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小川和紙との出会い

①小川和紙との出会い

天気が良かったので、昼過ぎに思い立ってふらりとドライブに出かけました。特に行先も決めずふらふらしていたところ、道の駅おがわまちが目に入ったので、なんとなく入ってみた。

休日なので、混んでいたけれども、地方ということもありすんなりと駐車できた。昨今道の駅ブームで駐車場にも入りきらないぐらい人がごった返しているイメージがあったので、一安心。

なんでも、小川町は和紙が有名だそうな。なかでも楮だけを使用した「細川紙」は、素朴で温かみのある独特の風合いがあり、使う人の心を引き付ける、とのこと(小川町公式サイトより)。

道の駅あるあるの野菜の直売所の奥に、和紙や和小物の専用ブースが広く設けられていたので、入ってみる。


で、並んだ小川和紙を眺めていたら、これがとても楽しかった。

なんていうか、やっぱり手漉きの和紙の、眺めていると「これ何につかおうかな」というクリエイティブな気持ちにさせる、そんな手作りの温かみを感じた。

もっぱら節約+なるべく物を買わないを心に決めていたのに、気づいたらどの和紙が一番自分の好みに合うかを真剣に何度も何度も手にとって食い入るように眺めてしまっていた(超怪しい)。

真剣に眺めていると、いくつか和紙の工房があって、それぞれなんとなく毛色が違うのが感じられるのがまたいい。

中でも、1番に目を引いたのが、この小川和紙で作られたノートだった。

サンプルのノートを手に取った時、紙の心地よい柔らかさとしなやかさ、それでいてとてもしっかりとした手触りに衝撃を受けた。な、なんだこれは・・!!一瞬で心奪われてしまい、手放せなくなってしまった。ずっと触っていたい・・・。サンプルは芳名帳として使われていた。なるほど、たしかに古い伝統のある旅館の図書室とかに、置いてありそう・・。あと文豪が頬杖をつきながらけだるげに開いてそう・・・。そんな妄想が止まらなくなった。

制作者の欄に「根岸光一」と書いてある。他の作品が工房名なのに、この人だけは個人名なので逆に目立つ。ということは、多分その界隈では有名な方なのかしら。

ポップアップに、「現在出ている商品だけ」と書いてあったので、この型のノートは生産終了してしまったんだろうな、だったらなおさら、今ここで買わなければ絶対後悔する。3000円と、決して安くはないけれど、それを上回る価値が絶対にある。現に、このノートを持っているだけでワクワクが止まらない。

ということで、在庫の中から黒を選び、大切に抱えて店内の他の商品を眺めた。心の中で、もう君はうちの子やで・・・根岸さん、大切にします・・・。と思いながら・・・・。


他購入したのは、小川和紙3枚と小川和紙のコピー用紙。

使いやすいB5サイズ
ピンクと水色が好き

小川和紙は、2枚が尾上紙店さんという工房で作られた雲龍紙というもの。透明感があって好きな感じ。1枚が門倉商店さんの手漉染和紙。ちぎり絵に使われていると聞き、きっとちぎって使う妄想をしたら楽しいだろうなと思い購入。他にも色々な種類の和紙があって正直とても悩んだ。今まで和紙なんて全然詳しくなかったけど、こんなん和紙沼にはまってしまう・・。

コピー用紙は、鷹野製紙所さん。
自分の好きな物をここに印刷したら・・・・いい!とてもいい!
なんだろう、和紙でできたコピー用紙という、アナログとデジタルの融合に感銘を受けた。結婚式の招待状とかメニュー表とか、紙も種類あってへぇ~と思ったものだけれど、こうして自分の好みの紙で色々作れたら最高じゃない?


※ちなみに、素材を購入して色々妄想するのが好きなので、実際には使わず眺めてにやにやすることが多いです。


久々にワクワク体験ができた。
小川町、侮れない・・・!
帰ったら和紙についてたくさん調べる!!!!

②「ツバキ文具店」と患者さん

さて余談。
物に出会うと、それに関連した色々な思い出が想起される、そんな物が素敵な物だと思っている。

今回は小川和紙という素敵な物に出会って、小川糸さんの「ツバキ文具店」とそれにまつわるエピソードをふと思い出した。(どちらも「小川」なのは偶然でしょう)

「ツバキ文具店」は、鎌倉で小さな文具屋を営む主人公が、手紙の代書を受け合う物語なのだけれど、舞い込む風変わりな依頼(友達への絶縁状やら、天国からの手紙やら)に対して、主人公の紙やら文体へのこだわりがすごくて、この手紙に一番合う紙は何か・・・とすごいそれに時間を費やす。

読んでた時は、「いや、紙とか気にする?いや、する人もいるのか・・・」ぐらいにしか思わなかったのだけれど、今回小川和紙に出会って、「いや、紙大事だな!!」に変わった。

で、そのツバキ文具店を勧めてくれたのが、当時担当していた入院中の女の子だったのです。


人と話すのがとても苦手で、いつも静かに本を読んでいました。


当時初期研修医だった私は、しかしその科に入局間近ということもあり、実質彼女が私が初めて主治医として担当する患者さんでした。

彼女と少しでも心を通わせたくて(当時の私のなんと初々しかったことか!!)、+読んでいる本に純粋に興味があって、「何の本を読んでいるの?」と聞いた時、はにかみながら見せてくれたのがこの「ツバキ文具店」でした。

家に帰って読んでみて、私の感性では到底感じ取りきれない繊細な物語がそこにあって、とても彼女らしいと思ったのを覚えている。

後日なんと感想を伝えたか忘れてしまったのだけれど、私の答えに少し嬉しそうにはにかんでくれたように思う。

元気にしているだろうか。

私の力量不足や、彼女を取り巻く環境の困難さもあって、結局通院が途絶えてしまった彼女のことを、私は今でも時折切なさやもどかしさやと共に思い出します。ちょうど桜の咲く季節だったから、一緒に病棟の窓際で桜を見ながら話をしたのが、今ふとよみがえってきた。あれ以上に静かで切ない時間は、きっと他にない。

どうか元気にしていて欲しい。


③和紙と、友人と、夏の鎌倉


和紙と言えば、大学生の頃に友人と鎌倉に行った時のことも思い出す。
鎌倉の小町通りは和紙の有名なお店があるんですよね。

もちろん行った時にはそんなこと全く知らず、多分「江ノ電!紫陽花!鎌倉!」ぐらいのいかにも大学生というフットワークだったと思う。

シーズンの鎌倉なんて、激混みですよ。あと紫陽花の季節とはいえめちゃくちゃ蒸し暑くて死にそうだった記憶しかない。

・・・・と思っていたのに、今回小川和紙を手にとって、いきなり、鎌倉で立ち寄った和紙店の中の光景が蘇ってきたのです。


外の暑い日差しのせいで、逆にちょっと暗く見えた店の中。

山のように和小物や和紙があって、どこから見れば分からなくて正直「暑くて疲れたし、良く分からない・・・」とクラクラしていた私をよそに、友人は食い入るように棚に並んだ和紙や絵ハガキを眺め、自分の心と対話し、どれにするべきか悩んでいた。

その彼女の真剣な横顔が、私の「もう帰りたい・・・」という当時の感情と共にありありと蘇ってきました。

(ちなみに、この時鎌倉に行っていたので、数年後「ツバキ文具店」を読んだ時、舞台が鎌倉で嬉しかったのを覚えている)


④思い出は、ふと思い出すから思い出

話が随分と長くなってしまったのだけれど、今回私が思ったのは、「なんでもないと思っていたことが思い出になってるんだなぁ」ということ。よく言う、「思い出は作ろうとして作るものではない」に近いものがある。人は案外、その時は何とも思っていなかったことを覚えていて、ふと思い出すととてもそれが愛おしく感じるものなのかもしれない。

そんな気付きと感動をくれた小川和紙に感謝。


鎌倉!また行きたいなぁ。がぜん行きたくなってきた。和紙巡りしたい。
また友人を誘ってみようかな。まだ和紙好きかな?いや、彼女なら絶対まだ好きに決まっている。あとでLINEしてみよう。


以上、小川和紙との出会いでした。


追記:他ブログ様を拝見したところ、根岸光一さんは数年前にご逝去されたそうです。
素晴らしい作品を生み出してくださった事に感謝……。


4/8追記
ツバキ文具店を読み直してみたけど、思ってたほど紙の話はしてなかった。
1作目で抱いていたモヤモヤが、2作目のキラキラ共和国で噴出した。小川糸という作家が合わないんだと思う。人との繋がりや日々の大切さをこれでもかと前面に出されると気持ち悪くなってしまう。終始夫や子供の惚気話を読まされてる気分で途中で読むのをやめた。

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