ただ、その商品そのものが良いか悪いかというのはなかなか難しいんですが、商品の問題と販売手法の問題ががあって、個人的には商品そのものっていうのは、販売の仕方がおかしなことでなければ、おかしな商品というのは淘汰されていくんじゃないかなと思ったりしててですね。そういう意味で、商品の中身に対して監督・監視するっていうのは個人的には行き過ぎなんじゃないかなと思ってたりするんですよね。
吉田:そうですね。主に問題があるのは販売の部分なんで、問い詰めるなら、その部分ですよね。
renny:たしかにデータ的にアクティブファンドの多くがその問題を抱えてるというか、もし仮にアクティブファンドの存在意義がベンチマークに対して勝つこととするならば、ほとんどのファンドがこれは駄目だね、っていうふうになるのは致し方ないなあ、とは思ういます。一方で、その結果・数字だけを見て、これ駄目だっていうふうにするのも、ちょっと若干乱暴な気がしてて。というのはTOPIXや日経225のような株価指数に勝つかどうかっていうのは横に置いてですね、何に投資してるかをしっかり見たい投資家にとっては、あんまり関係ないと思います。でも、そういうのをごちゃまぜにして、とにかく数字でぶったぎったような感じが、金融庁のレポートから感じられて、もう少し中身を見てほしいな、というふうなことを感じるんですよね。
吉田:たぶん中身を見ようとしても、情報開示が少なくて、上がった下がった話しか書いてないから、そういう切り口で批判されちゃうのかなっていうのはあります。
renny:だからそういう意味で、僕らのやってる月次レポート研究所でも、おっと唸らせるようなレポートっていうのが、正直なかなか見つからないっていうこともあってですね。良いレポートが増えるように金融庁が指導してもらいたいというわけではないとはないんですが。情報開示に対して何かインセンティブというか動機づけを、それは金融庁がやるのか、業界団体がいいのか、誰が主体になるべきかわからないですが、そういう呼びかける主体として個人投資家もいると思うんですが、やっぱりその情報開示とかそういうようなところが、拙いというか不十分というか限られてる限定的だからず数字に行かざるを得ないってことなんですかね。
吉田:そうですね。もし、金融庁が規制をするなら、案の一つとしては、運用会社の規模に応じて設定できる投資信託の本数これぐらいまで、っていうふうに線引きした方がいいんじゃないかなって。とにかくどんどん新規設定していっちゃって、数がもうべらぼうに増えちゃってるから、月次レポートもちゃんと書けないところがあると思うので、数は減らす規制はしてもいいかな。
renny:そうですよね。だから新しく設定するんだったら、ずっと棚ざらしになってるようなものは、繰上償還するなり併合するなりして、全体の本数がこれぐらい以上にはならないようにして、吉田さんが今おっしゃったように、その分情報発信とか情報開示に、適切なリソースを投じられるようにとか配分できるようにすべきだということですよね。そもそも今回の金融庁のレポートにも、そういうのは書いてたんですかね。何でしたっけ、商品組成時における類似商品の有無等の検証や、顧客に不利益を生じさせている可能性のある小規模ファンドの繰上償還の要否を検討するなどの取り組みが進められている、ってこれ進められてるんですかね。
吉田:わずかに減ってはいるみたいですね。6ページに、2017年は6,152本だったのが、2021年には5,923本に減ってる、っていうことらしいです。あんまり減ってないと思うんだけど。
renny:そうですね。確かに数が多すぎるっていうのは一つ大きな問題ではありますよね。数が多いから何がどれ選んだらいいの?みたいな話になってくるわけですもんね。しかも数が多いのは、元をたどればマザーファンドは同じだけれども、ベビーファンドでぶら下がってるものは違うから、本数が増えるみたいなことも起きてますしね。
吉田:そうですね。ちょっとずつ名前を変えて再販売みたいな。
renny:そうですよね。決算の回数が変わるとまた新しいファンドが増えたりとか、何かそういうような、毎月分配とかが流行ってた頃は、年2回とか年4回とか毎月とかで、3本とかになってたんですもんね。いやあ、やっぱり本数を減らすことに集中するのもありなのかもしんないすよね。そういう意味では、さっきおっしゃった運用会社の規模によってとか、何を基準にするのかはあるんでしょうけれども、ファンドの規模を減らしたら、月次レポートの質ってよくなりますかね。
吉田:本数が減れば多少時間かけられるんじゃないかなぁ。
renny:僕は投資家の方が駄目な物を選ばずに、それが結果として商品が淘汰される、っていうふうになったら理想的だと思うんですけど、なかなかそうはならないなと。一方で商品の中身については、過去そういう監督とか監視とかそういうものではなかったと思うんすけど、金融庁が毎月分配や通貨選択型というようなファンドに対して否定的な姿勢をとったことで、ガーッと減っていった局面というのがあったと思うんですけど、最近いろいろ調べてたら、為替が円安に大きくふれちゃってるというのもあるんですけれども、案外その通貨選択とかのファンドが長期のパフォーマンスで見るとはいい成績残してたりするんで。その商品そのものの中身が理解できてない人が投資していたら、よろしくはないんでしょうけれども、中身をわかってる人であればハッピーだったかもしれないし、そういう意味で商品の中身について金融庁が首を突っ込むっていうのは正直どうなのかなとは思ってるんですよね。
吉田:たしかに運用って何がうまくいくかは分からないですからね。
renny:そうなんですよね。もちろん結果論だと思うんで、円安なったから通貨選択のファンドのパフォーマンスがいい、というようなことになってるとは思うんですが。ただ、いろんなものがあってもいいと思うし、さっきの話に戻ると、その販売の手法の方を監督・監視っていうようなことをやるんだったら、商品の中身に関しては、もちろん野放しはよろしくないけど、少々の自由度っていうのはあってもいいのかなと。ただファンドの数がやたらめったら多いのは大問題だと思うんで、質と量をうまくバランスをとるのが、ここで言われてるようなプロダクトガバナンスじゃないかと思うんですけどね。だから月次レポートとか情報開示で、投資家にとってこの商品はこういうものだ、と理解してもらえるようなことをやっていくことを期待したいなあと思ってますけどね。
吉田:そうですね。自分たちでちゃんと情報を見て比較するみたいな、家電製品とかだと結構わかりやすいですけど、比較しようがない状態っていうのはマズイと思うんで。
renny:だから今、モーニングスターとかで比較すると、基本パフォーマンスですよね。リターンとリスク、シャープレシオとか、そういうようなベースにしてつけた何かレーティングですよね。あとはコストがどれぐらいなのか、というところで、結局どちらかというと結果っていうかパフォーマンスのところに偏っていて。個人的には、例えばその投資先の数がどれぐらいあるのかとか、多分その本当にやろうと思ったら、毎月数字を拾って並べるぐらいだったらできるんじゃないかなと思うんです。あとはどれぐらいファンドの中身が入れ替わってるかとか、いわゆるアクティブシェアとかって言われてる、どれぐらい株価指数のポートフォリオと違うかみたいなものが、パフォーマンス同様多い一覧性あるような形でアクセスできれば、もうちょっと違うような見方もできるのかなあと思ったりするんすよね。
吉田:そうですね。たとえば投資信託を冷蔵庫とかに置き換えると、今は冷蔵庫の消費電力と何L入るのかっていうのだけしか比較できない状態で、冷蔵庫買わなきゃいけないってことになるので、それはいかんですね。
renny:そうですね。何かそういうスペックの一部というか、実際にはどういうふうな庫内の使い勝手とか、その辺って、いわゆる比較サイトでも口コミとかに頼ってたりするところありますよね。
吉田:メーカーのホームページには結構丁寧に書いてあったりしますよ。
renny:そうですね。だから、パフォーマンス以外の部分を見ようと思うと、そもそもそういうデータを取ってないと思うんすね。これも多分、金融庁のデータもQUICKのデータに頼ってるところあると思うんですよね。そういう人たちは毎月の月次レポートや投資先の数が何社あるとか、どれぐらい投資先のトップテンが入れ替わってるとかって、そこまでのデータはおそらく持ってないですよね。
吉田:そうですね。
renny:だからそういうようなことをね、やろうと思うと大変なんで、結局パフォーマンスも行っちゃうんでしょうけどね。ちょっと結論めいたものがあるわけじゃないんですけれども、僕としてはいいファンドが増えてほしいっていうのが一つと、もう一つは、その良いファンドが仮にあったとしたら、しっかりと見つけてもらえて、それを気に入った人が増えて、ちゃんと支持が広がっていくというようなところが、実現すればいいのかなあと思うんで。やっぱり支持している人を増やそうと思うと、情報発信っていうのは不可欠だと思うんで、月次レポートの充実っていうのをもっと図ってもらいたいなと思うんですけれども。吉田さんはその辺いかがでしょうか?
吉田:せっかくお金を出すんだから、何か学べた方がいいと思うので、そういう学びとか発見のきっかけになって欲しいなって思います。やっぱり月次レポートをちゃんと書いてもらわないと、何のためにお金を任してるのか…。そもそも投資信託って、信じて託す投資なんだから、何をどう信じていいのかっていう情報が欲しいところですよね。
renny:そうですね。うん何を信じてというか、何から結果が出てきてるのかっていうのは、別にそれを知らなくてもいいという投資家もいるのかもしれないですけど、運用の源泉に何があるのか伝えようとしてもらいたいもんですよね。
吉田:そうですね。
renny:以上のようなことを金融庁の皆さんにも、数字だけじゃなくて中身をもうちょっと見て、運用会社にアプローチしていただいたらなぁと、そういう対話を持っていただいたらいいなと思っております。
金融庁が投資信託の中身そのものにあれこれ言っているけれど、そっちよりまず販売手法の方が問題では?、という話をしています。投信ビジネスの問題点を簡単に図解すると下記のようになります。
ちなみに少し前までの金融庁のレポートでは、販売手法を厳しく非難していました。
この問題はなくなった訳ではないでしょうが、銀行や証券会社、郵便局の窓口で投資信託を購入する高齢者は時間とともに減っていくから、論点の優先順位が落ちてきたのかもしれないですね。
ちなみに投資信託協会の調査で、年代別の「投資信託の興味・関心・購入のきっかけ」を調べたものがありますが、「金融機関の窓口で勧められて」の選択肢は40代以下になるとガクンと減っています。
投資信託の情報開示については、今回取り上げた金融庁のレポートでも、ESG投信の項目のところで触れられています。
近年、運用会社は上場企業に対してESGにまつわる情報開示を強く要求する傾向にあります。それなのに自分たちはそれを使って、どう投資に活かしたのか開示しないのはおかしいでしょう?という話ですね。
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