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基本知識シリーズ第0.5弾 仕組み債

■仕組み債とは?

読んで字のごとく一般的な債券にはない 特別な『仕組み』を持つ債券 のことを仕組債という。

ではその特別な『仕組み』とは何か?

時にそれは スワップやオプションといういわゆるデリバティブズ(派生商品)を組み込むことによって、『決められた条件』の中で通常の債券では得られないような高い利回りを確保することを目指す仕組み である。

その際例えば特定株式の株価や指数などが指標銘柄となり様々な条件が組み込まれる。

例えば仕組債の対象が株式の場合には

1) 対象株式の株価が設定範囲内で値動きすれば満期まで運用され元本と利子がもらえる

2) 対象株式の株価が設定範囲より上昇した場合は早期償還となり元本と利子がもらえる

3) 対象株式の株価が設定範囲を超えて下落した場合は満期時元本割れすることがある


2)は『ノックアウト』
3)は『ノックイン』
と言われている。

つまり対象銘柄の動き次第で
・償還日が変わり、
・ 適用される利率が変わり、
・ さらに償還される金額が変わり
・ 時には通貨ではなく株式で償還される

という商品。

これだけ聞いただけで僕なら投資は敬遠するが...

仕組み債には代表的なものに

・EB債
・リンク債(株価指数連動)

がある。

EB(Exchangeable Bond)債 は、投資資金が株式・上場投信などの有価証券に変換されて償還される可能性がある仕組み債。債券の発行者とは異なる株式に転換される可能性があるため、 他社株転換可能債 とも呼ばれている。
具体的には、判定日の対象銘柄の価格があらかじめ決められた価格より高ければ、額面通り現金で償還される。

一方で価格水準が一定以下(ノックイン)になり、その後も対象銘柄の価格が一定期間内に決められた水準まで上昇しない場合は、株式などの有価証券での償還となる。つまり株価の推移によっては損失が出る可能性がある。

EB債イメージ

リンク債(株価指数連動) とは、価格指数などに連動して償還価格が変動する仕組債の一種。株価指数連動債とも呼ばれる。

例えば日経平均リンク債の場合、基準日からの日経平均株価の変動率によって償還金額や利率が変動する。もし判定日の対象銘柄の価格が、あらかじめ決められた価格より高ければ、額面での償還となるが、価格水準が一定以下(ノックイン)になり、その後も対象銘柄の価格が一定期間内に決められた水準まで上昇しない場合は、そのときの低い価格で償還されたり、低い利率が適用されることもある。

■なぜ投資家は仕組み債に投資するのか?

ずばり 高いクーポン(利子) だろう。

投資家は高い利回りに飢えている。

株式等の値動きがある有価証券への投資は躊躇しているような投資家にとっては、この表面上の高利回りと仕組み債という響きがなんとなく債券的な印象を与え株式よりも安全だと勘違いしてしまっているのかもしれない。

株価上昇局面でEB債を投資した投資家は高いクーポンをもらいながら早期償還されることを経験し、証券会社に言われるがまま再度違うEB債を購入するという中毒性も指摘されている。

また仕組み債という派生商品を使った商品性故に投資家の好みに合わせた商品性を オーダーメイド で組成することが可能だ。特に富裕層にはこのオーダーメイドという響きが刺さる商品なのかもしれない。

富裕層向けオーダーメイドでなくても、より幅広い市場のニーズに合わせた、例えば毎月利払いや四半期ごと利払い等の商品性を組み込み小口化された商品は仕組み債人気を支えていた可能性はある。

仕組み債には通常の債券と同じ
・ 信用リスク
(仕組債の発行者の倒産などで、債券の利払いや元本の償還が履行されないリスク)
・ 価格変動リスク
(債券を償還前に途中売却する場合は、売却価格が購入価格を下回るリスク)
・ 為替変動リスク
(外貨建ての債券の場合には、為替レートの変動により為替差損が発生するリスク)
・ 流動性リスク
(仕組債は一般的な債券よりも流通量が少ないため、債券を売却できないリスク)


と、プラスして仕組み債特有の
・ クーポン(利子)減少リスク
・ 償還金額減少リスク
・ 債務不履行発生リスク

が存在することも忘れてはいけない。

ここ最近メディアに流れている仕組み債に関するニュースは簡単に言うと 販売会社の説明不足および適合性の原則から外れた営業姿勢に端を発するトラブルが多発しておりそれを当局が容認できない状況 になっているという事実を明らかにしている。

確かに高利回りをうたっているが商品性が複雑な仕組み債は潜在的に投資家とのトラブルが増えると事前にわかるようなものだが、なぜ証券会社がここまで販売したのだろうか?

これには 証券業界の闇 が見え隠れする。

■『先細り 』証券業界の事情

仕組み債の構図に関する非常にわかりやすい資料を日本証券業協会のHPで見つけたのでご紹介しよう。

日本証券業協会HPから

実はこの仕組み債に関するニュースで一番気になったのは以下のニュースだ。

Bloomberg
9月15日 金融庁が外資系投資銀行を調査へ-仕組み債の販売方法巡りhttps://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-09-15/RI8HLXDWRGG001

僕が某外資系証券会社に在籍していた時、 2015年辺りから仕組み債を扱っている部署の収益が急速に伸び始めたことを肌身に感じて理解 している。以前は証券会社で株式本部や投資銀行本部などは花形であったが、リーマンショック以降自己売買が先細り、手数料収入も投資家の電子取引の一般化やそもそも市場の売買代金が増えず証券会社同士のパイの奪い合いとなり花形とは到底言えない状況になってきた。

特に法人のみ取り扱っているような外資系証券は何とか次の収益の柱を探していた。そのような収益環境の中活路を見出したのが仕組み債である。

高い派生商品技術を駆使して国内中小証券会社や地方銀行向け仕組み債の運用部分やアレンジ部分を担うことで投資家の高利回りニーズに応えるべく商品を提供するビジネスに舵を切ったのだ。

何故?それはこのビジネスには投資家の目には見ることが出来ない利益の源泉が隠れているからだ。

■仕組み債の『仕組み』

単純に言うとこの仕組み債は プットの売りによって得られるプレミアム部分が高利回りの源泉 になっている。

仕組み債を購入した投資家はその商品性の複雑さがあり運用者がどのオプションのどのプットを売ってそのプレミアムがどの程度ありそのうちのどれだけ分配されているかわからないで投資している可能性がある。

つまりオプションのプレミアムが仮に5%あってそのうち1%がクーポンとして分配されていたとしてもそれが今の金利水準と比較してハッピーであればそれでよしと考えてしまっている。

今の例だとサヤである4%が販売サイドと運用サイドで折半されだけでも収益的に旨みがある。

さらに発行体の信用力に関しても適正な水準がわかりにくく、ここでもサヤが抜けるチャンスがある。

対象有価証券の価値が上がってもプレミアムは限定されていて、行使価格より価値が下がれば損失無限。

投資家は 仮に株価が上昇してもその上昇分がリターンとならず、下落時はノックイン条件で高いリスクを負わされてしまうからくり がこれだ。

つまり仕組み債はハイリスク・ミドルリターン商品なのだ。

■やはりリテラシーの問題か

販売サイドが仕組み債に興味をもつ投資家に対してリスクを明確にした上でこのようなハイリスク商品を販売するのは当然だ。

実際僕も若いころ会社から言われた仕組み債のようなすこし複雑な商品を個人投資家に販売したことがある。

当時は今ほど複雑な商品性ではなかったが、それでも会社の意向に沿うように決められた金額を販売した。

しかしその商品性を100%理解して、100%理解してもらって販売できたかどうかの記憶はない。

ここにきて 金融庁 が動き出し、 販売する証券会社や組成する外資系証券会社に調査のメス が入ろうとしていることは、将来欧米並みに仕組み債についての厳格な開示義務がルール化されていく方向なのだと考えられる。

商品性をきちんと理解した上でそれでも仕組み債を購入したい投資家は必ず存在するし、そういう層に対する商品ラインアップをそろえるのは当然だ。

投資家もその複雑な商品性を理解できるだけの相応な 金融リテラシー が必要で、投資判断で単純に資料に書かれている高利回りに踊らされるだけはいけない。

販売する証券会社はその派生商品を使った運用に関する疑問を明確にできる投資家層に販売を限定しても良いと思う。

ただ以前証券業界で世話になった僕が個人的に言わせてもらえば収益的に非常に厳しい中でこの方向性は心配でならない。

マーケットの魅力が増し出来高が増えていくような抜本的な市場改革 がされないと証券業界は以前のような輝きを放つことはないだろう。

これ以上先細りな証券業界はみたくない。

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