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眠れない夜のつぶやき

夜眠るのが苦手になったのはいつからだっただろう。

一番記憶に残っているのは、中学1年生の時、寮の4人部屋で1人寝付けず、かと言って電気を付けたり物音を立てるわけにはいかず、ひっそりと息を殺して悶々としていたこと。
ブラインドの隙間から見える薄暗い敷地内を途方に暮れて眺めていたこと。
しんと静まりかえった廊下と、非常口の緑色の光。
廊下の先に寮母室があって、人懐こい生徒なら寮母さんに泣きつくことも出来ただろうけど、当時引っ込み思案だった私にそんなことはできず、何か胸がつかえたような心地になりながらひっそりとまた布団に入ったものだった。

幼かったあの頃はよく分からなかったけれど、多分寂しさとか不安とか、昼間とは違う夜の雰囲気への興奮とか、色々な感情が混じっていた気がする。

大人になってからは、悲しくて眠れないことの方が増えた。
時にはとても嫌なことがあって、時には特に理由もなく悲しみや怒りが湧いてきて。
日中は目や耳から入ってくる色々な情報で紛らわされていた雑念が、電気を消して布団に入った瞬間にワッと溢れてきて止まらなくなる。今日一日の自己反省会や、ありもしない妄想を膨らませていたたまれなくなる。体も頭も疲れていて、瞼も重く生あくびばかり出るのに、考えることは止まる事を知らない。これに数年間それなりに悩まされた。
夜眠れない人の典型であり、シャッフル睡眠法含め色々試したけれど、これと言って有効打はなかった。


ただ、自分が不眠症だとは思ったことがない。

寝付くのに週何回か数時間かかるだけで、特に日常生活に支障も来していないし、夜中の悶々とした気持ちは朝になればキレイさっぱりなくなっているから。

ただ、漠然と「あー、今日もどうせ眠れないんだろうな」と思いながら布団に入るのは少し憂鬱ではある。


そもそも、人は慣れるもので、眠れなくても「まあそんなものか」と最近では諦めの気持ちで居る。


どんなに眠くても「あ、今日はダメだな」となんとなく気づく。眠れなくても疲れ切っていたり、気持ちが落ち込んでいて何もする気が起きない時は、とりあえず2時間ぐらい布団でゴロゴロして多少体力を回復してから、のそのそと起きて来てリビングで動画でも見る。4時ぐらいには体もさすがにヤバいと思うのか、またのそのそ布団に戻ると割とすぐに寝付ける。大体仕事の前日と当日の夜はそんなもので、3時間眠れればいい方だと思う。

変な話なのだけれど、睡眠時間が少なくてコンディションが悪い時の方が、むしろ仕事の効率がいい気がする。気を遣うとか人の目を気にするとか相手の気持ちを考えるとかそういう無駄なものに割く余裕がない分、判断が早い(もちろんその判断が合っているとは限らない)。


そもそも、眠れないにはそれなりの理由があるのである。

日中自分が持った感情にきちんと向き合っていなかったり、「どうして自分が」みたいな独りよがりで我儘な自分を持て余していたりとか。


だから眠れない夜、ぼんやりと過ごす時間は、自分の中に溜まったいろんなものを解毒するのに必要な「無駄ではない時間」なのかなと思う。


もちろん、眠れない時間は辛い。
でも辛い事が無意味だと思うことほど辛い事はない。
辛い思いをするからには理由や結果が欲しい。


(そういうのは、もっと頭の良い文系の人達に任せようね)


おわり。






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