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ポケットサイズの超音波検査器:Butterfly Networkについて $LGVW $BFLY

こんにちは、ぴたごらら(@pitagorarara)です。
今回は2020年11月20日にSPACによる上場を発表したButterfly Networkについて簡単にまとめてみます。

Disclaimer:
本内容の正確性などは保証できません。本内容、またそれに基づいた投資判断などにつき、私はいかなる責任も取れません。

創業の経緯

Butterfly NetworkはJonathan Rothbergによって2011年に創業されたヘルスケア企業で、ポケットサイズの超音波検査器を製造・販売しています。彼の娘さんが結節性硬化症という病気を患った際、現行の超音波検査器がいかに扱いづらいものかを目の当たりにし、それを改善できないかという考えをきっかけにこのような機器を開発したそうです。

彼はそれまで主にゲノム解析の分野で活躍し、次世代シーケンサーの開発などに携わっていました。たとえば彼が創業したIon Torrentは2010年にLife Technologies(現Thermo Fisher Scientific TMO)に買収されており、今もTMOの主要ブランドのひとつです。他の経歴については深く触れないものの、454 Life Scienceの創業(後にRoche Diagnosticsに買収)など実績多数で、2016年には大統領勲章まで授与されています。

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発想もさることながら、きちんとモノを世に送り出せる人ですね。その彼が家族の病気をきっかけに新しい分野に挑戦し、世界の医療現場を変えようとする、というストーリーだけで胸が熱くなりますね。

SPACによる上場

今回の上場経緯についてはJonathan Rothberg自身がCNBCのインタビューの中で回答しています。本筋ではないですが、カラーに蝶々(バタフライ)をあしらったシャツにキース・ヘリングのパーカーという出で立ちが最高ですね。

Glenview Capital Managementのブランク・チェック・カンパニーであるLongview Acquisition Corp (LGVW)がButterfly Networkと合併する形での上場となります。2021年2月にトランザクションが完了予定で、その際にティッカーがBFLYになり、LGVW 5株→BFLY 1株と変更されるようです。Jonathan Rothbergは創業者兼会長という立場で、かつVisionary Leadershipという枠組みで企業活動をオーバーサイトしていくようです。

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BFLYの元々のバックはビルゲイツ財団やFosun Pharma(コロナワクチンでBioNTech BNTXとパートナリング)などです。なぜ通常のIPOではなくSPACによる裏口入学を選んだのかは誰しもが疑問に思うところらしく、CNBCインタビューの中でも質問されています。それに対して「ヘルスケアに長年携わってきたGlenviewのノウハウ/ネットワークを活かせるのでパートナーとして最適」という、いわば教科書的な回答がなされていますが、個人的にもあまり納得できるものではありませんでした。

ポケットサイズの超音波検査器Butterfly iQについて

製品概要については以下のデモ動画を見ていただくのが手っ取り早いと思います。

ものすごく簡単に説明すると、ポケットサイズの超音波検査器をiPhoneなりAndroidなりの携帯端末に接続し、その端末のアプリで検査画像を確認していくというガジェットですね。後ほど触れますが、このようなポケットサイズの超音波検査器は別にBFLYの専売特許という訳ではなく、競合品も存在します。

↓日本には未上陸のようです。

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上の表が従来のカート型や、他のポケットサイズと比較したものになります。重要な点をLGVWのS-4から抜粋・意訳します。

・従来のカート型機器は、一般的に新しい機器1台あたり$45,000〜$60,000の価格帯であり、訓練を受けた医療専門家が操作する必要があります。
・最近ではポイント・オブ・ケア超音波「POCUS」装置が導入され、平均価格は$21,000、プローブ1個あたり$5,000~$7,000がベースとなっていますが、プローブが1個だけのButterfly iQ+と同等の適応症をカバーするには2~3個のプローブが必要となります。
(筆者注:プローブというのはハードの頭の部分で、患者の体にくっつける部分ですね)

売上構造にも関係してきますが、BFLYの製品はハードが1台あたり$2,000ほど、それに加えてサブスク(pro membership;年間$420)とのことで、競合他社の製品と比べてハードを安く提供でき(しかもプローブの追加購入や切り替えは不要)、かつサブスクによる定期収入が見込める、という構造になっています。
POCUSは重要なキーワードのようですが私もあまり詳しくありません。以下のサイトでなんとなくのイメージは把握しました。

売上など

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2019年、2020年の各9月末までのサブスクの売上比率を見ると、2019年は9.3%、2020年は15.6%と順調に上がってきています。IR資料を見る限り、30〜40%あたりをサブスク売上比率の目安としているかもしれません。
2020年9月末時点までの9ヶ月間で、売上を上回る研究開発費と、売上の50%ほどにもなるセールス・マーケティング費用(前年より+119%)を計上しています。後ほど触れるロードマップと、市場への浸透が重要な時期であるという点を加味すると、これら費用がかさむのは仕方がない状況かと思います。

将来展望

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現状、ポケットサイズの超音波検査器が占めている割合は市場全体(TAMは$8bと見積もり)の3%に過ぎないと試算されています。カート型が優位となっている既存のマーケット(病院、イメージングセンターなど)に食い込むことに加え、特に携帯性を優位に発揮できる場面(たとえば緊急搬送中の救急車の中、在宅医療、医療アクセスの悪い発展途上国)などでの新規利用が進むことによる売上増加を期待しています。

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BFLYは新製品開発・バージョンアップにも精力的に取り組んでいます。

・iQ+:現行のフラッグシップ・モデル。
・iQ at Home:セルフスキャン、在宅診療・遠隔診療のサポート。2021年ローンチ予定。
・Gen3 Probe:プローブの改良。パフォーマンスと画質の向上。2022年ローンチ予定。
・Butterfly Wearable:遠隔診療、疾患のモニタリング。2023年ローンチ予定。

iQ at homeによるセルフスキャンとそれによる遠隔診療への参入、ウェアラブル端末(Butterfly Wearable)による疾患の遠隔モニタリング(たとえば尿失禁や慢性心疾患を大きな市場機会と捉えているようです)への参入というのがBFLYにとって重要な転換点になりそうです。

将来的には、患者さんが装置を使って超音波画像をセルフスキャンし、その画像をリアルタイムで医師に電子転送できるような、さらに進化した製品を開発・導入したいと考えています。
(S-4より抜粋・意訳)

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売上は2020年予想が$44mで、2024年には$334mまで成長するという見立てです。特に2023年までは年率60〜77%での成長を予想しています。研究開発費やセールス・マーケティング費がしばらくかさむことを考慮してか、キャッシュフローがポジティブになるのは2024年を予定しているようです。

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競合との比較と、考慮が必要なポイント

前述の通り、BFLYの強みはハードが低価格で提供できる点です。私は技術的な面に明るくないのですが、その理由としてはBFLYが特許で保護されているsemiconductor chipを用いているのに対し、他社は従来のpiezoelectric crystalを用いており、それが価格面に影響しているとのことです。現在の競合企業はGeneral Electric (GE), Phillips (PHIA), キヤノン (TYO: 7751), 日立製作所 (TYO: 6501), Siemens Healthineers (SHL)などとのことです。

↓他のポケットサイズ、あるいはコンパクト超音波検査器との比較。

その他考慮が必要なポイントとして、その特許がいつまで有効であるか、ハードの買い替え時期の想定は、バッテリーのもちに問題はないか、医療現場での運用に際して、たとえば画像の電子カルテへのアップロードがカジュアルにできるか、などが挙げられるかと思います。

まとめ

いかがだったでしょうか?個人的には遠隔診療・疾患モニタリングの分野への参入に加え、今まで従来の企業がカバーできていなかった発展途上国への展開が進むと大化けするのではないかという期待があり、長期目線での投資を始めたところです。既にARKにも目をつけられ、ARKGに組み入れが開始されています。BFLYに限らず、創業者であるJonathan Rothbergの今後の活動にも目が離せませんね。

↓ARKが参入したタイミング?

参考資料:
Butterfly Network Investor Presentation
https://manual.butterflynetwork.com/Butterfly+Investor+Presentation.pdf
S-4

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