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長歌:ふたつの未来

うつせみの世のことわりに、悩ましい思いを寄せて
振り返る。いつからだろう、胸中に夢をとどめて

一歩ずつ歩み始めた遠い道。引き返せない
旅の道。ひたすら進む暗い道。後悔は無い。
 
風のとの遠い彼方に、待ちうけるふたつの未来。
実現を望む未来と、絶対に避けたい未来。

叶えたい思いは同じ。いつの日か実現させる。
信じたい、日々の努力を。一心にただ繰り返す。

かしのみのひとりうつろう夢の中、思いは巡る。
あてもなく休む間もなく、いたずらに身は流れ行く。

密やかに忍び寄るのは、底しれぬ暗黒の朝。
別れ道遠ざかるのは、憧れに輝いた華。

たまくしげ 開く心に鮮やかに映る情景。
何度でも挑み続ける、甦る立ち上がる証明。

限りなく湧き立つ闘志。魂を誘う期待。
混迷を抜けて手にする、夢に見たふたつの未来。

目的を遂げた者のみ満たされるのは、時間の余白。

成し遂げた事の重さを確かめて
  向ける眼差し、天空の先。

本作について

 タイトルに長歌とつけた理由は、単純に一行を五七調で書き、最後に反歌をつけたから、形式的には準拠していると思ったからです。中身は雅でもやまと言葉でもなく、儀礼的な意味もないので万葉時代の長歌とは比べるべくもありません。それどころか見た目は未熟ながらクプレ、二行聯詩の様に仕上げています。各行は五七五七で、最後を除いて二行ずつ脚韵を踏んでいます。
 この様に、日本の伝統的な詩型を踏襲しつつ、西洋風の詩型も掛け合わせて作る、というのが最近の筆者の試みのひとつでもあります。現代日本語には「詩」と「詩学」が確立されていないからこそ、様々な可能性を模索する楽しさもあると考えています。