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Bionano Genomics $BNGO について

こんにちは、ぴたごらら(@pitagorarara)です。
今回は週間で200%、月間で300%超上昇中の話題のペニーストック、Bionano Genomics (BNGO)について簡単にまとめてみます。年末年始のBNGO大会に合わせて是非お楽しみいただければと思います。

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※BNGOに関してはたっつんさん(@SynbioTatun)が伝道師ですので、twitterでフォローされることをおすすめします。

Disclaimer:
本内容の正確性などは保証できません。本内容、またそれに基づいた投資判断などにつき、私はいかなる責任も取れません。

会社概要とSV解析

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BNGOは2003年に米国カリフォルニア州で創業されたゲノム検査会社で、遺伝子上の構造多型(SV;structural variant)を解析するツール(Saphyr)を提供しています。Illumina (ILMN)、Thermo Fisher Scientific (TMO)、Pacific Biosciences (PACB)のような企業が提供している遺伝子シーケンスとはコンセプトが異なり、BNGOの提供するSV解析では遺伝子の全体像を見た上で、「SV=構造上の大きな変異」が起きていないかを確認することができます。

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SVについてはPACBをまとめた以下のnoteをご参照ください。

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まず構造多型(SV;structural variant)についてですが、上図の中でdeletion, insertion…と図式化されている遺伝子変異のことを指します。細かい話は抜きにして、ざっくり「広範囲にわたって遺伝子変異が起こっているもの」という理解で良いと思います。シーケンスはこのような変異も含んだ遺伝情報を読み取っていく作業なのですが、技術的に一息で全情報を読み取ることはできず、細切れに読み取った情報を繋ぎ合わせて全体像を把握する必要があります。その際に読み取れる情報単位が小さいものをショートリード、長いものをロングリードと定義しています。例えば広範囲にわたって変異が起こっている場合に、その変異の中だけをショートリードが読み取ると、変異としてきちんと認識できなかったりしそうですよね。先ほどの動画の中のパズルの例に当てはめると、SVを読んだときに生成されたパズルピースが、ショートリードでは当てはめる先がわからなかったり、そもそも「変なもの」として認識して欲しいピース自体を「問題ないもの」として認識したりします。これがショートリードの欠点で、比較的広範囲を一気に読み取れるロングリードではこのようなミスが起こりにくい、と理解いただければと思います。

このnoteの中では「ショートリードで読み取りづらいSVをロングリードは見つけやすい(PACBがたとえばILMNに対して優位性がある)」という文脈で説明しています。微妙に違うたとえになるかもしれませんが「群盲象を評す」というのが似たような状態を表しているかもしれません。極めて部分的なことしか分からなければ、全体を掴み損ねるという意味です。

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(http://www.betterparentinginstitute.com/Better-Parenting/parenting-child-raising-skills/813/attachment/blindmenelephant/ より引用)

さて、2020年12月23日にプレスリリースされた内容への好感から、現在BNGO株価が急騰中です。要点を以下にまとめます。

・ BNGO Saphyrが検出できたSVのうち、PACB HiFi readに基づいた解析では72%しか検出できなかった。
・PACBで見落とされたSVの多くは神経発達障害に関与していた。
・PACB HiFi readを用いたカスタムシーケンス法が1ゲノムあたり$10,000〜$20,000かかるのに対し、BNGO Saphyrは$500という低コストを実現している。

これだけを読むとBNGO Saphyrが全てを解決してくれるようにも見えますが、SV解析にもできないことがあります。それは「小さな遺伝子変異」を見つけることで、それはシーケンスするしか解決方法がありません。イメージ的に「大きな遺伝子変異」の方が人体への影響もヤバそうに思えるかもしれませんが、「小さな遺伝子変異」もモノによっては健康に大きな影響を及ぼします。シーケンス、SV解析それぞれに一長一短があるため、BNGOは自らを「シーケンスとは相互補完的」と評しています。

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※注意点として、PACBが「1ゲノムあたり$10,000〜$20,000かかる」としている点はカスタムシーケンス法であるためかもしれません。以下のサイトだとSequelでもrun priceは~$850とあります。

マネジメントチームと最近の動き

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Board of directorsのchairmanにはILMNの元CSOが起用されています。その他、20Q3にはマネジメントチームの再編を行っていて、Chief Medical OfficerにPerkinElmer Genomics(Perkin Elmer PKI傘下)でhead of cytogeneticsを務めていたAlka Chaubey氏、CFOに元Tesla (TSLA)のChristopher Stewart氏を招聘しています。

また20Q3にはLineagen社の買収が完了しています。Lineagenは、CLIA認定と呼ばれる検査室の厳しい品質保証認定を受けているラボを保有していることから、BNGOが今までプラットフォーマーでしかなかった状態、つまりほぼSaphyrとその消耗品を売るだけという段階から脱し、自社のラボでの解析サービスを拡張できるようになったとのことです。この認定を受けているということは保険償還においてもプラスに働くとのことで、同社CEOは「イチから作るより早かったので買収した」とコメントしています。保険償還における社内体制整備はCMOのAlka Chaubey氏が重要な役割を担うとのことです。

20Q3のオーバービュー

箇条書きですが、重要と思われる点を書き出します。

・BNGOの技術を使用した論文の数が、2019年は全体で80報であったのに対し、2020年は既に98報である。その内、SV解析に焦点を当てた論文の数は、2019年と比較して70%増加している。
・20Q3は11台のSaphyrを出荷した(3台が販売、8台がレンタル)。11台という数字は20Q1, Q2の総数に相当し、COVIDからの回復を示唆している。
・これまでに設置されたSaphyrは累計96台。設置待ちは21台。
・Nanochannel flow assay(Saphyrの消耗品)は20Q3で1,785個販売された。20Q2と比較して25%の成長、19Q3と比較して34%の成長。
・2020年はこれまでに63プロジェクトと577サンプルを実施。2019年は通年でも38プロジェクト、212サンプルの実施であったため、同社のラボでの処理数の増加を示している。
・20Q3の売上高は$2.2m(20Q2は$1.2m)。内訳としては機器販売が33%、試薬ないし試薬レンタルプログラムが39%、サービス及びその他が28%。(※前年同期比では約-50%で、COVIDの影響からまだ完全には復活できていない)
・研究開発費($2.3m)は前年同期からほぼ変わらず。製品売上にかかる費用は下がっている一方、販管費は$8.7mとほぼ倍増(Lineagen買収の影響)

将来展望

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市場全体の見積もりは$2.6〜3.8bとのこと。

所感と今後のストーリー

最近のソフトウェアアップデートにより、現在Saphyrは96サンプル/週を処理できるとのこと。これは元々同社が目標にしていた100サンプル/週に近い数値で、懸念されていたスループットは改善されつつあるため臨床での実用にも耐えられるものに近付きつつあるようです。

この改善を受け、ARK社のゲノム・アナリストであるSimon Barnett氏も是非BNGO CEOと話してみたい、とコメントを寄せています。

この会話の起点になっているのは過去noteにまとめているPACBのロングリードの件で、また彼が12月にtwitterでアンケートをとった「次にまとめて欲しいゲノムのトピック」でもSVがトップになっています。

直近のBNGOの盛り上がりを見るに彼がこれを無視するわけにはいかないはずで、ARK社として推しているPACBとBNGOの関係性(あるいは最近腐しているILMNについても?)について、近いうちに立場が明らかになるものと思われます。ホルダーとしての直近のベストシナリオはARKGがBNGOを採択することで、このようなsmall cap企業であれば今からでもさらに急騰することは想像に難くありません。長期でのベストシナリオはシーケンス企業による被買収?「ILMNはGrailではなくBNGOを買うべきだった」というコメントもtwitterで見かけた気がしますが、探せませんでした。
正直なところ私は実力を測りかねていて、当初はPACB(あるいはOxford Nanopore)がBNGOに喰われることなんかないでしょ、と思っていたのですが、コスト面を考えると既に安いショートリード+BNGOのSV解析の組み合わせの方が良いのかも?と思ってきたりしています。その場合は間接的にPACBが影響を被るかもしれません。

Market capはPACBが$5b、対するBNGOは$200〜400mと、そこだけ比べると激安です。私はPT $2.5で全部売るつもりでしたが、今は思い直してホールドしたまま年越しを迎えようと思っています。ビッグなお年玉を期待しています。

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