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難関試験を目指すと残業が減るというパラドックス仮説 ~公認会計士試験のケース~

前回、上司の評価を得ながら残業を減らす方法 ~働きながら公認会計士試験に合格した僕の時間確保戦略~という記事をUPしました。

社会人は、忙しい。難関資格を突破する上では、残業コントロールが重要。この事実は否定しがたく、試験勉強をする上では残業を削減する努力を継続するべきです。

その一方で、難関試験を目指すことそのものが、残業を減らすという逆説的な効果を持つことを、社会人で公認会計士試験に合格した経験を持つ身として確信しています。

本日は、この「難関試験を目指すと残業が減るというパラドックス仮説」をテーマに、考えられる3つの要因について述べていきたいと思います。

ー要因① 時間管理に対する意識の向上

一つ目の要因は、難関試験を通じて時間管理に対する意識が向上する点です。社会人が働きながら勉強するには、まず時間の確保が不可欠です。勉強時間確保のため、いかに無駄な残業を削るか、否応でもインセンティブが働きます。

何も目標がないと、ついダラダラと仕事をしてしまうのは人間の性です。遊びの目標でもいいですし、家庭貢献の目標でもいいですが、なにかインセンティブがなければ不要な残業が増えてしまうのです。
その意味で、難関試験受験という目標そのものが、残業を減らす強烈なインセンティブとなります。

ー自分の時間をどのように使うかという意識も向上

残業の話からは一瞬逸れますが、プライベートにおける時間についても、限られた自分の時間を何に使っていくか、取捨選択する意識が高まりました。それは、自分の価値観ときちんと向き合うことも意味しました。自分にとって、何が大切で、何が不要かという意味での整理整頓です。

私の場合でいえば、家族との時間や週末の友人との草野球は絶対に守るべきものなので、なんとか時間を確保する方向を模索しました。

一方、付き合いだけの飲み会や、時間つぶしのスマホゲーム、野球観戦にしても好きなチームが4点差以上で負けている試合の観戦等、細かい部分も含めて自分にとって不要であるものは、「捨てるもの」として整理しました。人間関係含め、自分の大切なものを「整理整頓」できたことも試験勉強のおかげですし、一つの収穫です。

このように、難関試験を目指すことを通じて、仕事/プライベート問わず、「time is money」という感覚が研ぎ澄まされるということです。

ー要因② 段取り能力の向上

学生と違い、時間が有限である社会人は、難関試験を合格していくうえで、その段取りが重要になっていきます。

試験日はいつなので、それまでにこの教材を終わらせたい。
そもそもこの教材を自分は勉強すべきか否か(取捨選択)
試験直前に仕事を振られないよう、根回しをしておかなければ。
勉強効率を向上させるための方策はないか(←私の場合はサウナ

限られたリソース(時間や体力)を何に配分するか。
自分にとって、何がコントロール可能で、何が与件(変更不可)なのか。
どのような方策が考えられるか。

これらを見極めながら、1~2年という比較的長期の単位でセルフマネジメントが要求されます。

考えてみれば、これってとてつもない訓練です。もちろん、仕事を通じてこのような能力を磨いていくことは可能ですが、仕事以外でも何か目標をもってセルフマネジメントをすることで、その成長速度を高めることができるということです。

私も、試験勉強を始めて、徐々に段取り能力が向上していったのだと思います。この段取り能力のおかげで、残業が減っただけでなく、仕事のパフォーマンスにもいい影響がありました

ー要因③ 「引く力」という武器

残業が減るもう一つの要因は、様々な部分で「調べる」時間をカットできたことにあります。

仕事中、調べるという行為はかなりの時間を消費するものです。例えば自分が知らない分野だったり、未経験の分野だったりすれば、1から調べることになってしまうので、その分、時間がかかることになります。

しかし、難関資格は得てして広範な分野をカバーするため、学んだ内容が何かしらの形で使えるケースが多々あります。直接的に使えなくても、何かの「とっかかり」になるケースも十分にあります

私の場合は公認会計士試験でしたが、公認会計士試験は会計のみならず、税務、ファイナンス、法律等かなり広範な分野をカバーしています。ですので、そこで学んだ内容が何かしらの形で使えました。

あのテキストに書いてなかったっけ?あの基準書のこの辺に記載があったような・・・。

このような「とっかかり」がたくさんできてくるイメージです。

1から調べるのと、何かとっかかりがあるのとでは、後者のほうが断然早くなります

ー「引く力」=the power of pullの重要性を再確認

元MITメディアラボの初代日本人所長である伊藤穰一氏は、講演の中で、その場その場で必要なときにネットワークからリソースを引っ張る力をthe power of pull(引く力)と呼び、その重要性を説いています。

インターネットの時代では、どれだけ頭に知識を蓄積できるかという時代から、いかにネットワークからリソースを引き出すか、すなわち、the power of pull(引く力)がカギになるとのことです。

テクノロジー分野の権威の言葉を引き合いに出すのは恐れ多いですが、その場その場で知識を引き出していく力も、難関試験がもたらすメリットとなります。

公認会計士試験だけでなく、税理士試験、中小企業診断士、司法試験、世間でいう所謂「難関試験」であれば、それぞれ広範な試験範囲をカバーするため、少なからず似たようなことが言えると思います。

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