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バリューチェーンを考えてみよう

【はじめてのバリューチェーン】

 バリューチェーンとは何でしょう? 提唱者はハーバード・ビジネススクールのMichael Porter教授。1985年の発表です。

Michael Porter さん
By Cmproject - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=62381341

【価値の連鎖て何?】

 バリューチェーンとは、企業がどのようにして利益を創出しているかを価値の連鎖によって説明する手法です。まず下の図を見てください。なぜ価値の創出に注目するかというと、それが企業の成長力を高め、競争に勝ち残っていく力となるからです。バリューチェーンでは、強活動は、企業が利益を生み出す直接の活動である主業務と、これを支える支援業務により構成されると考えます。なお、支援業務は4つのカテゴリに分かれます。

とあるソフトウエア開発企業のバリューチェーン

 上図が示す内容は以下の通りです。
①企業の業務は上部の支援業務と下部の主業務に分かれる。
②最終目的である右端の「利益」を生み出すのは主業務である。
③支援業務もそれぞれの分野において、企業の競争力を高めるための
 付加価値を生み出している。
④主業務は主要プロセスに分かれている。
 (具体的なプロセスは業種により違いがある)
⑤主要プロセスには各プロセス自身の価値に加えて支援業務が
 生み出した付加価値が付与され、企業としての競争力を生み出す。
⑥主業務を完了した時に最大限の利益を獲得する。

 例えば「人的資源」が創出する付加価値は、主業務の各プロセスで優秀なスキルを持った人材の抜擢を通じて企業の付加価値向上に貢献する、と言えますし、企業インフラの整備は主業務に余計な心配をさせずに開発業務に専念して貰える環境を生み出す、という貢献をしている事が読み取れます。
 同様に、研究開発や購買・調達も、なくてはならない付加価値の創出を行っている事がわかります。このように見ていくと、大事な事は、各要素が何であるかではなく、それぞれが正しく機能して「利益」獲得につながっているのか、いないのかである事がわかります。

【負の連鎖が起きるとどうなる?】

 では、この連鎖が正しく機能しないとどういう事になるでしょうか。それが以下の図です。

 構造的な違いはありません。主業務の各プロセスおよび支援業務の各アイテムでマイナス要因や課題が発生すると、それを解決しない限り、コスト高や納期遅延などの結果を引き起こします。
 どこの部分のマイナスが特にひどかったかは、次の補強のターゲット選定に影響するでしょうし、場合に依っては人材の雇用、教育だけでなく、インフラ整備や新たな機材等の調達にまで影響するかもしれません。
 しかし、大事なのは、部分で起きた問題そのものよりも、それがどのように企業全体のパフォーマンスに影響するかが構造的に捉えられる事です。解決手法として、業務自体の合理化やアウトソーシングなどもとり得るかもしれません。また、問題部署単体で考えるよりも、全社視点で弱点の補完や長所のさらなる強化を検討する方が効率的で近道である場合もあります。

【バリューチェーンを見直してみよう】

 バリューチェーンは、このように全社的な視野を常に意識する事で、とかく普段自分が見ている眼の前の現実のみに目を奪われがちな現場の視野を拡げ、より柔軟な戦略立案や問題解決へと結びつけていくのに役立ちます。

【他人事ではいられない】

 このように見てくると、あなたがどんなポジションであれ、会社の仕事は会社の価値を決めるために皆つながっている事は明らかですね。何かあったとき、直接の当事者ではないからといって他人事ではいられません。何か出来ることをやる、改善の為に何か考える、といった事は、決して無意味ではないのです。会社の価値を高めて、自分の生活も良くなってくれれば言う事なしです。
 ところで、会社の価値を高める為に尽力したとして、会社は自分にちゃんと報いてくれるでしょうか?
 従業員の働きやすさもまた企業価値を示す指標のひとつになっています。最近流行りのワークエンゲージメント(ISO30414)がそれです。このあたりについてはいずれどこかで紹介していく予定です。