いつかのための無機物PC入門

【この記事は怪文書アドベントカレンダー9日目の記事です】

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後:12/10 生八つ橋の養殖所でバイトした思い出を語ります(フユキさん)

お前誰?

酸素ボンベ
アリ
パンの袋を閉じるアレ

 等のPCをやっていたPLです。P(Pitti1097)といいます。
 上にあるアドベントカレンダーそのものの埋め込みに四苦八苦した挙句、普通に他の人に聞けば早かったのでは? と後になってから気が付くような人です。
 勢いにより生まれたアドベントカレンダーに勢いにより参加しています。前々から書けそうな主題だなと思っていたので。
 形にする場をいただいたことに、この場を借りてお礼申し上げます。

無機物PCを定義する

 ここでは無機物PCを「原形をほぼ100%保ったままキャラクターとして登録/運用されている物体あるいは動植物」のキャラクターとします。
 動植物は正確には分類上有機物であり無機物ではないのですが、動植物をモチーフとしていても一般的に多く見られる「擬人化された/人型化された/人間要素をプラスされたキャラクター」との区分けとしてここでは「無機物PC」という語を扱います。
 ご了承ください。
 また、主に定期更新型ゲームにおける運用を想定しています。
 TRPGにおける無機物PCは取り扱い範囲外ですので、解説から外します。

無機物PCのメリット

■いるだけで存在感MAX
 いるだけで目を吸い寄せる異彩!
 いるだけで強烈なロールフックになる存在感!
 いるだけでシュールな光景を提供する!
 特にキャラリスト・コミュニティリストなどリストアップされた中から他PLの目を惹きつける時や、キャラクター常駐型スポットなど少人数で向き合える場で大きな力を発揮します。

■ギャップを容易につけられる
 無機物だということはきっとギャグキャラだろう……そう思った相手へ突きつける突然のシリアス!
 威力の高いロールが繰り出せます。事前にほのぼのとした光景を展開しておくと更に効果的です。
 くれぐれも用法容量を守り、相手の反応を見ながら行いましょう。

■特定行動ばかりする/しない理由をつけやすい
 ルールブックのこの項目だけ読んだけど他が難しくて呑み込めない、時間がないのでこの行動だけするキャラクターを作りたい……
 そんな時に無機物。できることとできないことが種族的にはっきりしたキャラクターは存在そのものをゲーム上で行動する/しない理由にすることが比較的楽です。

■途中離脱の理由をつけやすい
 動くものが動かなくなったらそれはただの物体!
 あるいはいつの間にか立ち消えた怪異の類!
 それか野生に還った生物!
 姿の見えなくなった無機物PCはどこかで一般的な無機物として過ごしているのかもしれません。

無機物PCのデメリット

■大人数チャットには向かない
 参加者が多く、流速が早く、話題が次々に移り変わる場では用意したインパクトが薄れがちです。
 通信機能があるなど顔を合わさずに喋れる舞台が設定されているなどの場合は、声だけ聴いて実際に会ったら無機物だった、というのも面白いかもしれません。

■合わせや企画参加はかなり厳しい
 だいたいの発起人や参加者は合わせに人型のキャラが来ることを想定しているので、無機物PCでその想定から外れると主催や他の参加者の困惑が予想されます。よほど周囲と仲がいいか事前の問い合わせでOKをもらわない限りやめておきましょう。

■対応する相手を選ぶ
 人懐こい無機物にじゃれつかれるロールをされました!そう言われてとっさに対応できますか?
 無機物は一挙一動において対応相手へそこそこのコストを要求し、場合によってはアクション一つで場の雰囲気、相手の纏いたいキャライメージ等を破壊しかねません。
 顔を出した際に向こうから乗ってくれた人なら安心してこちらからも向かっていけますが、自分から相手に絡みに行くことがやや制限されがちです。

■多すぎても困る
 人型PCとの対比・少数派の強みを生かせず同じポジションを奪い合うことになると無機物PCはとたんに困ります。また、あまりに無機物PCばかりがいると舞台の雰囲気そのものを捻じ曲げてしまうことにもなりかねません。
 一般的な人型PCの来訪を想定していたら参加者の半分以上が無機物PCだった、そんな舞台を考えてみると想像がついてくると思います。
 ものごとには何事も適量が存在するのです。

まとめ

 以上を総合すると「低コストで動かせるインパクトのあるキャラ」になりやすいです。ただそれは出オチになりやすいことの裏返し。
 直上の「多すぎても困る」理由はここにもあります。「キャラクターが無機物」以上のインパクトを用意するのは計画的にやらないとかなり困難なのです。
 だからこそ、それでも構わない時に輝くのが無機物。
 
時間がない。気力がない。いつまで動けるかわからない。
 それでも、参加はしたい。
 そんないつか必要になった時のために、頭の片隅にでも置いておくと楽しいかもしれない選択肢。
 それが、無機物。

 置きました!!!終わり!!!!!

 それで十分なのがいいところです。
 キャラクターをリストに載せて存在を刻み、たまたま見た人にちょっと笑ってもらう。チャットルームを通りすがって振り向かれ、そのまま過ぎ去っていく。
 そんな遊び方も存在するのです。それで、ぜんぜんいいのです。

 以下はもっと無機物のキャラ造形について考えてみたい人向けの話です。
 どんな無機物かだけ決めてそこから連想ゲームを行うだけで無機物はそこそこ設定が固まりますが、それを具体化した手順の一例として。

おまけ:無機物PCをつくろう

 というわけで、作製を実践していきます。

1:やりたいことを考える
 行いたい・これしかしたくない行動が明確にあるのかというゲーム的な部分から詰めても、マスコット的な無機物でささやかに人と関わりたいのか、シュールな笑いを提供したいのかなどのロール面から詰めても構いません。後の決めやすさから、できればこの双方において方向性が決まっていることが理想です。
 無機物は一点特化のキャラクターになりがちですが、このコンセプト部分をしっかりと決めておくことで、それを統一性に変えて強みを生みます。

 また、そのキャラクターを置く舞台との相性を考えることも大切です。
 ここでは具体例として試しに、

・ファンタジー世界を舞台とするゲームに
・常駐チャットルームを持つ
・シュールな無機物

 を想定します。

2:どんな無機物かを決める
 物体か動物か植物か。
 1で決めたやりたいことを元に、それを使用目的/主動作とする存在にするか、あるいはその目的など一目では思いもつかないようなかけ離れた存在にするかの二択で決めることがオススメです。
 この二択の選択に、ロール面でどのような行動をしたいキャラかも絡めていきましょう。
 マスコット的な愛嬌が必要なら、小動物程度のサイズの生物や物品が向いています。PLとしてやりたいことと外見から思いつくことは即座に一致するくらいわかりやすい選定があるといいです。
 初見のインパクトや動いている間のシュールさ、あるいは意表を突く設定が必要なら、決めた目的など一目では思いもつかないようなかけ離れた存在の方がふさわしいでしょう。できればサイズ的には大きく、目立つことも。

 ただし大きくても人間大程度のサイズに留めることを強く推奨します。
 それ以上大きくするとあらゆる辻褄合わせが大変!!!!!!

 取り乱しました。具体例の話をしていきます。
 目的の一つは常駐ルームを持つことで、ならばあまり動かないものの方が向いているでしょう。そしてルームに入ったらすぐ目につき、リアクションを取れる程度に存在感のあるサイズのものが。
 シュールさを考えれば、本来舞台となるファンタジー世界にはないものであってもいいかもしれません。
 常駐ルームに来れば、本来その世界にはないものと接触することができる。独自性のあるルームになると同時に、訪れるPLにとっても自分のPCのリアクションが想定しやすいでしょう。
 未知のものを驚いたり、珍しがったり、あるいはその存在を知る出自のキャラクターが驚くこともあるかもしれません。

 この記事のヘッダーにバス停がありますね。
 じゃあバス停でいきましょう。
 バス停は通常間違いなく固定されているため、その常識を破壊して勝手に動くだけでシュールな光景が広がります。
 また、動くと全くバス停として用を成さない点も見逃せません。
 そもそもファンタジー世界、たぶんバスが来ないし

3:内面を考える
 この文面に疑問を感じた方もいらっしゃるかと思います。無機物に内心?
 あるかもしれないし、勝手に私たちが見出しているだけかもしれません。しかし内心についてしっかりと考えるということは、キャラクターの行動原理をしっかりと規定することです。物言わぬ無機物であってもその行動に一貫性や法則性を見出した時、そこにはキャラクターとしての魅力が生じます。考えない手はありません。

 鍵となるのは自分の役割に対する認識です。
 その無機物は自分の用途や性質、習性を好んでいますか? 嫌っていますか?
 好んでいるのならキャラクターとして動き出してもそれに固執した動きをするでしょう。逆に嫌っているなら、元の無機物の用途や習性通りに扱われれば怒り出すかもしれません。
 また、舞台との整合性を考えれば見えてくる場合もあります。
 明らかに本来の用途では使われない場所にいる無機物は、その用向きから逃げ出したくなったのかもしれません。あるいは誰も自分を使ってくれる人がおらず、悲しみにくれるかもしれません。

 この辺りは人型PCを考える際とあまり変わらないでしょう。
 生まれ持った境遇や性質に対し、どのような感情を抱いてどのような対応をしてきたか?
 その過去を抱えて、どうして舞台となる場所にいるのか?
 その場において一般的な反応を向けられて、どのような態度で応じるか? 

 それは舞台に上げるキャラクターを考える上での基本の一つで、たとえキャラクターが無機物であっても変わりないことです。

 ここから具体例、バスのない世界にやってきたバス停とは?を考えます。
 ファンタジー世界のバス停にはバスが止まらず、仕事がありません。
 このバス停は時間に追われる生活に疲れ、時計を忘れてのんびり過ごせる世界へ休息に来たのかもしれません。
 あるいはうっかり動き出してはいるものの、自分の役目に忠実なバス停であった場合、待てど暮らせど来ないバスの行方をバス停自身が探し始めるかもしれません。来訪者に訊いたりして。

 バスの行方をバス停が訊く。
 ますますバス停としての役割を放棄しています。これでいきましょう。

4:残りのことを考える
 ここまでで考えてあることもたくさんありますが、なければこのタイミングで考えておくといいことがいくつかあります。

 その無機物は、何らかの手段で人と意思疎通することができますか?
 意思を言葉で伝えられるのなら、どのような口調でしょう?
 物体である場合、その無機物は自発的に動きますか?
 そもそもなぜ動き出しているのでしょう?

 そこに理由があってもなくても構いません。
 無機物はキャラクターとしてフォーカスを当てられているだけで既に不条理です。つまり既に、理屈による説明を飛ばしていても違和感のない存在として成立しています。
 事実のみを決めて理由がない時、その無機物は、そういうものなのです。

 また、ここで一度あまりにも設定が尖りすぎていないか確認しましょう。
 そもそも無機物PCが尖っているので上で挙げたデメリットの数々が揃っているのはそうなのですが、ソロールのみを行うキャラクターや完全な背景に徹するのでない場合、あまりにもキャッチボールの難しい設定一部以外の会話が成立しない人格度重なる天丼になりかねないネタ不足などは会話相手にとって負担が大きくなりすぎます。
 悲しい結末には誰しも至りたくないものです。それが劇中に留まらない時は特に。

 バス停のことを考えましょう。
 人にバスの行方を聞くバス停。喋っています
 口調は決まっていないので、今決めてしまいましょう。礼儀正しく時刻やバスの行方を聞いてくる真面目そうなバス停なんて面白そうです。
 自分にもわからずバスのない世界に来てしまったバス停。動けます
 なぜ、のところは本人、もとい本バス停にもわからないようです。理由はありません。

 しかし、バスの話だけでは少し会話の幅が狭いかもしれません。
 ここで発想を逆転させてみます。バスの来ない世界は、バス停にとっても見るもの聞くもの新しいはずです。
 役目に忠実なバス停であれば、その中でもこの場の移動手段や道、時間を知る手段や連絡手段、使われている燃料などに興味を持つでしょう。
 そうした自分の境遇やかつての仕事との共通点へ興味を抱いていることにすれば、会話の幅も広がりそうです。そうして自分の新たに置かれた世界のことを知っていった先には、例えばバス以外のものを止める使命も見出せるかもしれません。

 
5:完成です
 ここまで考えれば盤石です。キャラクターとして動かすに足る情報は揃ったでしょう。あとはお好みで自分の手癖に合わせてカスタマイズします。

  バス停は見事バスの来ない世界に降り立ち、道行く人にバスの行方と自分の置かれた世界のことを尋ねるバス停になりました。
 これだけ話しましたが、使用予定は特にありません。例示なので。

いかがでしたか?

 ファンタジー世界、常駐ルーム、シュール。
 先ほどの3条件から、私が考えるとバス停になりました。
 でも次の日の私が違う写真でも見て考えれば、それは顔はめ看板かもしれませんし鉢を脱ぎ捨てた観葉植物かもしれません。

 同じ条件で考えても、人や日によりまったく違うキャラクターができる。
 それは無機物に限らず、キャラクターを考えて遊ぶ際の魅力の一つです。そのキャラクターの多様性の幅を考えれば、無機物は端の端に位置する極端な外れ値でしょう。
 でもその存在は、広い幅があることそのものを保証してくれます。
 自キャラに飽き足らず連れ出しゲーの連れ出し登録欄が無機物PCだらけになる私は、いつもその自由さがずっとありますようにと思っています。

 なので、あなたの無機物PCもお見せいただけませんか?
 いつか必要になった時、
 そんなこともできるんだったな、そうふと思い出した時でいいので。


 でも自前の無機物はしばらく休みたいです。
 反省したんです!!!! 反省したんですってば!!!!!!